失われた記憶
僕と父には血縁関係が無いらしい。19歳の誕生日に、そう告げられた。
僕は俗に言う『托卵児』だったらしい。父にはそれが許せなかったのだ。
顔も性格も似ていないことがずっと気がかりだったらしく、それで思い切ってDNA鑑定をしたのだとか。
僕が実の子どもじゃないことを知ってから、父は豹変した。
今までお金をかけてきたのが、全て無駄だったーーそう怒鳴って、家具を壊して暴れるようになった。
行方をくらました母と同様、蔑まれ、人格否定までされるようになった。
血縁関係が無い子どもに、そこまで冷たく出来るか?と思わずにはいられなかったが、考え方は人それぞれだ。
一族の血縁に執着し、赤の他人を拒絶する人も居るのだ。そうやって、割り切るしかない。
それ以来、どれほど学業で成果を出しても、父は見向きもしてくれなくなった。
近いうちに学校を辞めて、家を出て行ってくれとまで言われた。
じゃあ、僕の人生は何だったのだろう……。
僕が生きてる意味は……?誰か教えて欲しい。
自分の存在意義が知りたい。
何かを見つけたくて、新幹線に乗り、遠い田舎へと旅立った。
◇
気づいたら、どこかも分からない、海辺に佇んでいた。
知らない場所を当てもなく彷徨い歩く。
ザバァァァ……ザザーン……。
夜の海は飲み込まれそうなほど怖い。
僕は、一体これからどうすればいいのだろう……。
色々考えては見るものの、答えは出ない。
悔しくて、悲しくて、苦しい。
「うぅ……うわあああああ」
膝を抱えて泣き崩れる。
深い悲しみで、心が覆われていく。
もう何も考えたくない……消えてなくなりたい。
何もかも忘れてしまいたい。
こんな記憶、消えて無くなってしまえ。
僕は、そう強く願った。
砂の上に寝転びながら、ゆっくりと目を閉じる。
泣き疲れて、そのまま眠りについた。
エンドレスサマー・ラブ 幸原風吹 @yukiharahubuki
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