第4話 orannzyetto

夕雷ゆうらいと霞と。


夕茜ゆあおはようっ。」


カーテンを開けて日凪ひなの唇に重ねる。


「おはよう。日凪、朝ごはん食べてく?」


「遠慮しとくね。」


「分かった。」


月舞らいむさんと会うのかな。


「夕茜、昨日はありがとう。また予定が合ったら遊ぼう」


「うん。」


「19時に電話してもいい?」


「いいよ。」


「ありがとう。夕茜、またね」


「うん。またね」


日凪と濃いキスをして甘い証を2箇所付け、彼女が玄関から出てく。


日凪の耳が赤い。


彼女が玄関から出て寂しさが限界に達し、スマホの空を題材にしたRPGをプレイしたりアニメを観賞してたら柚菜からメッセージが来た。


【いきなりごめん。夕茜、空いてる?】


【うん。空いてる】


【もし良かったらsunsetで一緒にアクセとか見ない?】


【見たい。柚菜ゆずなん家の近くのMadder redで待ち合わせする?】


【ううん。夕茜ん家に行く。】


【ごめん。】


【気にしないで。夕茜、何時にする?】


【ありがとう。17時とか.....柚菜は何時が都合良い?】


【いえいえ。17時】


【了解。柚菜、また後で】


【うん。また後でね】


柚菜とのやり取りが終わった。


冷蔵庫の中にじゃがいも、南瓜、トマト、豚の挽き肉、ウィンナー、アップルジュース。


柚菜の好きな紅茶クッキーも。


ポトフとトーストを食べて食器を片付け、洗って洗面台で歯を磨いてリビングの長座布団に寝転がる。



眠い。


ーーー


「ん......。」


お昼ごはん食べ逃した。


15分前。


バタバタと薄い青のシャツとマキシスカートを着てメイクをし、歯を磨いてバッグの中にスマホを仕舞って紅茶クッキーも持って。


柚菜から【夕茜、着いたよー。】とメッセージが来た。


アパートの外。


柚菜が駆け寄ってくる。


「夕茜ー!」


抱きつかれた。


「柚菜離して。」


「ご、ごめん。sunsetに行こう」


柚菜の顔が真っ赤。


「うん。」


彼女の、落ち着いたブルーの軽ワンボックスの助手席に乗る。


柚菜が、私を見てエンジンをかける。


「夕茜、red lightningで夕食食べる?」


「うん。red lightningで食べよう」


「決まり!」



水族館の近くのsunsetに着いた。


顔を染めながら見つめてくる柚菜。


彼女が誤魔化す様に私の頬をプニッとする。


「柚菜?」


「夕茜の服装可愛い。」


「......っ。」


柚菜のふわりとした笑顔。


落ち着かない。


「っ!」


ゴッと響いて柚菜が心配そうに頭を撫でる。


「夕茜大丈夫?」


「うん。大丈夫」


「......。」


柚菜がタオルハンカチをミネラルウォーターで濡らして私の頭の上に当てる。


「柚菜ありがとう。」


「ど、どういたしまして。」


「!あ......。」


近い。


「ゆ、夕茜。ぶつけたとこ大丈夫?」


「うん。大丈夫......」


柚菜が離れて照れた顔でわたわたとしながら降りる。


「サ、sunsetの中に入ろう!」


「うん。」


顔が火照ってく。


柚菜が鍵を閉める。


「いらっしゃいませー。」


sunsetの奥に進み、red lightningの入口に入ったら女性の店員が来た。


「!佐久間さん?」


「夕茜ちゃん!?......し、失礼いたしました......いらっしゃいませ、2名様でしょうか」


「はい。2名です」


柚菜が答え、佐久間さんに窓際の席に案内されて腰掛ける。



佐久間さん、金髪からミルクブラウンになってる。


red lightningに来たの2年振り。


カルボナーラ、ハンバーグセットでライス若しくはクロワッサンのセット、パプリカとしめじのパエリア、ハンバーグカレー、チーズオムレツ、舞茸とほうれん草のバターソテー、バニラアイス、ミルクレープ、サーモン丼、チキンカレー、海鮮丼、ショコラケーキ。


あとは、日替わりのメニューで鮪のバターソテーとアジフライ。


メニュー表を見てると佐久間さんがお冷を持ってくる。


「こちらお冷でございます。」


『ありがとうございます。』


「ご注文の方はお決まりでしょうか?」


柚菜とアイコンタクトして、彼女が

「はい。夕茜、先にどうぞ。」と言った。


「ありがとう。アボカドと鮪のポキ丼で」


「シーフードパエリア......それと、トマトサラダをお願いします。」


「かしこまりました。確認をお願いいたします......アボカドと鮪のポキ丼がおひとつ、イカとパプリカのパエリア、トマトサラダ......以上で宜しかったでしょうか?」


