白い巨塔(唐沢財前が生きていたら)season1

さくら五郎

第1話 あれから三年


 里見は毎日患者と向き合い、忙しい日々に追われている。


「大学を出てもう5年か、君さえ良ければ戻って又研究に励んでみないかね」

「大河内先生ありがとうございます、しかし今の私には、目の前の患者と向き合う日々に追われて、がん治療の研究に時間を掛ける事が出来ません。」

「うむ、君らしい、そう言うと思っていたよ、

 ところで財前君はどうしてるのかね?」


 里見は、週に3日浪速大学に通い財前の治療に没頭して来た。

 5年前ならステージ4と診断されると誰もが絶望する事が多かったが、今では、抗癌剤や内科治療の発展により癌は治る病気へとなってきた。


「両肺に転移していた癌細胞は、抗癌剤によりほぼ無くなり、二年前小さくなった原発巣は、東先生が取り除いていただきました。」

「それは良かった、だが右手が」

「はい、脳への転移ですね、大河内先生、

東都大学の船尾教授をご存知ですか?」

「直接会ったことは無いが噂ではよく聞くがね。」

「その船尾教授からの紹介で脳外科医の第一人者の西岡先生の手で癌細胞を小さくする事が出来ました。今では右手の痺れも無くなり日々リハビリに励む毎日です。」


大河内先生は、表情を変えず頷いたが、どこか心配げな顔で私を見ている。


「里見君、素直になっても良いのだよ、私は君の事が心配でね、いつでも大学に戻って来なさい、私が医師生命かけて君を向かい入れろう、忙しいところすまなかったね、里見君、君からの返事待っているから、いつでもいいから電話しなさい。」


里見は先生を見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白い巨塔(唐沢財前が生きていたら)season1 さくら五郎 @sakura-goro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