第12話「この小さき世界」

アーバンゲリラがいなくなってから6ヶ月が立った。


彼の装備品も押収された。その日の新聞の見出しは「THE SAVER SAVE THE AREA5」。裏面の見出しは「IS THE ROAD LEADER USELESS?(ロードリーダーは役立たず?)」。


だがマーカスは大見出しではなく、下に小さく書かれた指名手配の脱獄犯「ピエトロ・グロンダン」の記事を読んでいた。


「ピエトロ……」


─────────

新聞の裏面を読み、それを地面に叩きつけた。


「セイバー? 誰だ? 政府から公認を受けずに活動をしたらただの犯罪者だぞ? 俺がどれだけ苦労して……クソ!!」


「ロードリーダー。取り乱しては行けません。これから会議です」


「エリア4に来たのは人民救助のためだ! 会議しに来たわけじゃない!! ここに来たせいで脱獄囚の対処もできていない!」


「ですが、"SWO"の計画はあなたが……」


「黙れ!! あのクソ女は気に食わないんだ……。ああ、クソ……ベルバルド、俺はヒーロー失格か?」


「まさか。あなただからヒーローを続けられるのです。並大抵の覚悟と精神じゃ直ぐに壊れてしまう。立派ですよ」


「……ありがとう。当たってすまなかったな。ベルバルド。……だがこのセイバーとかいう奴は何とかしなくてはな……」


その時、ロードリーダーのいる部屋のドアが開き、アジア人らしき女性が入ってきた。


「こんにちは、ロードリーダー。SWO計画の責任者の……」


「いや、中止だ」


「え?」


「こちらも問題が発生してな。申し訳ないがすぐにエリア5に戻ることにした」


「……そうですか」女はやけにあっさりそれを受け入れた。


「空港まで私の助手に送らせましょうか?」


「結構だ。俺は飛べる」


そう言うとロードリーダーは高層ビルのオフィスから窓をぶち抜いて飛んで行った。


残されたベルバルドは気まずそうに部屋から出た。


「…………」


──────


「FGI……その"さらに上"には何がいる?」


ピエトロは古びた空き家の中で1人隠れ暮らしていた。


アーバンゲリラが去り際に残した言葉をずっと考えていた。


「いや……しかしまずFGIそのものを壊さなくては。社長は誰だ……?」


スマートフォンで「FGI 一番偉い人」と検索するとすぐに出てきた。


「"フィル・グッドマン"。ふふ、Fill Goodmanでフィール・グッド・インク。ダジャレかよ、くだらないな」


だが、なにか引っかかる。


「フィル・グッドマン……。コイツからなにかを聞き出せば……」




───────



『SAVER』 完

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