『はい。』


「失礼いたします。」


柚菜がそわそわしてる。


「柚菜、最近どう?」


「ふえっ?えっと。」


「うん。」


あたふたしてる柚菜可愛い。



青衣あおいと遊んでる。夕茜は?」


「そっか......日凪と遊んでる。」


「そうなんだ......。」


柚菜の声のトーンが下がった。


「お待たせいたしました。アボカドと鮪のポキ丼のお客様。」


穏やかで低い旋律の風のようなボイス。


「はい。」


海犀だ。


「シーフードパエリアとトマトサラダのお客様。」


「はい。」


「以上でお揃いでしょうか?」


『はい。』


「ごゆっくりどうぞ。」


『ありがとうございます。』


半分食べて柚菜が読者モデルの話をしてくる。


「夕茜、日凪とはどう?」


「うーん。まあ、日凪と上手くいってる」


「......そっか。夕茜、霞咲夕日ちゃん知ってる?」


20歳で最近、新潟でも活動してる人気モデルさん。


「うん。知ってる」


「うーん。」


「ん?」


「えっ?ゆ、夕茜。何でもないから」


「そっか。」


「う、うん。」


食べ終わって会計し、出ようとしたら海犀が私達にオレンジピールのマフィンを渡してくる。


「海犀いいの?」


「うん。夕茜ちゃん、柚菜......良かったら食べて」


『ありがとう。』


笑顔が日凪に似てる。


海犀にときめいてない。


南谷海犀みなみやかいせい

日凪の双子の弟。

身長 185センチ

珈琲色の目。

漆黒とダークブラウンが混ざった、すっきりとしたマッシュ。


「いえいえ。またお越しくださいませ」


『ごちそう様でした。』


柚菜がred lightningからイルミネーションを開催してるTwilight leadまで走らせ、30分で着いて車から降りて入場券を購入する。


柚菜のさっきのごまかし方。


霞咲夕日ちゃんが来る?


いや、無い。


考え事をしてる私の雰囲気を察した柚菜に"Twilight Baby’s breath”のオレンジと赤のネオンサインまでエスコートされる。


夕暮れ時とかすみ草......。


ネオンサインの後ろに星の道。


「......っ。」


赤、淡い青、オレンジ、白、緑。


「柚菜......!」


柚菜が離れたとこにある白い月のイルミネーションを見てる。


19時。


日凪から電話がかかって来ない。


月舞さんとデート?


ライトアップされた花の中にある木製のブランコに座って星の道を見る。


日凪......。


「っ!」


女性を見た瞬間に電気が走る。


日凪や青衣の時とは違う感覚。


白い月と茜色、オレンジが絡み合う。


「初めまして。霞咲夕日です」


「えっ?は、初めまして......高野夕茜です」


霞咲夕日ちゃん!?


「いきなり申し訳ありません。高野さんとお付き合いしたいです」


「ふえっ?」


「ストップ!夕日ちゃん、夕茜は彼女が大好きだから......ちなみにこの子のセクはリ」


「柚菜?」


「ご、ごめん。月虹に行こう」


「うん。」


「はい。」


柚菜ん家に寄り、タクシーに乗って月虹まで向かう途中に夕日ちゃんが私を見つめてきて見つめ返す。


「夕茜さん。」


「......っ。」


霞咲さんに見つめられるのが恥ずかしい。


月虹の前に着いて支払い、タクシーから降りて柚菜がドアを開ける。


「いらっしゃいませ。テーブル席にどうぞ」


『はい。』


夢さんと会ったの半年ぶり。


柚菜のお姉さんで28歳。

167cm、レズビアン。

髪色はアンバー、ミディアムボブ。

フェムさん。


藍色のカッターシャツと黒のスラックス、ネクタイが似合ってる。


月虹はダイニングバーで、ランチの時間帯からセクマイさんやノンケさんが食べに来たりしている。


「ご来店ありがとうございます。

夕茜ちゃん、柚菜ちゃん、夕日久しぶり。」


紗希さんが来た。


『お久しぶりです。』


高澤紗希たかざわさきさん。

26歳。

レズビアン、ボイさん。

髪色はスターダスト、ハンサムショート。

175cm。

暗いトーンのブラウンの瞳。

主にビアンやバイ、パンセクからモテモテ。


「日凪が夕茜ちゃんと付き合えたって話してたよ。」


「ふえっ?日凪がですか?」


「うん。夕茜が可愛いくてしょうがない、抱きたいって日凪が......」


ん!?


