普通のラブコメ
@sink2525
第1話 普通のラブコメ
世の中には様々なラブコメがある。
公園で泣いている美少女に出会ったり、振られる現場を目撃したり、そんなラブコメが多い。
このような普通のラブコメが好きだ。最初の出逢い方は共通というかこれが正解だと思う。
俺もそんなジャンルをよく読んでいる。
ラブコメは好きだ。
だが、一つだけ否定するのなら、この現実にラブコメなどはない。
と、思っていたのだがこれは普通のラブコメになるのだろうか?
「私は好きだよ、だけど、拓馬の気持ちを尊重したいよ」
「俺だって、南のことは好きだ。だけど、俺は分からないんだよ」
今、俺は自分の席に座っているのだが、これはいったい何が起きているんだろうか。
俺の目の前で振られる直面に遭遇している。
俺の目の前で言い合いをしている男女はどちらも強く言いあっている。
うん、俺は何をするのが正解なんだ。
もしかして、俺って見えてない? おーい、俺ならここにいるぞー。駄目だ大きく手を上げても見るそぶりはない。
「ねぇ、拓馬は私のことが好き?」
「南」
俺は飴玉を片手に二人の悲劇を観る。
さぁ、拓馬はどうするんだ。
「俺は、っくそ」
拓馬は自分を追い詰めるような仕草をする。
あれ、これ風向き変わったか?
「拓馬、ちゃんと気持ちを教えて」
「南……」
「俺は南のことが好きじゃない」
拓馬は南の目をはっきり見て言う。
さっきまでの迷いなんか消えていて、ちゃんと自分の意志でいっていた。
「そっか」
南は泣くのを我慢する。
「ごめん南」
「ううん。ちゃんと気持ちが知れて嬉しいよ」
「南……」
「さ、私は大丈夫だからさ」
南は弱い声で言う。
「俺は、ちゃんとやるよ」
拓馬はそう言い、南に背中を向ける。
やはり、こんな展開になるのか。拓馬はちゃんと気持ちを伝えた。けど、南は悲しむことしか選択はない。
まてよ、これってラブコメでいう、これが現場なのか……
「ねぇ、ねぇって」
俺が考え事をしていると、いつの間にか南が俺の前に立っていた。
「は、はい」
「君いつからいたの?」
ずっと居ましたよ。なんで気付かないんだよ。
「ずっと居ました」
「げ」
初めて聞く言葉に驚く。それになんだよ「げ」って。
「とにかく、公園行くよ」
「え?」
そう言い、南は俺の鞄を取り教室を出ようとする。
あのー何が起きているんだ?
歩くこと数分やがて公園が見えてくる。
初めて見るな。
公園は思ったよりもでかくて子どもの遊び場にも困らないほど大きい。そして、何よりブランコがあるのだ。
「さ、こっち」
南はブランコに座り、こっちと手で横に座るように指示する。
俺はいわれるがまま、横のブランコに座る。
案外久しぶりに乗るブランコは思ったより軽くて、漕ぐのが楽しい。
「ブランコで盛り上がることができるのっていいね」
嫌味でてますよ。
「そうかな」
「そうだよ。私は振られたんだし」
沈んで行く夕日を背中に南は悲しい顔で言う。
「最初から分かってたよ。多分振られるのもさ」
南は暗い顔をしていく。
俺は適当に相槌を打ちながら南の話を聞く。
「でもさ、幼馴染なんだよ……」
お、幼馴染???? これはいや、うん。やめてこう。
「それに、拓馬だって私のこと可愛いって毎日言ってたのに」
「うん」
「それに、弁当だって毎日作ってたんだよ」
「うん」
「いつも私にだけ笑顔を向けてくれたのに」
「うん」
「ねぇ、うん、しか言えないの?」
「あ、違うよ。なんていうか、言葉が見つからないんだ」
「ふーん」
「まぁ、聞いてくれるなら良いや」
なんとか納得したらしい。
「それでね、初めて好きだと思ったのは高校に入学してから数週間かな」
「ほう」
「私の友達とかが拓馬ってイケメンだねとか、南と拓馬ってお似合いだと思うのにな~とかいろんな人から言われたのね」
「ほうほう」
「いろんな人から言われるにうちに私も好きだと思い始めたの」
「ほう」
「ねぇ、ほう、しか言えないの?」
「違うよ、その、うん、じゃなくて、ほうほうの方が良いと思ったから」
「へー」
なんとか納得したらしい。
「それで、色々あって気持ちを伝えたいと思ったの。そしたら見事に振られたよ」
南は涙を流してはいないが悲しい顔をしている。
「そうだったんだ」
「何よ、あんまりじろじろ見ないでくれるかな?」
俺の顔を見て、南は言う。
「そんなに見てないよ」
「そう」
南はそっぽ冷たく言い、ブランコを漕ぎ始める。
「恋ってさ叶うのはほんの一部なんだよ。あの人とあの人はお似合いだから付き合っている、そんな簡単な言葉で括っちゃ駄目だと思う。恋は奇跡と奇跡が嚙み合って恋になるんだよ」
俺はカッコつけるように言う。
「君って恋したことあんの?」
南は俺の顔を見ながら言う。夕日に照らされているからか南の顔は明るい表情に見えた。
「ない」
「君って面白いね」
南は満面な笑みを浮かべる。笑顔はどんな花より綺麗だった。散っていく桜の葉を蹴るよな、そんな感じだった。振られたと思えないほど幸せな笑顔だった。
――――
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