アルバイト
ヨガスクール受付スタッフ
場所 千代田区神田
時給 1200〜1500円
研修期間 約3ヶ月
髪型服装自由!交通費支給!………
キッチンスタッフ
場所 サンフラワーキッチン店
時給 1200円〜
・3ヶ月以上働ける方
交通費支給!未経験者歓迎!
ホールスタッフ
場所 世田谷区桜新町
時給 1250円〜1550円
未経験者歓迎!食事半額引き付き!
某サイトのアルバイト募集欄をスクロールしていくが、なかなか希望の募集が見つからない。
「どれもこれも時給1000円程度かよ……しかも3ヶ月も拘束されんの!?」
短期間で高い金が手に入ればそれでいい。3ヶ月も待てないし、そもそも長くバイトを続ける気はなかった。
どうせ数年もしないうちに俺も社会人になって否が応でも働く羽目になる。
それなら今のうちに学生時代を謳歌し、遊び尽くした方がこれからの人生のためだ。
しかし、今はしょうがない。
どんな仕打ちを受けたとしても、とにかく金が欲しい。
そう思いながら、半年前から借りているこの安アパートを見まわした。
じっとりとした、夏の湿気が漂うボロ部屋。
床は焦茶色のフローリングで、ところどころワックスが剥がれ落ち、小さい隙間に埃が溜まって黒ずんでいる。
壁にはところどころ茶色いシミがついていて、元の色が白いせいかとても目立っていた。
ここには両手で数えられる程度の家具しか置いていない。
マットレスを置いただけとも言える質素なベット、実家から持ってきた机と椅子。
ナトリで買った小さなクローゼットに、奥村電気でセール品だったテレビ。
ホテルとかによく置いてある小さい冷蔵庫で全てだ。
ここまで聞くと、このアパートにはトイレすらないのか!と思うかもしれないが一応、廊下の突き当たりに浴室とトイレがある、一応と言ったのは小さくて不便で設備が心許ないからだ。
おまけに少しカビ臭いので使う回数は必要最低限にしている。
すでに察しているかもしれないが、娯楽と言える物がこの部屋にはあまりない。
唯一、テレビとスマホぐらいが大学生らしさを保っていた。
本もパソコンもゲーム機もない、死にかけの老人みたいな部屋だ。
今までに何十回も思ったことを考えながら、目線をアルバイト広告に戻す。
電子機器特有の青白い光が、また俺の顔を照らした。
今は真っ昼間なので、カーテンを開ければこんな目に悪そうな光ではなく、自然の太陽光が部屋を照らし上げてくれるはずだ。
俺を丸焼きにするくらいの熱量をもって。
今でさえクソ暑くてコンディション最悪なのに、もっとここを居心地の悪いものにする勇気は俺にない。
ずっとベットに横になってスマホを見ているせいか、目が痛くなってきた。
体は湿気と暑さでグチョグチョになり、あまりの熱気にベットから飛び出す。
一様、部屋にはエアコンが設置されていたが、入居してから一回も掃除をしていないせいでつけてもぬるい
(ま、そもそもつけれないけどな……)
電気とガスは料金を支払っていないから1週間前に止まっている。
家賃と水道代だけはまだ払えているが、これも時間の問題だ。
別に貧乏なわけじゃない、家からの仕送りをちゃんと管理して使うべきところに使えばこんな状況にはならないだろう。
事実、親からは結構な量の現ナマをもらっていた。
しかし、どれだけ大きな額をもらったとしても使えばなくなる。
俺は壊滅的に金の使い方が下手だった。
今までは親が食費だの光熱費だのを管理してくれ、お小遣いまで計算してくれたのだから楽でいい。
だが一人暮らしをしてからは、親に管理をお願いするわけにもいかず……
ずっと、使いたい時に使いたいだけ使うという生活をしてきた。
家計簿をつけたとしても、いつも計画通りにいかず仕送りから3週間後には金が尽きていた。
それにしても、今月並みにピンチになったことはそうそうない。
毎回、なんだかんだ親に弁明してお小遣いをもらったり、サークル仲間から借りたり、彼女の家に居候させてもらったりとのらりくらりできていたからだ。
だが、先月も同じような状況になって、借りれるとこから借り尽くしてきたので今回この策は使えない。
「やっぱ初日にスニーカー買ったのが痛かったよな……彼女の誕生日もあったし、この時期はいくら金があっても足りねーよ」
