第7話 一難去って
目覚めてからのゴタゴタを片付けた次の日の朝。
前日までガッツリと眠っていたせいか、少し早めに目が覚めた。
幸いなことに、俺が刺されたというニュースは別の大きな事件のお陰で大事にはなっていなかった。とある大物芸能人の不倫騒動だとかなんとか。地上波のテレビではどこもかしこもその話題で持ち切りだった。
ありがとう、名前も知らなかったがアンタのファンになるよ。
病院関連の手続きは済んでいるし、会社関連は上司に任せられたし、後は特にやっておくことはないだろう。
久々にゆっくりとした休暇が取れたと思って、思う存分この休みを満喫してやるか。
もともとインドア人間だし、病室にいるのも部屋にいるのも大した違いはない。忙しくて見れなかったアニメや海外ドラマなんかを一気見でもしよう。
思い立ったが吉日。と思ったがスマホの小さい画面で見るのも味気ないないな・・・。
そう思い、スマホをたぷたぷと弄る。
メッセージの送り先は
来るなと言っても勝手に来るだろうし、それならいっその事と思い、頼み事をしておく。
『学校が終わってからで良いんだが、着替えをいくつかと、歯ブラシセット。スマホの充電器と、あとタブレット持ってきてくんね?』
メッセージを送って、すぐにスマホが震える。
『今から行く』
はぁ・・・ほんとこの子は・・・。
『今から学校だろ、別に急ぎじゃないから慌てなくていいぞ』
『今日は休む』
『そもそも面会時間は昼過ぎからだ』
『そう。じゃあ昼にいく』
あのさぁ・・・。いやまぁ早めに届けてくれる分には助かるんだが。
スマホがあるから暇つぶしには事欠かないが、やはりアニメやドラマは最低でもタブレットサイズの画面で楽しみたい。
『んじゃ頼むわ。まぁ何も言われないとは思うが、なんか言われたら姪とでも言っといてくれ』
『彼女ですって名乗ってみようか?』
『何お前俺のことそんなに嫌い? 俺に捕まってほしいの?』
『冗談。また後で』
全っ然冗談で済まないんだわ。
そもそも家に
病院関係者に疑われない事を祈っておこう。
昼に茨乃が来てくれるのなら、おそらく午後から来るであろう日向さんと茨乃の鉢合わせは回避できるだろう。
そう考えると先に茨乃に来てもらうというのは英断だったかもしれない。リスク・リターンに見合っているかは疑問だが、トリプルブッキングなんか起こされたらもう収拾がつかない。
三人共に、見舞いに来るときは連絡をするようにと伝えてはいるが、何が起きるかは分からないし。
ダラダラとスマホを弄って暇をつぶしていると、あっという間に時間が経っており、気づけば正午。
運ばれてきたやけに薄味の病院食に手を付ける。
栄養第一で味のことなんか一切考えられていないんだろう、2日ぶりの食事だというのに全く箸が進まない。端的に言ってクソ不味い。
が、『飯は絶対に残すな』という家訓を律儀に守り、胃に押し込んでいく。ご馳走様でした、と手を合わせちょうど回収に来た看護師さんへ食器が乗ったトレーを渡す。
面会時間は13:00時からだ。もうそろそろ茨乃が来る頃だろうか。なんて考えていると、コンコン、とドアからノックが響く。
壁に掛かっている時計へ視線を向けると時刻はちょうど13:00時。そんなぴったりに来なくても、なんて思いながらも少し砕けた返事をする。
「おう、入っていいぞ」
ゆっくりとドアが開き、
「失礼します、えへへ」
と顔を覗かせたのは、想像していた人物ではなかった。
なんでここに日向さんが!?
君を助けたかった。 樋本和己 @iwagorou
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