第6話 未来への贈り物
それから数年後。
ゆうたはすっかり大人になり、たくましい背中を持つ青年になっていました。彼は、町の広場で子どもたちを囲み、かつてこの町で起きた出来事を語っていました。
「昔、この町には『心の通貨』があったんだよ。」
ゆうたが語り始めると、子どもたちは目を輝かせて耳を傾けました。
「それはね、人を助けたり、何か優しいことをしたときにもらえる『ありがとう』が通貨になっていたんだ。お金は必要なかった。『ありがとう』があれば、みんなで夢を叶えられるんだよ。」
一人の小さな男の子が手を挙げて質問しました。
「ありがとうで、本当にお店ができたの?」
ゆうたは頷き、優しく微笑みました。
「ああ、できたんだよ。そのお店は、たけるっていう友達がみんなの力を借りて作ったんだ。みんなが助け合ったから、夢が形になったんだ。」
その話を聞いていた子どもたちの中には、目を輝かせながら友達の手を握る子もいました。
「ぼくたちもやりたい!」
「何か困ってる人を助けたら、『ありがとう』がたまるかな?」
子どもたちの言葉を聞いて、ゆうたはふと空を見上げました。その空は、あの日見た星空と同じように輝いています。彼の心には、たけるや町のみんなと共有した日々の温かさがよみがえっていました。
ゆうたは、少しだけ目を閉じて深呼吸をすると、優しい声で言いました。
「お金がなくてもね、『ありがとう』があれば世界は豊かになるんだ。誰かのために動いたら、それが必ず自分にも返ってくる。それが、この町で起きた奇跡なんだよ。」
その言葉を聞いて、子どもたちは笑顔でうなずきました。彼らの中には、未来に新しい「ありがとう」を広げていこうと決めた小さな勇者たちが生まれていました。
ゆうたの周りには、子どもたちだけでなく大人たちも集まり、自然と笑顔が広がっていきます。それぞれが誰かを助けたい気持ち、そして「ありがとう」を分かち合う気持ちを思い出していました。
ゆうたはそんな町の風景を見渡しながら、自分の胸にそっと手を当てました。そこには、あの日たけるからもらった「ありがとう」のあたたかさがまだ息づいているようでした。
「これからは君たちの時代だよ。」
そう言って、ゆうたは子どもたちに目を向けました。
子どもたちは「うん!」と元気よく答えます。ゆうたの目には、未来への希望がきらめいていました。
そのとき、一筋の風が吹き抜け、広場の上空に立ち昇るように光が差し込みました。それは、まるで「ありがとう」の魔法が再び動き出したかのように見えました。
ゆうたの背中を見つめながら、町のみんなが笑顔で手を振りました。その背中は、あの日の少年ゆうたと同じように、未来を信じて前を向いていました。
「ありがとうの魔法は、きっとどこまでも広がるよ。」
そんな声が聞こえた気がして、町全体がまたひとつ、温かな絆で結ばれたのでした。
「ありがとうが世界を豊かにする魔法です」――それは、ゆうたが次の世代に託した最高の贈り物だったのです。
ありがとうの魔法と心の通貨 まさか からだ @panndamann74
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