第2話二日目

電気がないと、時計が動かない。だから、今何時なのかも分からない。

明るくなったら、家族は起き始めた。


「キャー」

「どうしたの?美香?」

「トイレ、流れてない」


母親のさおりは、トイレを確認した。

「誰?トイレ流さないのは!」


「オレだよ」

「何だ、父さんしっかりしてよ!トイレくらい流して!」

「イヤ、トイレは電気は必要ない。幸い、風呂の浴槽に昨日の水がある。出来るだけ溜めて、一気に流そう」

と、良二は言うが、あまりに美香が駄々をこねるので、良二はバケツでトイレの汚物を流した。


「父さん、今、何時ぐらいだろう?」

「祐介、良い質問だ。昔は太陽高度で時間を把握していた。ベランダに出よう」


良二はベランダに鉛筆を立て、分度器で測る。

「祐介、1時間は15度だ!ここから、時間を計測する」

「で、今、何時なの?」

「分からん。日の出から日の入りまでメモをしないと」

「メンドクセー、時間なんて良いよ!早く、電気通るのを待とうよ」

「そうは、いかん。オレは家族を守る義務がある」


祐介は不貞腐れて、部屋に戻る。良二は線を引いて行く。


太陽高度がマックスになったと思えた時間に、昼メシを食べた。

乾パンと水。


「コリャ、いかんな」

「何?あなた」 

「さおり、部屋の安全を保ってくれ!オレは情報収集に向かう」

「何の?」

「生きる道だ!」


さおりは胸が熱くなった。

「あ、あなた宜しくね」

「……ぐぁっ!ダメだ!」

「どうしたのあなた?」

「腹壊した!やっぱり、硬水は腹を下すわ」

「お父さん!流してよ!」

「水が少ない、溜めろ!」


バタン!


ブリブリぷすっ〜


「じゃ、行ってくる」

「お父さん、サイテー!」

美香は、自室に戻った。


グルグルピー


やだ、私もお腹壊しちゃった!でも、あのトイレでしたくない!


でも、美香は我慢出来ず、トイレに向かった。

先客がいた!

「開けて!もう、漏れそうなの!」

「黙れ!美香!先陣はオレだ!」

「お兄ちゃん、早く、早く!」

「うっせぇなぁ〜」


バタン


美香は誰のモノとは言わず、トイレに走って用を足した。

さおりがバケツで流した。


「おいっ!戸川!」

「なんだ!宮田!無事だったか?」

「あぁ〜、何とかな。で、この騒ぎは一体何だ?」

「ノストラダマスの予言らしい」

「ノストラダマス?聴いたことねぇなぁ〜?ノストラダムスの間違いじゃねぇのか?」

「いや、名古屋市今池の父・ノストラダマスはこう予言したそうだ」

「なんて?」

「日本の人口を3分の1にすると」

「何だと?信じられるか!そんなもん」

「じゃあ、今、信号機がついて無いのはどうなんだ?タバコ吸うライターも腕時計も動か無いのは何故だ?これは、ノストラダマスの予言が正しい証拠だ!」

「じ、じゃ、生き残るのは?」

「水と食料を見つけた者のみだけだ!」

「じゃあ、皆んなで田舎に行けばいいじゃん」

「……そうだな」


これは、ノストラダマスの予言の一部なのだ。

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エネルギッシュ家族 羽弦トリス @September-0919

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