第2話

しかし妻は、顔はこちらを向いているのに、身体は背中を向けていたのだ。

首が百八十度回転している。

無理やり首を回しているのではない。

ごく自然にそうなっているのだ。

呆気に取られてみていると、妻が舌打ちをして言った。

「また失敗したか」

そして妻は、俺の目の前からあっという間に消えた。

その後、妻の姿を見たものは誰もいない。


娘と歩いていた。

寂しいところを。

すると娘が突然に言った。

「呼んでいる」

娘は走り出した。

女子中学生にしては、足は速い。

そして私は、その時足を怪我していた。

杖で歩くのがやっと。

娘を追えなかった。

――どこいったんだ。

考えていると、娘が帰ってきた。

――!

娘の半そでの服から出ていたのは、手ではなかった。

足だ。本来手があるべきところに、足が生えているのだ。

そしてスカートからのぞくもの。

それは手だった。

スカートの下から手が生えているのだ。

――なんだ、これは。

私は言いようのない恐怖に襲われた。

気づくとその辺に落ちていた棒を拾い、娘の頭を殴りつけていた。

棒は頭にきれいにヒットした。

「また失敗したか」

娘もどきはそう言うと倒れた。

見ているとそいつは人型の白いぶよぶよしたものになったが、やがて溶けるように消えた。

その日以来、娘を見たものは誰もいない。



       終

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化けるもの ツヨシ @kunkunkonkon

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