「こら!夕茜、柚菜、夕日ちゃん。何飲む?」


「マリブコークで。」


「カルーアミルクで。」


「カシスソーダでお願いします。」


「かしこまりました。」


「夕茜ちゃんと話してたい......わっ、ごめんなさい。」


紗希さんが夢さんに怒られながらカウンターに戻っていった。


日凪から連絡来ないの寂しい。


「こちら、お通しのミルクチョコレートとカシューナッツです。」


『ありがとうございます。』


乾杯をしてからマリブコークを飲んでたら霞咲さんに頭をなでなでされた。


「霞咲さん?」


柚菜は夢さんと会話してる。


落ち着かなくてお通しのミルクチョコレートを食べる。


日凪になでなでされたい。


「た、高野さんごめんなさい。」


霞咲さんに撫でられるの嫌じゃなかった。


「気にしないでください。霞咲さん」


「はいっ。」


霞咲さんの返事の仕方が可愛い。


親しくなりたい。


「もし良かったら......。」


霞咲さんからしたら迷惑でしかない。


彼女が、優しい青色のクラッチバッグからオレンジと茜色と青のグラデーションのボールペンとクラフト紙のメモ帳を取り出して書き、名刺を渡すように私の前に出して柔らかく笑む。


「......高野さん、もし良かったら。」


淡い貴女から渡された甘いプレゼントを開けてもいいのかな。


いや、白い月の様な優しい夕凪と霞の間で揺れてない。


「はい......。」


熱い。


日凪......。


柚菜と目が合った。


何も言わない。


ん?


柚菜が何かしてる。


ゴクゴクとマリブコークを飲みながら霞咲さんと彼女を交互に見てメモ帳を仕舞うと同時に、私の耳元で柚菜が小声で囁く。


「霞咲さんに惹かれてる?」


「ごほごほっ!」


「あ、夕茜ごめん!」


柚菜が私の口周りを拭く。


「大丈夫。柚菜ありがとう」


恥ずかしい。


彼女がちびちびとカルーアミルクを飲む。


「......どういたしまして。」


「柚菜、気にしないで。」


「うん......。」


霞咲さんと目が合って見つめ合う。


「......っ。」


ニコッとされて顔が火照ってがぶがぶとマリブコークを飲む。


柚菜がそわそわしてる。


「夕茜ちゃん。良かったら」


スッと夕暮れ時を彷彿とさせるような淡いブルーのグラスが置かれ、水が揺らめく。


夕凪.....。


凪ぐ時、太陽がゆったりと揺れるような。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。」


紗希さんがふわりと笑む。


淡い青と深い紫と茜色が溶け込んで。


「あの、高野さん。」


「はい......っ!」


クラッとして私の肩と腰に優しく手を添える霞咲さんが入口を見る。


淡く灯るホワイトブルー。


霞咲さんと対峙する恋人。


オレンジとホリゾンブルーの火花。


霞咲さんが離れ、日凪が隣に座って私を柔らかく抱き寄せる。


「日凪......っ。」


「夕茜、ごめんね。」


「ううん。」


あかい世界が溢れてラズベリーの香りが溶ける。


日凪が離れて隣のソファ席を気まずそうに見やる。


「っ!月舞さん、青衣、こんばんは。」


『こんばんは。』


月舞さんが立ち上がって私の左頬をプニプニして戸惑う。


「月舞!止めて」


「ん?夕茜ちゃんを放ったらかしにしてた日凪に言われたくない」


月舞さんが日凪を睨みながら私の頭を撫ぜてきて彼女が引き剥がす。


夕凪と月が睨み合ってる。


柚菜や霞咲さん、青衣、夢さん、紗希さんに迷惑を掛けてる。


あ。


紗希さんが日凪の方に顔を近づけて頭を撫で、黒炎が心を包む。


「さ、紗希止めてよ。」


「夕茜ちゃん達に迷惑を掛けない。」


「はい......。」


あ.....。


日凪が私の隣に座っても厨房の中に戻ってく紗希さんを見つめてる。


紗希さんの事も好きなのかな。


カフェモカの香りが掠め、私達の前に跪く女性。


「いらっしゃいませ。」


私達の前にレアチーズケーキ、レモンゼリー、ミルクレープ、モッツァレラチーズと胡桃のカップケーキ、レアチーズケーキが置かれて萌珈がニコッと微笑む。


『ありがとうございます。』


「ごゆっくりどうぞ。」


萌珈が踵を返してきて「夕茜、来月空いてる?」と聞いてくる。


「ごめん。日凪とデートするから」


「そっか......。」


「あ......。萌珈、私達と遊ぶ?」


「うんっ。」


可愛い笑み。


角夜萌珈すみや もか

レズビアン。

フェム。

青寄りのアッシュの髪。

深緑のヘアゴムで後ろに纏めていて、柔らかい茶色のヘアピンをしている。

薄い琥珀色の瞳。

高1からの付き合いで、遊ぶ度に私の腰に触れてくる。


「ねえ、夕茜。2人きりになりたいよ」


日凪が擦り寄ってくる。


「.......っ。紗希さんと2人きりになれば?」


「夕茜ごめんね。愛してるよ」


日凪が甘ったるくて艷やか過ぎる。


したくなっちゃう。


モッツァレラチーズと胡桃のカップケーキを食べ、柚菜が「そろっと出よう。」と言って会計をして月虹を出る時。


「夕茜、日凪と仲直りしな。」


夢さんの優しいトーン。


「はい.......。夢さん、紗希さん、萌珈。ごちそう様でした」


『ごちそう様でした。』


水色の月、オレンジの星、あかい星。



南口から駅前まで日凪達と歩いてロータリーまで来たら柚菜と霞咲さん、青衣、月舞さんが足を止める。


「日凪、夕茜。今日はありがとう......オフ会の時に話そう」


『うん。』


「あ。柚菜、これ良かったら」


「夕茜ありがとう。」


「いえいえ。」


寂しそうな霞咲さんに包み込まれて灯る。


「夕茜さん、おやすみなさい。」


「お、おやすみなさい。」


夕茜さんて呼ばれた。


「ちょっと!夕茜を離して。」


「日凪さんおやすみなさい。」


「夕日ちゃんおやすみ。」


柚菜達がタクシーに乗る前。

飲み屋街からアパートへ向かおうとしたら月舞さんが走ってきて私の頬をプニッと触れる。


「夕茜ちゃんっ。今さらだけど、私は花染月舞はなぞめらいむ......恋人候補として見てほしい!おやすみ!」


「え?高野夕茜と申します。花染さんおやすみなさい......」


月舞さんがミニ封筒を渡して柚菜達と帰ってく。


「ちょっと月舞っ!夕茜はだめ」


ん?

琴音ことね先輩の妹さん......。


日凪ん家と私ん家の近くにあるコンビニに寄ってカシューナッツ、シュークリーム、スナック菓子、オレンジジュース、ミルクティーを購入して彼女のマンションの部屋に入る前。


霞む水色の月を眺める。


「夕茜、ゆっくりしてて。」


日凪が私の頭を撫でて浴室へ歩いてく。


「うん。」


落ち着かない。


彼女が戻ってきて私の耳を食み、胸をゆっくりと撫でる。


「夕茜、大好きだよ。」


甘い声が淡い時に響く。


「私もっ......ん、日凪が大好き。」


「愛してるよ。月舞や夕日ちゃんに渡したくない」


「っうん......。」


深いブルーの灯り。


ーーー


蕩けた。


日凪と一緒にお風呂に入ったあと、霞咲さんと花染さんの連絡先のメモを一瞬見て鞄の中に仕舞う。


「月舞か夕日ちゃんに惚れたの?」


高1の頃、日凪が膝枕してきた時よりもときめいてる。


彼女が下から見つめながら首筋を撫でる。


日凪の淡いブルーのルームウェア。


高3の頃に柚菜達と一緒に見たブルーアワーを思い出す。


「んっ......惚れてない。日凪の事を愛してる」


「......っ良かった。夕茜」


日凪が言おうとしてるのは。


「ん?」


起き上がって珈琲色の濁りのない目で見つめてくる彼女。


揺らめくあかい星と白い月。


胸にオレンジと茜色のグラデーションの炎が灯る。


「今度、月咲つきさきの橋に行く?」


「.......っうん。」


「あのっ。夕茜のご両親に挨拶したい」

.」


「うん。私も日凪を紹介したい」


紗希さんの事が引っかかる。


「夕茜......。」


ベッドに入って日凪にくっつく。


繊月が翳ってるのに。





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夕暮れ時に霞咲く夜花 氷夜 @ryoku-milkcandy6

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