ブラジャーを掲げる自由の女神

露草

第1話

序章: ブラジャーを掲げる自由の女神


この世界の歴史の教科書には、誰もが目を奪われる一枚の絵画が載っている。その名も「ブラジャーを掲げる自由の女神」。この象徴的な作品は、見る者に力強いメッセージを訴えかけ、物語の序章として永遠に記憶されている。


絵画には、若い女性が一人、片手にブラジャーを高々と掲げ、他の多くの女性たちを先導する様子が描かれている。彼女の髪は風になびき、顔には恐れを知らない強い意志が宿っていた。背後には、同じく胸を張り、ブラジャーを掲げる女性たちが続き、彼女たちの顔には希望と誇りが浮かんでいる。画面全体は、革命の息吹と自由への渇望で満たされていた。


この絵が生まれた背景を紐解くと、一つの大きな問いが浮かび上がる。「なぜ女性たちはブラジャーを掲げているのか?」その答えを探るには、この絵画が描かれた激動の時代を見つめる必要がある。


時は中世と近代が入り混じる混沌の時代。王政の支配下にあるこの国では、美と信仰が特権階級によって厳格に管理されていた。その中でも女性たちの胸は特に「神聖なる美の象徴」とされ、その扱いには細心の注意が払われた。だが、次第にその「神聖さ」は特権階級の思惑によって歪められていく。


宰相マルグリットと聖職者ベアトリスによる「乳権神授説」の導入は、その象徴的な出来事であった。この説は「女性の胸という美は神が貴族と聖職者に託したもの」という理屈を掲げ、庶民がそれを隠す行為を禁じるものだった。そして、この政策を徹底するために生み出されたのが、ブラジャーの全面禁止令であった。


禁止令が発令されるや否や、全国で女性たちの生活は一変した。胸を支え、守るためのブラジャーがなくなったことで、日々の不便さと屈辱を味わうことになる。そして、すべてのブラジャーは「服装監督局」によって没収され、「ランジェリー・サプレッション・スクワッド」という名の部隊がその執行を担った。


だが、民衆はただ従うだけではなかった。一部の女性たちは密かに反抗を企て、ブラジャーを隠し、時にはそれを象徴として団結するようになる。その中心に立ったのが、この絵画の主人公である若い女性、エリスであった。


エリスの出身は小さな仕立て屋。彼女の家族は代々、精巧なブラジャーを仕立てることで生計を立てていた。エリスにとって、ブラジャーは単なる衣服ではなく、女性たちの誇りであり、自由の象徴でもあった。しかし、禁止令によってそのすべてが奪われることになった。


エリスの行動は最初、ささやかなものだった。禁止令が出る前、友人のコレットに新しいブラジャーを仕立てて渡したことがあった。だが、禁止令後にはその思い出が彼女自身と周囲の女性たちにとって希望の象徴となっていった。


やがてエリスは、同じ志を持つ女性たちと共に抗議の場に立つ。王女が持ち込んだブラジャーが象徴となり、それを掲げる行動が結果的に反抗の合図となった。それは、圧政に抗うための第一歩であり、希望の灯火だった。そして、この行動が国中に広がり、「第二次ブラジャー暴動」として歴史に刻まれることとなる。


「ブラジャーを掲げる自由の女神」は、こうした歴史的な出来事を象徴する一枚の絵画だ。その中心に立つエリスの姿は、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けている。彼女が掲げたブラジャーは、ただの衣服ではなく、自由と尊厳を求める女性たちの魂そのものだった。


この物語は、エリスと彼女を取り巻く人々が、どのようにして自由と尊厳を取り戻したのかを描くものである。そして、彼女たちが残したその勇気と団結の精神は、未来へと続く希望の象徴として輝き続ける。




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