第5話 ありがとうが生む奇跡
それは、青空が広がる晴れた日でした。たけるのおもちゃ屋さんがついに完成したのです。木でできたあたたかみのある小さな店。窓辺にはたけるが作った動物たちが並び、優しく町を見守るように飾られていました。
「今日はお店のオープンの日だよ!」
ゆうたの声が広場に響きました。たけるのお店の前には町中の人々が集まり、子どもたちはわくわくした様子で中を覗き込んでいます。
たけるが店の扉を開けると、中にはたくさんの動物たちや木のおもちゃが整然と並べられていました。手に取ると、ひとつひとつが丁寧に作られていて、たけるの優しさや夢が詰まっているのがわかります。
おばあちゃんが、最初に店内に入ってきました。
「たけるくん、この町にこんな素敵なお店ができて、ほんとうにうれしいよ。」
そう言いながら手を差し出すと、たけるはその手をぎゅっと握りしめました。
続いて子どもたちが走り込んできて、棚から木のおもちゃを手に取ります。
「わあ!この犬、ほんとうに走りそうだね!」
「この鳥、羽を広げたら飛ぶんじゃない?」
目を輝かせる子どもたちを見て、たけるは嬉しそうに微笑みました。
夕方になり、店の前でたけるがみんなの前に立ちました。
「みんな、本当にありがとう。僕ひとりじゃ、このお店はできなかった。ゆうたが声をかけてくれて、町のみんなが協力してくれたおかげで、こうして夢が叶いました。」
たけるの目には涙が浮かんでいました。小さな手で涙を拭いながら、それでも笑顔で「ありがとう」を繰り返します。
そのとき、ゆうたは不思議な感覚に包まれました。胸の中にたけるの「ありがとう」が届くと、それがぽかぽかとあたたかくなり、大きな光となって体中に広がっていったのです。
「ありがとうって、こんなにも強くて、こんなにもあたたかいんだ……」
周りを見ると、町のみんなの顔もやさしい笑顔で輝いていました。それぞれが「ありがとう」を贈り、受け取る――その循環が、まるで町全体を包み込む大きな魔法のようでした。
夜になり、店の灯りがぽつりと消え、星空が町を包みました。ゆうたはたけるの隣に座り、空を見上げながらつぶやきました。
「ありがとうって、本当に魔法みたいだね。誰かを幸せにして、それがまた広がっていくなんて……こんなにすごいこと、ほかにないよ。」
たけるも空を見上げながらうなずきました。
「うん。でも、ゆうたがみんなに声をかけてくれなかったら、この魔法は生まれなかったよ。ありがとう、ゆうた。」
そのとき、空に一筋の流れ星がきらめきました。ゆうたとたけるは同時に指さして、思わず笑い合います。
「これからも、この魔法をどんどん広げていこうよ!」
ゆうたの声に、たけるは力強くうなずきました。
その夜、町には誰も気づかないくらいの小さな奇跡が起こりました。それは、ありがとうの光がまるで星のように空へと昇り、町全体を包み込むように輝いていたのです。
「ありがとう」が作る奇跡。それは、これからもずっと続いていく――ゆうたとたけるの心に、そしてこの町に。」
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