第3話
「先輩のお弁当って手作りですか?」
昼休み、昼食をちまちま食べていると何時の間にか空き教室に入ってきて対面に座っていた葵が、首を傾げて質問してくる。
「手作り……うーん。そうとも言うし、そうだとは言えないかも?」
「え~と?」
「半分くらい冷凍食品だから」
「あ、なるほど」
朝から全部手作りするなんて、どれだけ時間に余裕を持って起きないといけないのか……。
ギリギリまで布団に包まっていたい派の自分には到底出来ない事である。
「葵の弁当は?」
「私は朝は得意じゃないので、いつもお母さんに作って貰ってます」
意外だ。
しっかり者の葵が、朝に弱いなんて。
「むぅ……。私にだって、苦手なことくらいありますよ」
「独白を読まないでくれ。怖いよ……」
「先輩のことなら何でもお見通しですので」
葵の意外な一面を知れたと思ったら、それ以上に怖いことを告げられてしまった。
「ふふっ、冗談です。流石に私でも先輩の私生活までは覗けませんから」
「そこまで知られてたら、ストーカーとか盗撮を疑っちゃうよ!?」
昼食を食べながら、どうでもいい会話をする。友人のいない僕にとっては、とても有難い時間だ。ちょっとだけ身の危険は感じるけど……。
「そういえば……先輩のお母様って美人ですよね」
「!?」
「この前スーパーでお会いしましたよ」
「そもそも何で顔知ってるんだよ!?」
「雰囲気で先輩っぽいなと」
雰囲気?
そんなもので人の母親までわかってしまうのか?
「先輩って暖色の雰囲気がしているんですよ。近くにいて暖かいというか、ぽわぽわするというか。お母様にも近しい雰囲気が見られたので話しかけたら、正解でした、というわけです」
「………」
雰囲気が見えるとか独特の感性過ぎてついていけない。昨日、母さんの機嫌がやたらと良かったのは、葵と話したかららしい。
ニヤニヤとした表情で、俺を眺めていた理由も分かった。
「外堀埋めてんなぁ……」
「もう逃げられないですね?」
「やめて……怖いから」
母親と面識あり。
何故か父親とも仲が良い僕の後輩。
「先輩が社会人になったら、お父様のようにになるんでしょうか?」
「だから……僕の独白を読むなって」
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