怒り、そして…

ま、まぁ機嫌が悪いよりは良いな。うん。『あ、ご主人様。その布切れ…もし、綺麗に出来るなら、どうします?』

「は?」

いや、綺麗になるなら綺麗にしたいが。

というか、俺も使ったがこのハンカチの汚れの9割はお前の仕業だぞ?それを綺麗ってここには洗濯機も無ければ、

コインランドリーも無い異世界なわけで…あ

「もしかして魔法でどうにかなる?」

『はい!と、いうか、この世界では魔法やそれに近いものでどうにかするのが普通です』

「そ、そうか。普通か」

考えてみれば当たり前である。ある程度の文明があるならば«衣食住»の概念が無い方が不自然だ。そして、«衣»があるならば、汚れた端から捨てて、新たに作るより、

綺麗にする方法を考えた方が楽だろう。

ただ、魔法は全人類が使えるんだろうか?使えない人が居た場合はまさか、いちいち手洗い…なんて事はないよな?もし、魔法を使えない人達は、手洗いで衣類全般を洗っているなら、そして、このファンタジー世界で俺に、もし魔法を使う才能があるなら、かなり儲かるんじゃないか?

「な、なぁ、ローズさん」

『なんですか?』

「俺って魔法は使えるのかな?それと、

俺の前世の記憶が、まだハッキリしないから、コレは地球での勝手なイメージなんだが、魔法ってこの世界の人間、全員が使えるのか?使えない人とか…」

聞いた瞬間。俺は聞いた事を後悔した。

ローズから、強い怒り…いや憎しみに近いものを感じた。そして俺達の周囲十メートル程だろうか?草原の草花や木は枯れ、目の前を飛んでいた小さな虫はいきなり落下し始めた。恐らく死んだのだろう。これがローズの力なのか…冷や汗が止まらない。魂の色を見分けて俺を見つける事が出来たなら、魂に関する力を他にも持っていても不思議じゃないが、まさか生物を即死又はそれに近い状態に出来るなんて。呼吸が上手く出来ない。するとローズも周りの異変…というより俺の異変に気付いたようで、憎しみに近い怒りが消えた。ローズは、気まずそうに言った。

『すいません、ご主人様。ご主人様は私に質問しただけなのに。それなのに、ご主人様に怒りをぶつけるなんて…』

呼吸が出来る様になり、深呼吸してから、考える。

これは…俺が何か言って良いものか?

ついさっきも、俺の一言で泣かせてしまったし、何より先程の怒りは只事では無い。何も知らない無関係な俺が、何か言う事が許されるのか?もし、俺自身が何かに怒りを感じていた時に無関係な存在から何か言われたら…駄目だ余計に怒りを覚える。

下手したら暴力を振るってしまう。

だが、じゃあ放置でいいか?と問われたら正直、わからん。

何を言うべきか、俺が悩んでいるとローズは俺が無視出来ない事を言ってきた。

『それに、今のご主人様は何も感じないでしょうが、それは前世の記憶が完全に戻ってないからです。きっと全てを思い出したら、私以上の怒りを人間に覚えるでしょう。それだけの事を奴らはしたのですから』

「え?」

俺が人間に怒りを覚える?しかも、さっきのローズ以上に?それはもはや、怒りではなく…

「待ったローズ。さっきのお前以上の怒りって…それってもう怒りじゃなくて憎しみとか殺意ってものじゃないか?俺がそれらを持つ程に人間に何かされたのか?」

『はい、ご主人様。奴らがした事は絶対に許しては、ならない事です。それはそれとして、ご主人様は魔法を使う事が出来ますよ?何せ魔法を使用する為に必要な適性は通常は魔族の魂に宿りますから。』

俺は聞きたかった事のハズなのに、素直に喜べなかった。

だってローズは今、言ったのだ。

魔法を使用する為に必要な適性は〝通常〟は〝魔族の魂〟に宿ると。

この言い方とローズの先程の怒り、そしてさっきの俺の質問、更にあのローズの人間への態度、

ある意味…質問への答え…俺はどうやら、

異世界に来てから、学習しないらしい。

もうすでに、後悔し始めていた。



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2025年1月9日 10:00

帰ってきた王弟 俺の前世は魔王の弟! 起き抜けパンダ @myaf

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