お母さんまだかな~

@liliana401

第1話

「…カラスと一緒に帰りましょ」


良い子たちに帰宅を促す自治体の夕焼け放送が響き渡り、辺りは薄暗くなって来ました。


冬の夕方は寒く、枯れ枝のシルエットは淋しげでなんだか怖いくらいです。


ここは某市立保育園。保護者のお迎えを待っている子供たちは1人2人と減ってゆき、今この部屋に居るのは保育士の私とG君だけです。


昼間は子供たちの声や動き回る音がにぎやかでうるさいのですが、さすがに夕方は静かです。


G君がこんなに遅くまで残って居るのは珍しく、「お母さんまだかな~」と心配そうに何度も玄関の方に目をやってます。


「大丈夫、もうすぐお迎えに来るからね。」と私はG君が好きな絵本を読み聞かせていました。


その時職員室にいたH先生が部屋にやって来ました。G君のお母さんから電話があり、電車の遅れでお迎えまで時間がかかりそうだと言うのです。


仕方がないのでジグソーパズルでG君と遊ぶことに。恐竜の絵柄でこれがなかなか難しいのです。


G君は集中して試行錯誤を繰り返していました。もう「まだかな~」とは言いません。


それから三十分くらい経った頃でしょうか、G君のお母さんが慌てて玄関に現れました。


「すみませ〜ん。遅くなりました〜!」


待ちに待ったお母さんの登場なのですが、ジグソーパズルに夢中になっているG君は、それ程嬉しそうではありません。


「お母さん、ちょっと待ってて。もう少しで終るから。まだ帰りたくない!」


あぁ、お母さんはG君のため必死で走って来たのに…

先生は早くお家に帰りたいよ〜!

                 



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