第4話 心の通貨がつなぐ夢
ゆうたの住む町には、たけるという同じくらいの年の男の子がいました。たけるは手先が器用で、木を削ってさまざまな形の動物を作るのが得意でした。小鳥やうさぎ、犬や猫――たけるの作品はどれも本物そっくりで、町の子どもたちはみんな彼の木彫りの動物が大好きでした。
ある日、ゆうたは学校の帰り道、川辺の大きな木の下でひとり木を削るたけるに声をかけました。
「たける、その動物、すごいね!まるで生きてるみたいだよ。」
たけるはうれしそうに笑いましたが、その笑顔はどこか寂しげでした。
「ありがとう。でも、僕の夢はこれじゃ終わらないんだ。本当は自分のおもちゃ屋さんを開きたいんだよ。町のみんなが楽しめる場所を作りたくて……でも、それにはお金がたくさん必要で、僕には無理だ。」
ゆうたはその言葉にハッとしました。たけるが夢を語るその瞳は輝いていましたが、その裏には諦めの影が見えたのです。
「おもちゃ屋さんか……」
ゆうたは考え込みました。そして思い出したのは、おばあちゃんの言葉でした。
「この町では、お金がなくても助け合える。」
「みんなで助ければ、夢は叶うよ!」
翌日、ゆうたはたけるの夢を実現させるために、町のみんなに声をかけました。
「たけるはおもちゃ屋さんを開きたいんだ。でも、ひとりじゃ難しいんだって。だから、みんなでたけるを助けよう!心の通貨を集めれば、きっと夢を叶えられるよ!」
最初は少し驚いた様子だった町の人々も、たけるの夢を聞くと次々に協力を申し出ました。
「畑の野菜を売って得た心の通貨を渡してあげるわ。」
「僕はお店の倉庫にある木材を貸してあげるよ。」
「たけるくんの道具が古いから、新しいのを買う手伝いをするよ。」
町中の人々が、それぞれのやり方でたけるを応援し始めました。
町の人々の協力を受けて、たけるの夢は少しずつ形になっていきました。野菜を売って得た心の通貨で、たけるのための新しい道具が買われました。木材を提供してくれた人のおかげで、たけるはたくさんの動物を作ることができました。そして、おばあちゃんの提案で、町の広場にたけるの作品を展示する小さなコーナーが設けられました。
展示の日、広場には町の人々が集まり、たけるが作った木彫りの動物を手に取りながら笑顔を見せていました。
「たける、すごいじゃないか!こんなにかわいい動物たち、誰だって欲しくなるよ。」
「ありがとう!これ、僕の初めての作品なんだ。」
たけるは少し照れくさそうに答えましたが、その瞳には希望が輝いていました。
たけるの夢を応援する中で、ゆうたは感じました。たけるを助けるために町の人々が力を合わせたことで、町全体がもっと明るく、もっと元気になったような気がする――そんな不思議な感覚です。
そして、たけるがふとつぶやきました。
「ゆうた、ありがとう。君がみんなに声をかけてくれたおかげで、僕の夢が少しずつ現実になり始めてる。」
ゆうたはにっこり笑って答えました。
「これはみんなの力だよ。『ありがとう』が魔法みたいにつながっていったんだね。」
その日、ゆうたは心の中でひとつ確信しました。「心の通貨」はただの感謝の言葉じゃない。それは夢をつなぎ、人と人を結ぶ、本当の魔法なんだと。
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