第3話 つながりの魔法
ゆうたは「心の通貨」に興味を持ち始めてから、積極的に町の人々を手助けするようになりました。朝、学校へ行く前に畑の世話を手伝ったり、帰り道にお店で荷物を運んだり、休みの日には公園で小さな子どもたちと遊んだりしました。
ゆうたが人を助けるたびに、相手から返ってくるのは「ありがとう」の言葉と、胸を温めるような優しい笑顔でした。そして、そのお礼として渡される「心の通貨」は、まるで宝物のようにゆうたの手元にたまっていきました。
「これって、すごいことかもしれない!」
ゆうたはそう思うと、もっともっと町の人たちの役に立ちたいと感じるようになりました。
ある日、町の畑で作業をしているおばさんが困った顔をしていました。
「どうしたの?」とゆうたが声をかけると、彼女はため息をつきながら答えました。
「雑草が多すぎてね、一人じゃとても間に合わないのよ。でも、今日は他の人も忙しくて手伝えないみたいだし……」
「僕が手伝うよ!」
ゆうたはそう言うと、黙々と雑草を抜き始めました。彼は小さな手で必死に働き、夕方になるころには畑の半分以上がきれいになっていました。
「本当に助かったわ!ありがとう、ゆうたくん!」
おばさんは嬉しそうに笑い、手のひらに「心の通貨」をそっと置きました。
その夜、ゆうたはそのコインを見つめながら思いました。
「助けるって、こういう気持ちなんだ……」
次の日、ゆうたはふと気づきました。前日に助けたおばさんが、今度は別のおじいさんの畑を手伝っているのです。彼女はおじいさんに向かって、笑顔で「ありがとう」と言っていました。
「 僕が助けた人が、また別の人を助けている……」
ゆうたの心に、小さな驚きが広がりました。助け合いの輪がつながっていくのを目の当たりにし、彼はそれがまるで魔法のようだと感じました。
その後も、ゆうたが誰かを助けるたびに、その「ありがとう」が次の人に伝わり、さらにその先へと広がっていきました。町中の人々が少しずつ明るい表情になり、助け合いの輪が町全体を包み込むようでした。
ある日、公園で遊んでいる小さな子どもたちを見ていると、一人の男の子が転んで泣き出しました。ゆうたは急いで駆け寄り、男の子を抱き起こしました。
「大丈夫?どこか痛い?」
「うん……でも平気。」
男の子は涙を拭きながら、ゆうたに「ありがとう」と言いました。その後、男の子は泣いていた友だちに声をかけ、手を引いて一緒に遊び始めました。
その様子を見たゆうたは、ふと気づきました。
「『ありがとう』って、ただの言葉じゃないんだ。それは人を笑顔にして、つながりを広げていく魔法なんだ!」
その日、家に帰ったゆうたはおばあちゃんに言いました。
「おばあちゃん、『心の通貨』って本当にすごいね!僕が誰かを助けると、その人がまた別の人を助けていくんだよ。それで町全体が明るくなっていくみたいだよ!」
おばあちゃんはゆうたの話を聞いて、優しく微笑みました。
「そうだね、ゆうた。それが『ありがとう』の力だよ。人と人をつないで、みんなを幸せにしてくれる魔法なんだ。」
ゆうたはその言葉を聞き、これからも「ありがとう」を集める旅を続けたいと思いました。そして、いつかこの町のすべての人が、笑顔で助け合う世界を作れるかもしれない――そんな希望を胸に抱いたのです。
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