~言霊~ 👻『お帰りなさい』🧂 7,614文字文字 【心霊カンパニア外伝】 カクヨムコン10短編🌟

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

第1話 お帰り

「お帰りなさい、『古杣ふるそま』さん♡」


 ボクはいつもこの瞬間を楽しみにしている。


「ただいま、『千鶴ちづる』ちゃん」

 そう言って、いつも疲れた笑顔で返してくれるの。


 本当はもう、全身マッサージでもして疲れを取ってあげたくなる衝動を抑えるのに必死なんだけど、この一瞬でも見つめ合うことで十分満足なんだ♡

 目が合う度に心の中で「大好き♡」って言ってて、絶対に聞こえてると思うんだけど、古杣さんは聞こえていないフリしているのが、切ないけどここで上手くやっていくのに仕方が無いことなのよね・・・・・・


 そんな彼、古杣さんは

『クレア・オーディエンス』(霊感能力)

 の持ち主で、彼が聴覚に全集中すると魂の叫びが聞こえてくる。それは人であれば今考えていることや、霊であればその想い、思念、残滓の願いを聞き取ることができて、その能力を活かしここ『迷い家マヨヒガ屋敷』の運営?と、ここに住まざるを得なくなったボクたちを養ってくれているの。


 法人として立ち上げているのは

 『心霊カンパニー【Consecrate】』(有)


 主な収入源は要人の占いや祈願、祈祷、厄払いや浄霊などを秘密裏に行う、要はここマヨヒガ屋敷の主である『あずさ』さんの「御呪い」で定期収入を得ているんだって。毎年の新年はとにかく忙しく、翌年の繁栄を願う企業や資産家が予約の列をなしている。


 お盆の時期も忙しく、供養から「縁切り」まで多くの人が梓さんの祈祷を願い、供給が追い付かないぐらいだそう。



 大きな仕事がたまに入ることがある。それは地域の「都市計画」の時だ。

 龍脈、地脈、風水、五行推命学とかも視野に入れ、必要な結界を貼り、逆に触れてはいけない場所、「禁足地」や「怨霊・地縛霊」の安眠場所といった因縁がある所を明示して開発を避けるか対処を検討してもらい、何処に何を建設するかを暗示させてあげること。

 有名な話でいえば「将門の首塚」の件はみんなけっこう知ってるよね。そんな将門みたいに直接的な「祟り」ってほどじゃないけど、そんな影響で不景気になったり経営が破綻したくないじゃない?


 最近はそういった信心深いことは気にしないって人が増えてきているらしくて、二人の負担は大分とマシになったと喜んでいたんだけど、そんなこんなで直ぐに潰している会社や企業、店が増えてるみたい。

 ってか、ボランティアで除霊に失敗した呪物や現象の保護とかもしてるから、余計に忙しくなっちゃってるんだけど・・・・・・


 土地を買ったり新事業を行うスポンサーっての?が、日本国内ではなく海外事業者が増えてきて、そういったことに疎い企業や情報も知らない人が関わることが多くなり、一族ごと祟られることも呪われることにもなっているって、前に古杣さんが言ってた。


 まぁ、ボクにはとことん関係がない話だね。


 梓さんの能力は、ボクにはよく分かんないの。

 何度か霊を「憑依」させたり、人形に自分の意思(幽魂)を移して「操作」したりしてたけど・・・・・・


 あ、ボクの能力は

『クレア・ボヤンス』(霊感能力)

 分かり易いでしょ?霊とかなんかが視えるの。

 あ、決して”覗き”なんかはしないからね?・・・たまにしか。


 他には「桃ちゃん」や「シャル」もいて、みんな五感を超越したっていうか、これも古杣さんいわく「ズレた感覚」らしいんだけど、梓さんはなんなんだろうか・・・・・・


 まぁそんなことはどうでもいいんだけど。


 ここ「迷い家マヨヒガ屋敷」はその名の通り、此の世とあの世の狭間にあって「神隠し」って知ってる?時空とかなんかの狭間に迷い込んでしまうやつ。そんな空間に存在していて、みんな様々な因縁、因果に”憑き”纏われちゃってるから、ここに匿ってもらっているの。めちゃ強力な結界も貼ってるから、ヤバい奴らには絶対に見つからないんだって。




「あ、ソマっち、おかー🎵」


「ちょっと、桃ちゃん!ちゃんと『』って言わなきゃダメじゃん!!」


「ああ、もー、面倒くさー・・・『お帰りなさい』」


「ただいま」


《ワン!ワンワン!!》


「ふふ、チャコも『お帰りなさい』って言ってる?」


「・・・多分」


 チャコってのは、犬の霊。ここのペット幽霊♡

 ある事件で桃ちゃんに憑いて来てしまったの。古杣さんは犬が苦手なんだよねぇ、かわいい♡

 何やら昔、「ワンちゃん」って呼ばれてたのが嫌だったとかなんとか。



 そう、ここでは必ず、外から帰って来た人へ『』と言わなければダメなんです。それは帰宅した本人へ、ではなくて

へ、へ『なさい』」と命じる『言霊』」


 絶対的な必須事項なんだよね。特にボクたちみたいな特殊能力者にはね。



 今回はボクたちの話じゃなく、そんな『お帰りなさい』を言わなかった、ある家族のお話です・・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る