仮面バトラーフォワードvsシャドーフォワード
秋乃晃
起
ボクには、ヒーローがいる。
望月勝利を一年間演じていたのは、新人俳優の
「ごはんできたよー」
「はーい✨」
ボクはテレビのリモコンの【電源】ボタンを押しました。電源を消したら、その画面は真っ暗になります。ヒーローは、画面の向こう側。映像作品の中にしか存在しないのです✨
この分厚い“第四の壁”を乗り越えることはできません✨できるのは、貞子さんぐらいです✨
――と、思っていた時期がボクにはありました。
*
「あれぇ?」
「ボクは夢を見ているのでしょうか?」
ごしごしと目をこする。よくよく見れば、ドアを開ける前と開けて進んだ後で、サキガケの服装も変わっていた。屋内でははだしで歩いているのに、スニーカーを履いている。
「ああーっ!?」
『どうしたショー、んんっ?』
急に大きな声が聞こえてきて、自然とそちらのほうを見るサキガケ。自分と瓜二つの背格好の青年と、その肩に乗せられた執事服のヤギのぬいぐるみ。
(ひょっとして、ここは『仮面バトラーフォワード』の世界なのでは✨)
望月勝利と、仮面バトラーフォワードに与えられた
「なんでっ!? ボク!?!?!?」
「こんにちは! ボクは、サキガケです✨」
「えっえっ」
サキガケを名乗る自分とそっくりの存在を目の前にして、つま先立ちになってみたりしゃがんでみたり、ぐるっと周りを見たりする勝利。まったく同じ服装で、声も同じだ。
『おぬし、生き別れの双子がおったのか』
「いないよ!」
『ふむ?』
「ボクの兄弟は兄貴だけだってば」
『ならば、こやつはいったい?』
「ゴートさんこそ、ゴートさんの新型じゃないの?」
ゴートはシンボリックエナジーによって生み出された“
『知らぬよ』
「なら、ドッペルゲンガーってこと……?」
『ショーリに死なれてしまうのは困るのう』
相手が混乱している。
サキガケは、本来の名前をアッティラという。アッティラは、2010年の八月に宇宙の果てより巨大要塞で地球までやってきたのだが、その巨大要塞が東京湾のレインボーブリッジ付近で座礁し、直るまでは侵略行為をやめて、そのときのニュース番組で見かけた魁泰斗の容姿をコピーして生活している。魁泰斗を演じる上で、魁泰斗の主演作『仮面バトラーフォワード』を見ていたのだ。
「キミは、サキガケくんって言うの?」
「サキガケです✨あなたは、望月勝利くんですね?」
「ボクの名前を知ってる!?」
「でも、本当は魁泰斗さんですよね?」
ここが『仮面バトラーフォワード』という作品の世界なのか、あるいは、その『仮面バトラーフォワード』という作品を撮影している時間軸に飛ばされてしまったのか。そのどちらかを見極めるべく、サキガケは望月勝利を演じている魁泰斗に問いかけた。
「本当は……?」
『おぬし、真名があったのか』
「そんなかっこいいものはないってば。ボクは今も昔も望月勝利!」
「と、いうことは、ここは『仮面バトラーフォワード』の世界なのですね✨」
一つの作品として楽しんでいた『仮面バトラーフォワード』の世界に入り込めた。サキガケは空腹を忘れて、目を輝かせる。
「フォワード……サキガケくんは、仮面バトラーフォワードを知っているの!?」
『怪しいのう。もしや、アポストロフィーの?』
「なんで知ってるのか、詳しい話を聞かせてもらえるかな?」
「いいですよ✨ボク、望月勝利くんとはお話ししたいと思っていました✨今後、魁泰斗として『望月勝利』を演じる可能性もありますからね✨」
「キミが、ボクを?」
「はい! ボクの世界では、仮面バトラーフォワードは毎週日曜午前八時に放送していた変身ヒーローの番組ですし✨」
次の更新予定
2025年1月8日 18:00
仮面バトラーフォワードvsシャドーフォワード 秋乃晃 @EM_Akino
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