化けるもの

ツヨシ

第1話

妹と二人で歩いていた。

住宅街のさらに奥。

めったに人が通らないところだ。すると妹が突然言った。

「呼んでいる」

妹は走り出した。

追っかけたが妹は住宅街に入り込んだ。

細道が多く、軽く迷路みたいになっているところだ。

俺は妹を見失った。

――どうしようか。

立ち尽くしていると妹が戻ってきた。

――!

「兄ちゃん、どうしたの?」

声は妹だった。

しかし妹の首から上が、逆さまになっていた。

つまり頭のてっぺんが下で、顎が上になっていたのだ。

――なんだこれは。

思わず逃げ出した。

すると後ろから妹の声で「失敗したか」と聞こえてきた。

振り返ると頭が逆さまの妹は、そこにはもういなかった。

その日以来、妹の姿を見たものは誰もいない。


妻と一緒に田舎の寂しい道を歩いていた。

田舎の寂しい道と言ったが、家の近所だ。

すると妻が突然言った。

「呼んでいる」

妻は走り出した。

道のすぐ横の山に向かって。

――おいおい。

追いかけようと思ったが、一瞬遅れた。

追いかけた時にはもう、妻を見失っていた。

――どうしようか?

俺は待つことにした。

二人で山にはいっても、すれ違うばかりでよくないと思ったからだ。

しばらく待っていると、妻が現れた。

――ええっ?

見た目は妻だ。

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