第2話 友達の告白


 5月の暑さは絶妙で嫌になる。自宅から出て歩くこと数分俺こと、西城誠は今学校に向かって歩いている。

 

 遅刻するぎりぎりの時間ではあるが今の俺は焦ってはいない。なんでかといわれると、分からないが。

 

 俺はゆっくりと歩いていると……

 

 いった、音楽に夢中になっていたため、横から人が来ていることに気付かなかった。

 

 俺は直ぐにぶつかった人に視線を向ける。

 

 何してるんだよ……

 

 そこにはパンを口に挟んだまま倒れている、南が居た。

 

「あのー大丈夫?」

 

 俺は恐る恐る声をかける。

 

 南は期待の目で俺を見つめる。数秒程たち南の目から光が消える。

 今は令和だぞ??

 

「げ」

 

 南は俺を見て言う。

 

 最低なやつめ、そんな運命的な出会いがある訳ないだろ。

 

「何してるんだよ?」

 

 俺はいつも通りの声で言う。すると、南はパンを食べ始める。

 

「べ、別に、パンを挟んで走ったら運命の人に出会うとか思ってないし」

 

 うん、全部教えてくれた。

 

「良かったじゃん。効果抜群!」

 

「今日体調悪いから帰る」

 

 俺のこの人嫌い。

 

 俺の慰めは見事に砕け散り、南は俺の横に立つ。

 

「多分パンじゃなくて、おにぎりなら効果あるはず」

 

 どうしても現実を認めたくないのか、南は違う案を考え始める。

 

 ごめんよ、多分結果は変わらないと思う。

 

「てか、遅刻するじゃん」

 

 南はスマホで時刻を確認し、慌て始める。

 

 そして南はさっきまでが嘘のように元気よく走り始める。俺この人こえーよ。





 なんとか間に合って自分の席に座る。

 

 危ない後1分で遅刻するところだった。うちの高校は厳しとは言い難いがある程度厳しいと思う。

 

「さて、出席を取るぞ」

 

 夏美先生が声をあげると、教室に居る生徒たちは自分の席に戻って行く。

 夏美先生は俺らの担任で数学を担当している。

 見た目も凄く美人で人気のある先生だ。だが、一つだけ問題がある。

 

「城川南さん」

 

「はい」

 

 南は元気よく手を上げる。その仕草に男子は魅了される。


「西城誠さん」

 

「はい」

 

「声が小さい!!」

 

「は、はい」

 

「よしそれで良い」

 

 そう、夏美先生は怒ると怖いタイプである。それに、何で怒るのかが分からないのが恐怖である。

 朝の出席は終わり、俺は後ろに座っている、金城もか、に話かける。

 

「おはよう、もか」

 

「おっはー」

 

 もかとは中学からの親友である。

 

 そして、もかはクラスの人気者である。

 

「てかさ、聞いてよ」

 

 もかは何か言いたそうな声で言う。

 

「?」

 

 俺は首を傾ける。

 

 もか真剣な表情を浮かべる。その様子を見て俺は息を呑む。

 

「私、告白することにした」

 

「まじか!!」

 

「ちょ、声大きいよ」

 

「あ、ごめん」

 

 まさか、もかが告白するのか。

 

 もかは高校に入学してすぐ一目惚れした人が居るらしい。時々相談を受けることもあった。

『告白ってどうするのが正解なのかな?』などの相談を受けることがよくある。

 それで、俺はよくアドバイスをしていた。

 上手く恋が実るように、幸せになれるように。

 もちろん、俺は誰とも付き合ったことはないがな。っていうのはどうでもよくて、今はもかを応援するだけだ。

 

「それで、いつするの?」

 

 俺は小さい声でもかに問う。

 

「その、今日する」

 

「おおお」

 

「やめてよその喜び方」

 

「ごめんて」

 

「気持ちちゃんと伝えないといけないと思ったから」

 

 もか小さい声で言うが、声はしっかりと強くなっていた。

 

「そっか。大丈夫、もかならいけるよ」

 

「うん。頑張る」

 

 もかは可愛い仕草をする。こんなに可愛い仕草ができるなら大丈夫だろう。

 だけど、心配だな。

 いや、応援するのみだ。









 放課後。

 

 俺はそわそわしながら、もか、からの連絡を待っている。

 

 きっと大丈夫だ、もかなら成功する。

 

 だって、クラスの人気者で美人だぞ? 成功する未来しか見えない。

 

 そわそわしていると、誰かがこっちに向かって歩いて来る。

 

「あれ、誠じゃん」

 

「え、悠馬じゃん」

 

 立花悠馬。バスケ部で勉強も得意でイケメンで非の打ち所がない。

 

「今から部活なんだよなー」

 

 悠馬は頭を搔きながら言う。

 

「大活躍だもんな」

 

「まぁな」

 

 悠馬はにっこりと笑う。

 

「お前もバスケ部入れよ」

 

「俺は引退したよ」

 

 悠馬は俺の足を見つめる。

 

「そっか、気が向いたらいつでも来て良いからな」

 

 そう言い、悠馬は背中を向ける。

 

「おう」

 

 悠馬の背中を見送っているとスマホの通知音が鳴り響く。

 

(もか)「告白……」

 

 

―――

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