そう言いながらスマホをベットに投げつけ、俺もその後に続きダイブする。
ベットは悲鳴のような軋みをあげて、俺とスマホを受け止めた。
いっそのこと、金融会社から借りてしまおうか。
2週間程度の生活費だったら、五万もあれば十分だ。
新しくまた仕送りが送られてきたら返せばいい、利子も少額で済むだろう。
そうしたら次こそ金の管理をしっかりして………
一気に問題が解決したような気がして早速外に出る準備を始めた。
俺は変なところだけ行動が早い、それが無駄遣いの原因だろう。
まあそんなことがわかっていようと直せやしないんだ。それなら、気楽に流されるまま行きたほうがよっぽどいい。
部屋着化した高校生時代のジャージを脱ぎ捨て、グレーのパーカーに黒いズボンを履く。
剃ったばっかりなのにまた生え始めたヒゲを隠すようにマスクをつけ、大学通学用のリュックを背負う。
髪の毛を軽く整えたら、ポケットにスマホと免許書などが入った財布、アパートの鍵を突っ込んだ。
特に事前調べをするでもなく玄関に向かい、取っ手に手をかける。
カタンッ
「………は?」
瞬間、ドアについている郵便受けに何かが入れられた。
壁が薄くで外の音が丸聞こえなアパートのくせに、足音が一切聞こえなかったので結構ビビる。
タイミングの良さに鳥肌が立ちながらも、入れられたものを取り出した。
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『アルバイト募集中』
場所 東京都沼田市篠尾町 1-19-17 篠尾町ハイツ212
期間 七日間のみ、泊まり込み。衣食住提供
時給 七日間合計 100万
内容
・人を選んでください。
・途中で辞退はできません。
連絡先 555ー114ー514
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「七日間で100万!?」
法外な値段に目玉が飛び出そうになる。
巷で噂の闇バイトだとしても、こんな金額聞いたことがない。
100万あれば、2週間の生活費どころか、5ヶ月は金銭面の心配をせずに暮らせる。
友達から借りていた金も全て返済できるし、金融会社に頼らなくてもいい。
自分で稼いだお金で親と彼女にプレゼントを渡す妄想をして、思わず笑みがこぼれる。
しかしここまで高額なのには絶対訳があるはずだ。
いや、でも高いと逆に安心な気もしてくる。金持ちが道楽で考えたくだらない仕事なんじゃないかと。
実際アルバイトをしに行ったら両手に女を携えた《たずさ》白髪のジジイが出てきたりして……
どっちにしろ、関わらない方がいい、頭ではわかっているのに金の誘惑には抗えない。
死体でも運ばされるのだろうか?
それとも詐欺の受け子をやらされる?
銀行強盗時の逃走用の車の運転手をやらされたり?
「……人を選ぶ?」
内容の欄にはその一言だけが書かれていた。
想像していた文面とは違い、拍子が抜ける。
もっとこう……怪しさ全開の長ったらしい説明が書いてあるのかと思っていた。
いろんな考えが頭を巡ったが、まともに考えられているのは莫大な報酬金についてだけだ。
まともな仕事をやらせてもらえる訳がない、どうせ怪しい場所に呼び出されて金目の物奪われて路上に放り出されるんだ……こんなチラシすぐにゴミ箱に捨てて大人しく金を借りに行くべき……
そうわかってはいたが、いつの間にか、俺は書いてあった電話番号に連絡していた。
数日後、俺の家宛にアルバイト用の履歴書が届いた。
どうやらここに俺の情報を書いて送り返せばいいらしい。
「どうか、どうか受かりますように!!」
願掛けをして、郵便ポストに履歴書を入れた。
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名前
年齢 21
性別 男
住所 東京都 〇〇区 〇〇 1ー1ー4 アパート木村 514号室
電話番号 080ー5123ー7182
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名前・性別・年齢だけで〇〇〇〇を選んでください 半目見開き子ちゃん @onigokko0309
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