第2話 水切り石

 ボクたちのこの能力、例えばボクの「霊視」も他の人にも多少は使えちゃってることがあります。

 ボクらはそれが異常に強いから、自分が感じるだけじゃない領域まで影響しちゃってる訳。

 要するに「視える人」「聴こえる人」「寒気」「頭痛」「喉の違和感」「胸焼け」「震え」「予感・予兆」

 とかとか。

 一般的なオカルト番組でも「耳鳴りがする」とか、寒気を感じるとか様々に感じて言い出す人が居るでしょ?そんな感じ。みんなちょっとちょっと感じたりはしているんだよ。


 で、そんな人が帰宅した時に、そんな人が家で迎える時、必ずちゃんと「お帰りなさい」って言った方が良いの。「お帰りー」、だけじゃなくね。



 ある親子が近場にある川沿いへ出かけて、帰ってきました。

 元気な息子さんを連れて、お父さんがお正月に恒例の凧揚げをして遊んであげてたの。優しいお父さんだね。


 凧を空高く上げて、息子さんに糸を手渡して一時は遊んでたんだけど、ついその子、手を離しちゃったんだって。

 凧は風に乗ってどんどんと遠くへ。そこそこ大きな川の反対側にまで飛んで、もう追いかけれない状況に・・・・・・


 二人は残念な気持ちで、その子も泣き出して。


 で、お父さんは気分を変えるために「水切り」を見せた。

 あの、丸い石をサイドスローで投げて、ぴょんぴょんと水面を刎ねるやつ、分かる?砂利石がある水辺では必ずやらない??


 お父さんはその遊びを息子に教えながら、その子も目を輝かせながら夢中に石を投げてその日は遊んだそう。


 ずっと、丸くて、楕円の平たい石をお父さんは子供の為に探してあげて、その子も一緒になって探して。なんとか三回は跳ねて投げることができて大喜び。お父さんは十回以上ぴょんぴょんと跳ねさせて、まるでヒーローでも見るようにその子はお父さんを見たそうよ。


 二人ともがいっぱい遊び、投げすぎて利き腕の肩が痛くなる程に遊び疲れ、揚々とストックしていたイイ感じの石を更にその中から厳選し、いくつかを持ち帰ったらしいの。


 男の子は

「またしようね!」

 って、かなりこの「水切り」遊びを気に入ったみたい。


 すぐ近くだったし、またいつでも来れる川。お父さんもヒーロー扱いされることに上機嫌。


「ああ。また行こうな」


 そんなやりとりが聞こえてきそうだね。




「お帰りー、そのままお風呂入ってー」

 と、お母さんは二人の冷えた身体を案じてお風呂へと先ずは誘った。


 男の子は石を握りしめながらそのままお風呂へと入ろうとし、お父さんは流石に衛生面を気にして

「それは置いておきなさい」

 と、洗面台に置かせて二人は温かい湯舟で鼻歌交じり。


 お母さんはまた、夕食として温かいお鍋を用意して待ってました。



 身体は芯から温まり、遊び疲れから二人はその後すぐにまた仲良く寝静まり、そんな姿をお母さんは微笑ましく見送りながら次は自分の番だと言わんばかりに入浴をしに行きました。


 追い炊きした湯船に身を委ね、寛ぎと微睡の至福な一時の最中、スライド式のスキッドドアのすりガラスの向こう側、洗面所に人影を見ます。


「・・・?あなたー??起きちゃったの??」


 返事はありません。

 トイレに少し起きただけか、勘違いかと思いこの時はそんなに気にしませんでした・・・・・・

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