第5話 一区切り

 それにしても刺されたのが金曜の夜で良かった。

これが平日だったら無断欠勤、流石に電話が掛かってきていただろう。俺は電話に出られる状態じゃなかったとはいえ、病院関係者が出ればたちまちそこから噂が広がってしまう。

 会社に伝われば緊急連絡先に登録してある家族にも連絡が行くだろうし今よりももっと状況が面倒になっていたはずだ。

 この点だけは不幸中の幸いだった。


 日向さんが戻ってくるまでどうしようか・・・。

 ナースコールで看護師さんを呼んでもいいんだが、別に緊急の用事があるわけでもないし、あまり手を煩わせるのも忍びないしな。


 つかさちゃんとの電話を終えて5分程たった頃だろうか、ドアをコンコンとノックする音が聞こえる。どうぞ、というとお医者さんと看護師さんが一人ずつ部屋に入ってきた。ちょうど回診に来たらしい。


 手術の説明、連絡を取ろうとしたところスマートフォンにロックが掛かっていてやむなく財布から身分証を拝見したとのこと。大体日向さんから聞いていた通りの事を説明してもらい、その後、今回の手術費用や入院費用やらの説明とその書類。

 どうやら今回の件に掛かるお金は保険が適用されるらしく、加害者への請求が可能とのこと。よかった、流石にこれ実費はちょっと納得いかんかったからな。


 ざっと説明を聞き終えて、お医者さん達が帰り、気づけば時刻は16時。どっと疲れたな。

 とりあえず、茨乃しのと司ちゃんに入院している病院と病室の番号を伝えておく。それと今日は流石にしんどいから来ないでくれ、来るときは必ず前もって何時に来るとメッセージを送ってくれ、と伝えておく。


 そうでもしないと、茨乃と誰かが鉢合わせたらまた面倒くさいことになることはわかりきっている。病院関係者には叔父と姪とか適当に口裏を合わせておけばいいだろう。

 欲を言えば茨乃にはここに来てほしくはないが、多分そうもいかない。


 後は安静にして、退院を待つだけだ。

 喉元過ぎればってやつだな、終わってみればあっけないものだ。

 まだ面倒な事は多少残ってはいるが、ひとまず肩の荷が下りた。

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