第4話

 ざぁざぁと音を立てて雨が降っている。降水確率は20%だと朝の天気予報で聞いたので、雨は降らないだろうと思って傘は持ってきていない。

 しかし、予報とは裏腹に僕の目の前ではかなり強い雨が降り注いでいる。


 普段なら下校の道のりを半分ほど進んでいるだろう時間に空き教室で一人、雨が弱まるのを待っている。

 

 カタン……カタン……と、椅子を揺らしてぼーっと外を眺める。

 しばらくそうしていると、ぶーぶーとスマホが震えた。


 『昇降口で待ってます』


 ただ、一文。


 相変わらず出来る後輩だ。

 僕からは何も連絡をしてないのに、どうやって僕の状況を察したのかは今は考えないことにする。


 『ありがとう、助かった』

 『惚れました?』

 『どうだろ?』


 スマホをポケットに仕舞って、昇降口に向かう。

 

 「お、今から帰りか?」


 その道中、丁度職員室から出てきた麟児と出くわした。


 「そうだよ」

 「お前にしちゃあ遅い帰りだな?」

 「傘を忘れてさ、雨宿りしてたんだ」

 「まだ大分雨強いぞ?迎えでも来たか?」

 「そう。だから今から帰る」

 「ほぉ~ん……例の後輩ちゃんか?」


 なんで知ってるんだ?

 そんな疑問を置き、僕は取り敢えず返事をする。


 「親だよ、親」

 「ハハハ、嘘はいいって!」

 「………一つだけ聞かせてくれ」

 「お?いいぞ」

 

 バレているなら仕方ない。

 そう割り切って疑問に思ったことを聞いてみる。

 

 「なんで知ってる?」

 「そりゃ、直接会って話したし……」


 情報漏洩元、まさかの本人だった……。


 「健気な可愛い子じゃん」

 「僕からしたら恐怖の感情の方が大きいけど……」


 ケラケラと笑った後、麟児は大事にしろよとだけ言い残して去っていった。


 麟児と話して少し遅くなってしまった。

 葵を待たせてる。早く行かないと……。


 「遅いです!」


 昇降口に着くなり、僕の姿を見つけた葵に詰め寄られた。

 

 「ごめん…ちょっと話し込んでて」

 「ふふっ、遅れた理由は知っているので大丈夫ですよ。それはそれとして埋め合わせは所望しますけど」

 「僕に出来る範囲でなら」


 今回の件は僕が完全に悪いので、多少の無理は聞かないと割に合わない。

 了承を得た葵はぱぁっと明るい笑顔を見せてから、一歩踏み出し傘を差す。


 「さあ、帰りましょう。で」

 「事実だけど、強調しないでほしい……」


 

 

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空き教室で後輩と駄弁る日々 頬骨 @23232323232

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