軽いノリで
ろーくん
ある上司と部下が結ばれた日
ピピピピピッ、ピピピピピッ、ピピピピピッ
目覚ましが鳴る。自宅のアラーム音とは違うことに違和感を感じて、薄っすらとまぶたを開けた。
「……ぅ、~…ん……、……?」
またまた違和感。ぼやけた視界に映る部屋の壁に見覚えがない。
こんなに真っ白な壁だったかなと私が思いかけると同時に、身体の奥深くから
「……ぁ。そーいえば……そう、だった……ここは―――」
ホテルの一室。それも一泊一人5000円以下の安いビジネスホテルの。
いろいろ思い出してきた私は、とりあえず目覚ましを止めた。
「ふう……昨日は激しかったからかしら? いつの間にか眠って―――そうだ藤山さん、藤山さんったら起きてください。もう朝ですよ藤山さんっ」
「ん~~~もう少し寝かせてくれよ……まだ時間あんだろ……zzZ」
「ダメですってば! そもそも今日は朝一で地方の仕事があるからってホテルに泊まったんでしょう!? それなのに昨日はあんなに頑張って……って寝ないでください、藤山さーんっ!!」
・
・
・
私は何とか藤山さんを起こして取引先に向かいました。
「やあ田所クン、朝一番ですまない……おや、肝心の藤山君はお
わが社にとっても長い付き合いのある地方企業―――その専務である有本さんは、私に肩を担がれながら入室してきた藤山さんを見て楽し気に笑います。ですが私はというと、何とも恥ずかしい気持ちでいっぱいになりました。
「す、すみません……ほら藤山さん、着きましたよ。有本さんの前ですから、いい加減に目を覚ましてください、もお~」
「んがが……ぐ~……が~……」
「ハハハハハ、相変わらずの大物っぷりだね、藤山君は。まあそんなに気持ちよく寝ているのを無理に起こすのもかわいそうだ、とりあえずそこのソファーにでも転がしておくといい。込み入った話は彼が起きてからでも構わないだろう」
「は、はい……申し訳ありません。よ、いしょっ、と」
普通ならあり得ないことですが、有本さんが大らかな人なので助かります。
「こうなった藤山君は小一時間は起きない……彼が起きるまで僕たちは
「―――あ……ハイ、ご一緒させていただきます」
有本さんの言い回しから私は、その意味を理解しました――――――でもソレって小一時間程度で済むものなのかしら??
――――――そして、あの地方出張のお仕事から半年後。
リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン……
「おめでとう!」
「おめでとう、田所ク……いや、これからは藤山クンだな!」
「おめでとーっ! おしあわせにー!!」
教会の鐘の音と会社の同僚の皆さんの祝福の声に包まれて、私は藤山さんとの結婚式を挙げました。
「しかしなぁ……本当にいいのか、オレなんかでさぁ??」
「あら、いまさらですか? この子の責任を取ってくれるんですよね、ア・ナ・タ?」
「いやまあ、そりゃそうだけどさー」
私のお腹は大きくなっていて―――そう、デキちゃった婚なんです。
あの一晩で当たっちゃっただなんて私も相当驚きましたが、藤山さんと周囲の驚きはもっとでした。
もちろん大騒ぎになりましたが藤山さんに覚えのある事ですし、責任取ってお嫁さんにしてもらうのは当然のこと。
ですが私、実は一つだけ秘密を隠してもいたりします。
「(……大丈夫。藤山さんの方が長い時間だったんだし。それに有本さんには奥さんがいらっしゃるから、万が一
重く考えても仕方ないことですもの。このまま流れのままにいっちゃおうっと。
とにかく、今日から藤山さんの妻として、私がこのグータラさんを支えなくっちゃ!
軽いノリで ろーくん @hinotori0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます