第2話

 「ちょっと待って!」


 あーしは目の前の美女お姉さんに待ったをかける。


 「白い髪の毛だぁーって思ってたんだけど、よーく見たら銀色?」


 お姉さんの腰あたりまで伸びている長い髪の毛に触れる。え、すんごい。サラサラだなぁと思っていたけれど、触ってみるとそのサラサラ感に驚く。あーしの髪の毛よりもサラサラしているかもしれない。あーしも結構お手入れしてるから負けたぁ気分になっちゃう。


 「あ、あの……」


 しかも髪の毛長いしぃ。こーんな長い髪の毛をここまでお手入れするのってちょー大変なはず。もしかして異世界には画期的な洗髪方法があるのかなぁ。というか。


 「ちょっ……本当に、あの……」


 ぐぐぐと顔を近づける。だってぇ、この人の瞳青いんだもん。まじでやばぁい。だって青色だよぉ? どー考えてもやばぁいっしょー? 澄んだ青。雲ひとつない青空を反射させているようだしぃ、あーし自身そのまんま吸い込まれそうだしぃ、星空のようにとても神秘的だし。あーし今まで日本人としか接してこなかったから、青色の瞳ってすんごいかっこいーなーって思う。


 「あのっ!」

 「わっ……びっくりしたぁ」


 突然叫ばれて、あーしの心臓止まるかと思った。マジやばぁい。


 「あーし、なんかへんなことしたぁ?」

 「してますよ。距離が近すぎます……なんですか。あなたも私のこと好きなんですか?」

 「かぁいいなぁとは思うけどー。まだ出会ったばっかしだしぃ、好きとか嫌いとかわかんないかなーって」

 「そうですか」

 「というかー、名前はー?」

 「私ですか?」

 「そーそー。わかんないとなんて呼べばいーか困っちゃうじゃーん」


 お姉さんでもいーんだけど。


 「先にあーしから自己紹介するべきかなー。あーしは橘夏海。女子高生だったけどー、異世界来ちゃったから今は無職になるのかなー? えー、無職とかまじやばぁ」


 女子高生というブランドがなくなったことに今気付いちゃった。どーしよ。どーしようもないけれど。どーしよ。


 「私はセレスティア・リュミエールと申します。セレスティアとお呼びください。エリシア王国聖堂都市アステリアの大聖堂にて責務を果たす一端の聖女です」

 「責務?」

 「はい。私に課せられた責務は『エリシア王国』を救うことです。そのために召喚させていただいたわけです」


 淡々と説明される。それさっきも聞いたーって感じだ。


 「あーし、普通の女子高生だよー? なーんも力持ってないしぃ。ってか、戦いとかしたことないんだけど。殴り合いの喧嘩とかもしたことないよ? それなのに世界を救うとか無理だしぃ。厳しいじゃん、ふつーに」

 「それについてはご安心ください」

 「どーゆーことぉ?」

 「異世界から召喚された方はもれなく『加護』と呼ばれる力が付与されます。その加護の内容は人によって様々ですが、この世界で戦っていく上で大きな武器になる。それが加護です」


 ふぅん。この前オタクくんたちと観たアニメの用語を借りるなら『チート能力』と言ったところなのかなぁ?


 「あーしにもあるの?」

 「もちろんですとも」

 「こーゆーのってふつー時分でわかるもんじゃ?」

 「……そんな都合の良いものはありませんよ。自分の才能に生まれた瞬間から気付く者はいませんよね? それと同じです」

 「あーねー」


 きっとあーしが戦えばどーにかなるってことなのかなー? 多分そーゆーことっぽいっしょ!


 「いーよー」

 「と、言いますと?」


 セレスティアちゃんは首を傾げる。


 「あーしに世界救えるならやろーかなーって話」

 「そう言って頂けると助かります。もしも本当に拒否され続けるようであれば殺処分した上で新たな異世界人を召喚しなければならなかったので」

 「え、あーしもしかして死にかけてた?」

 「そうとも言えますね」

 「マジぃ? あーしほんとーに死にかけてたんだ。やばぁいね」

 「軽くないですか? もっと怒ったりしても良いところではないかと思いますが」

 「うーん、怒ってもしょうがないしぃ、なによりも今生きてんだしよくなーい?」


 今あーしが殺されそうなら怒るというか抵抗はすると思うけれどー、別にぃ今はそーゆーわけじゃないし。怒る理由はないよねぇ。


 「そういうものですか」

 「違うのかなー」

 「わかりません……」


 わかんないならじゃーいいかー、って思う。


 「それよりも今からタチバナ様には大聖堂へと向かっていただきます」

 「様とかいらないっしょ。堅苦しいもん」

 「……そういうわけにはいきません」


 せっかくの提案を拒否されちゃった。そっちがそー言うなら仕方ないね。


 「大聖堂ってここじゃないの?」

 「ここは分館です。アステリアからもちょっと離れていますよ」


 アステリア……って、たしかセレスティアちゃんが働く大聖堂がある都市の名前だったよね。急に色んな固有名詞がたくさん出てくるからわけわかんなくなっちゃうよ。


 「そーなんだ。なんでー?」

 「力を持つ者を召喚するわけですから。時には召喚した瞬間から暴れ周囲に危害を加える厄介者もいたりします。街中にある大聖堂でそのような事態になった場合、一般市民を巻き込む非常事態になりますから。リスクケアです」

 「あーねー」


 納得。


 「それでは早速向かいましょうか。アステリアに向かうまで距離としてはさほどありませんが、それでも魔物の生息地を抜けることになります。私一人で対処可能ですが、離れた場合助けられる保証はありません。なので、私に離れないようお願いします」

 「じゃー、手繋ぐ?」

 「……お任せします」

 「じゃー繋ごー」


 セレスティアちゃんの手を取って、歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オタクに優しいギャル、聖女に召喚される〜あーしが異世界召喚とかやばぁくてウケるし、あーしを召喚した聖女さんはちょーかぁいいねぇー〜 こーぼーさつき @SirokawaYasen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