第11話「SAVER」
アーバンゲリラは携えている拳銃を抜き、ピエトロに向けて構えた。
「貴重なサンプルの提供ありがとう」
アーバンゲリラは躊躇せずピエトロに向けて発砲した。銃弾は真っ直ぐ彼に向かって発射されたが、彼に直撃する寸前に、力を失ったように地面に落ちた。
「…………?」
アーバンゲリラは首をかしげ、何度も拳銃を撃った。だがその全てがカランと地面に落ちた。
「なんだ? なにをした?」
膜が剥がれ、ピエトロは以前の顔を覗かせていた。
「分からない。だが……なにかが漲ってくる。これがフロキシンとかいう成分のパワーか?」
「まさか……お前……」
アーバンゲリラは引き金を引いたが既に弾倉に弾はなくなっており、カチカチという切ない音が響いた。
だがピエトロもなにか武器を持っているわけではない。自分の状況も把握しきれない。ただ生まれ持った勇気だけで再びアーバンゲリラに向かった。
アーバンゲリラは手のひらから"刃"を生やしピエトロにむけて振りかざしたが、彼はそれを避けアーバンゲリラの胸を殴った。
カツンと音が響く。
「防弾チタンだ。軽いが防御力はバカにできな……」
アーバンゲリラがなにかを話していたが突如背後に向かって吹き飛ばされた。
「ガフッ!!」
「なんだ……俺の力か? 俺が殴るのと少し遅れて……」
ピエトロは身体にエネルギーが満ちるのを感じた。
「さっき……お前から弾丸を受けた時、身体が漲ったんだ……。これは……なんなんだ? 教えてくれ……」
アーバンゲリラは打ち付けられた背中をさすりながら答えた。
「"能力"だ。フロキシンによる作用。お前は…………俺に知っている限りそれに目覚めた"2人目"の人物だ」
「1人目はロードリーダーか?」
「アイツの強さは解析不能だ。なんなのかわからない……。まさか能力に目覚めるとは思っていなかった……」
「俺の"能力"……」
ピエトロは自分の手のひらを眺めた。アーバンゲリラの撃った銃弾はピエトロに触れた瞬間、力を失ったように床に落ちた。
そして殴ったあと、まるで弾丸を噴射するほどのパワーでアーバンゲリラは吹き飛んだ。
「エネルギーか? ……吸い取って……放出する……」
「エネルギー?」
「俺の能力はエネルギーを"SAVE(保存)"する」
再びアーバンゲリラに向けて手をかざし、力を込める。
するとバフッと空気音がして、アーバンゲリラはまた壁に打ち付けられた。
「フグッ!!」
「こりゃあすごいな。ありがとう。俺もヒーローになれるかもしれない。ロードリーダーみたいに……」
「バカを言うな。お前みたいなのがなれると思うな……」
「……俺はお前を倒せそうだ。お前の目的は?」
「俺の所属はFGIだと思われているみたいだが……実際は違う」
「何?」
「"さらに上"だ。俺を傭兵として雇っている組織は。それだけ教えてやろう。FGIはあくまで傀儡……」
「そうか……。教えてくれてありがとう」
最後のエネルギーを使いアーバンゲリラを吹き飛ばそうとしたが、ガコンと重いものが落ちる音がした。
した部分を見ると、アーバンゲリラの足の防具が落ちている。
アーバンゲリラの足部分を見ると、"煙が漂っていた"。
「能力を持つ者が2人目と言ったな……」
「まさか……」
「俺が1人目だ」
アーバンゲリラの身体はみるみると煙になり、鎧だけを残して消え失せた。
「クソッ……!! 戻ってこい……!!」
「手を上げろ!!!!」突如張り上げられた声が響く。警察が到着したようだ。
ピエトロはアーバンゲリラのマスクを拾い上げ、警察の方に投げた。
「な、なんだッ!!!」
「アーバンゲリラはいなくなった……! 鎧を置いていったんだ。暫くは現れないと思う。多分な。」
「いなくなった? お前は脱獄したピエトロ・グロンダンか?」
ピエトロはコツコツと警官の方に向かって歩みを進めた。
「違う」
「じゃあ……何者だ?」
「"SAVER"だ。この街を"SAVE(救う)"者だ」
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