帰るべき場所、居るべき場所
大黒天半太
帰るべき場所
「お前の居場所は、この田島の家しかないのだ。もう、いい加減に観念しろ」
田島家家長たる祖父・田島三侍は、ドラマの裁判長か時代劇の町奉行のように、一段高い所から座ったまま、私・田島賢二に言い放った。
伯父達も、従兄弟達も、そして父と兄も、祖父の両脇に控え、ことの成り行きを無言で見守っている。
祖母も、母も、姉も、妹も、伯母達も、従姉妹達も、女人は全員この場から外されているのが、
「田島の直系男子は、覚醒すると同時に、
祖父は『今すぐ高校を休学でも退学でもして、術師になって戦場へ行け』と言っているわけだ。
家長たる祖父には従わねばならないと言う思考に、『何で俺が、この
まぁ、それでも私の考えと極端にかけ離れている訳でも無い。
儀式を経て覚醒した私の
これが、
つまり、
目の前に並ぶ親族にしても、
「わかりました。この田島賢二、お国のため、微力を尽くして参ります」
粛々と家長に従う素振りを見せれば、祖父も伯父達も疑う様子も無い。父と兄が、素直に従い、反論も抵抗も試みない私を少し拍子抜けしたように見ていた。
トントン拍子に話は進められ、但馬本家に縁のある山伏の修験道場、九州は
伯父と従兄弟達から、代々の先祖による手書きの写本らしきもの、そのコピーの束を一冊に綴じた、家伝の道術と霊術の本がそれぞれ一冊づつ来る。伯父達からは新品が、従兄弟達からは従兄弟達の細かい書き込みの入ったモノが。
血が繋がっているだけに、従兄弟達の、勘違い、読み違いをしそうな所の注意書きは参考になった。
道術も霊術も
学ぶ時間と魔力/霊力があれば、念のためということなのだろうが、今の私には都合がいい。
「賢二よ、但馬流の道術と霊術、
「わかってる。イメージできるよ。本当にご先祖様だったんだな、見ただけで術をまるごと思い出すとか」
「むしろ、何か取っ掛かりになるモノが無いと思い出せないのが、もどかしいくらいだがな」
百年ほど前のご先祖・但馬兵衛と、私は一人で会話する。脳内で会話すると、頭痛がするようになったので、便宜的に口と耳を使って、人格を分けて脳内ではその整理だけ行っている。
これから数週間の修行は、兵衛の実戦の勘の戻りと私の学習を兼ねていくことになるだろう。今の私の身体には、実戦はもちろん、術の実践の経験すら欠けている。
帰る場所は自分で確保する。そのための術も力も蓄える。後少しだ。
帰るべき場所、居るべき場所 大黒天半太 @count_otacken
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