第3話 動き始める青春

(もか)「告白成功したよ!!」

 

(誠)「マジ?」

 

(もか)「うん!!」

 

 良かった。本当に良かった。

 親友の告白の成功がこんなに嬉しいなんて。いやー誰かの幸せを願うのってこんなに幸せなことなのか。

 

(誠)「おめでとう!!」

 

(もか)「誠が協力してくれたからだよ」

 

(誠)「いやいや、もかが頑張ったからだよ」

 

 成功したことの嬉しさと、少しだけ悲しさが芽生える。

 

 今までのようには接することができないと思うから。俺から連絡することはやめるし、むやみに話しかけるのもやめようと思う。

 一応もかには彼氏ができたんだから。

 まさか、昨日今日でこんなに差が生まれるとな。

 

 スマホをポケットに入れようとしたとき、再び通知がなる。

 

(もか)「一応さ、彼氏の名前教えても良い?」

 

(誠)「うん」

 

(もか)「東山拓馬」

 

 東山拓哉、え? ふーん。

 

 拓哉は確か昨日南を振ってた人だよな。

 

 うん。そうだった。

 

 えーと、うん。何も知らない。

 

(誠)「あーあ! 知ってる人だよ」

 

(もか)「今から一緒に帰るから、また明日ね」

 

 文から幸せな匂いを感じてしまう。

 

 これがリア充パワーなのか。

 

 てか、拓馬まじかよ。





 教室を出てから数分、俺は体育館に向かっていた。

 廊下を歩いていると、目の前から誰かが走ってくる。

 ええ? 目の前から走ってくるのは南だった。

 俺本当にこの人こえーよ。

 

「う、うわ――――」

 

 南は誠の目の前で止まる。

 

 口にはクッキーを挟んでいた。

 

「もしかして、またやってるの?」

 

「やってないよ! クッキーを食べながら走ってたら美男子に出会うとか思ってないし」

 

 あら、全部教えてくれた。

 

「てか、南って部活入ってないの?」

 

「入ってないよ。何もしかして誘ってる?」

 

「何をだよ!?」

 

「一緒にクッキー食べながら走るのに」

 

「へ?」

 

 南は笑わず真剣な表情で言う。

 

 拓馬がもかと付き合ったことを知ったらどうなってしまうんだ。

 

「てか、拓馬って浮気すんだね」


 浮気??


 南はクッキーを口に挟む。

 

「え?」

 

 俺は思わず弱い声が出る。

 

「だって、もか、と付き合ったんでしょ?」

 

 広まるの早くないか? これが高校生の力なのか。

 

「わからんな」

 

 一応俺はとぼける。

 

「もか、とは親友じゃないの?」

 

「親友だと思うよ」

 

「本当に親友なの?」

 

「?」

 

 南は何か言いたそうな顔で俺を見つめる。

 なるほど、そういうことか。好きにならないの? とかだろうな。

 

「男女の友情は成立しないと思ってる?」

 

 俺の言ったことに南は顔色を変える。

 

「まぁ、だってどっちかが好きになると思うし」

 

「確かにね、俺も最初はそう思ってたよ。だけど、人ってさ、いろんな関係があるんだよ」

 

「友達との関係、ライバルの関係、恋人の関係とか人っていろんな関係で成り立っているんだよね」

 

「それで、俺は友達の関係でトップになりたいと思ったんだよ」

 

「ふーん。そうなんだ」

 

 南は腑に落ちていないが、納得するしかないな、という顔を浮かべる。

 

「それより、南こそ大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ! 今は運命の人を探してるから」

 

 そう言い、クッキーを口に挟む。

 そして、まるで世界大会のようにしゃがみ込み、足に力をいれる。

 聞こえるはずがない、音が聞こえてくる。

 

「3」

 

「2」

 

「1」

 

 同時に南は勢いよく走る。

 

「ま、っとけよ運命の人~」

 

 絶対大丈夫じゃないだろ。



 なんやかんや南と喋ってしまい体育館に行くことはできなかった。

 そして今何故か南と一緒に帰っている。

 

「はぁ、なんで一緒に帰る人が誠君なんだよ」

 

 肩の力を抜く仕草をする。

 

 俺、この人キライ。

 

「てか、俺の名前知ってたんだ」

 

「それはもちろん」

 

「てかさ、私ってなんでモテないと思う?」

 

 また、突然の質問だな。

 

「うーん。わかんない」

 

「えー。もしかして魅力がないのかな?」

 

「魅力はあるんじゃいのか。だって出会って2日目でこんな質問する人居ないし」

 

「げ。何よそんな、まるで私が拓馬に振られて寂しいから誠君に相談している、みたいな言い方やめてよ」

 

 あら、全部言ってくれた。

 

「そうなの?」

 

 俺は冗談で乗っかる。

 

「ち、違うよ」

 

「そ、そうだ。部活作らない?」

 

 南は話から逃げるように違う話をする。

 

「部活?」

 

「そうよ! 部活作ろう」

 

 南はやる気を出し、鞄からチョコを出す。

 

 袋に入ったチョコを2個とり、1個は俺に渡す。

 

「あ、ありがと」

 

「うん」

 

 貰ったチョコを口に運ぶ。あっまこのチョコ。

 

 チョコを食べると、南はにやにやと笑う。

 

 まさか、毒が入っているのか。

 

「これで誠君も仲間ね」

 

 ん? もしかして俺の南と同じ部活に入らないといけないのか?

 

「さて、どんな部活を作ろうかしら」

 

 南は考え始める。

 

 数分程経ち、南は俺の顔を見る。

 

「分かった!! 遊部なんてどう?」

 

「却下」

 

「えー」

 

 まさか、数分考えた結果がこれなのか? 俺やっぱりこの人怖い。

 

「そうだ! じゃあ、勉遊部べんゆう

 

「べ、勉遊部??」

 

「そう、勉強したりみんなで遊んだり」

 

 確かに、良い部活になりそうだが、本当にそれで良いのか? 高校3年間をこの訳の分からない勉遊部に身を捧げて良いのか?

 

「でも部委員を集めないとだろ」

 

 俺は南に問う。

 

 すると、南はクッキーを取り出し、俺に1枚渡す。

 

「交渉成立」

 

「へ?」

 

 俺の3年間はクッキーとチョコで成り立っているのか?

 

 てか、地味に部活名良いのやめてくれ。

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