ハンカチ
「通学中だったのが、よかったな」
俺は私服のズボンのポケットから
ハンカチを取り出し、自分の汗を拭いた。
これは断じて涙ではない!
…俺は誰に弁解してるんだ…
その後、気を取り直して右隣に居るローズに目を向けると。こちらは、涙と鼻水、
ついでに涎でかなり悲惨な事になっている。コイツ一応、雌だよな?俺は心から
ローズが人間でなくてよかったと思った。いや、ローズが嫌いとか、そういう話ではなく、知り合いの女の子(年齡は聞いていない。どんな存在でもどんな世界でも性別が女性なら絶対に触れてはならないタブーだと俺は知っている)が涙、鼻水、涎の
トリプルコンボを決めていたら、誰だって距離を取るだろう。世の中には即座に
拭いて慰める猛者もいるだろうが、
俺は違う。どちらかといえば、
俺は吹くだろう。
だから馬でよかった。と思ったが流石に
可哀想なので、ハンカチを一度広げてからたたみ直し自分の使っていない面で、
ローズの顔を拭いてやった。
うん、ここまではよかった。この駄馬、
鼻にハンカチが近づくと自分で顔を
動かし、俺のハンカチで
鼻水をかみやがったのだ。反射的に
引っ叩いた俺は悪くない。
悪かったとしても謝らない。ハンカチは
コレしか無くここは異世界。
手に入る確率が低く、更に手に入った
としても恐らく値段がクソ高い。
ハンカチとは清潔な布だ。用途は幾らでもある。それを台無しにしたのだ。
…拳でよかったかもしれん。
『ご、ご主人様、何をするんですか!
こんな、か弱い美馬を叩くなんて!そんな布切れが私よりも大事なんですか!?』
はて?か弱い?美馬?そこで俺は少し前の事実を思い出す。人一人を轢き殺しそうな勢いでタックルをかましてくる馬が
か弱い?あんなに顔から大量の水分を
垂れ流していた馬が美しい?
ああ、異世界基準で言ってるのか。
それなら納得…出来んな。前世を
思い出しつつある俺でも疑問を持ってる
時点でアウトだろう。
『ちょっと!ご主人様!なんで、そこで黙るんですか!?そこは「ああ、すまない
ローズ。もちろん!こんな布切れより美しく、可愛らしいローズの方が何万倍も大事に決まっているじゃないか!」って言う所ですよ!』
本当になんでコイツ以外、周りに誰も
いないのかな〜。今ならどんな言葉も
信じる自信があるのに…詐欺師さん達〜
カモはここにいますよ〜。
『なんで!満面の笑みを!浮かべてるんですか!ほら!可愛い相棒に何か言う事は?!』
…本当は言いたく無いが、このままじゃ
話が前に進まない、か…仕方ない。
「スマナカッタナ。ウツクシク、
カワイラシイ、ビバノローズ。
アイボウノ、オマエ二、コンナコトヲ、
スルトハ、ヤハリ、オレハ、ツカレテ
イルヨウダ。」
『やだ~♪そんなご主人様ったら♪
いくら本当の事でもそんな大きな声で♪
そうですよね~疲れてイライラしてしまっただけですよね〜♬』
どうしよう…コイツ馬の何か(魔獣とか)だと思ってたけど…どっかに鹿の部分が
隠れてるのかもしれない。
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