第3話 bloom blue
グリーン、オレンジ、茜色、ダークブルー。
ーーー
「ん......。」
朝ごはん食べてない。
支度をして鍵を閉めて駅前のロータリーへ向かう。
待ち合わせ場所の駅南のロータリーに到着すると、既に
淡いブルーのシンプルなシャツとスカートを着てる夕茜が眩しい。
「夕茜、遅くなってごめんね。」
「大丈夫。bloomへ行こう」
「うん。」
ロータリーから歩いて駅前の書店の隣にあるbloomにもうちょっとで着く。
!
青衣と派手な女性。
彼女の隣に立ってる派手な女性をちらっと見ると同時に、女性が会釈してくる。
金髪のショートに切れ長の茶色の瞳、ストリート系の服装で175㎝以上ありそう。
会釈し返して隣を見る。
「夕茜、日凪。久しぶり」
「青衣久しぶり!」
「久しぶり.......。」
夕茜が切なそうに青衣を見ている。
彼女が夕茜を見つめたかと思えば今度は私の方に視線を巡らせる。
「夕茜とデート?」
「うん。デート」
「へえ。夕茜と日凪付き合ってるの?」
青衣の機嫌が悪い。
「付き合ってないよ。」と答えると青衣が
「そっか。良かった.....夕茜フリーなんだな」なんて言う。
「夕茜、もう一度やり直したい。今度あたしとデートして」
夕茜に近づいたかと思うと、彼女に軽くハグをして.....って!
もう一度やり直したい、今度あたしとデートして!?
「青衣やめて。私好きな人いるし、デートなんかしない」
青衣が夕茜を離そうとしないし、私を見てる。
「好きな人は日凪じゃない。」
胸が痛い。
「そっか。良かった.....今週の土曜日にデートしてほしい」
「〜っ。分かった」
夕茜から青衣を離す。
「青衣には負けないから。」
思わず青衣に宣言しちゃった。
夕茜と青衣が驚いた表情をしてる。
「じゃあ、どっちが夕茜に相応しいか勝負しよう。夕茜、日凪またね」
「うん.....。またね」
「またね。」
金髪のショートの女性が夕茜の手を握り首筋にキスをする。
『っ!?』
「佐久間っ、夕茜に何して.....。」と青衣が怒りながら佐久間さんを見上げる。
「夕茜ちゃんの事がタイプだから。」
タイプ!?
「は?佐久間、Rainbow tearの中に入るぞ。」
「ごめん。Rainbow tearでレアチーズケーキ奢るから」
「ありがとう。」
「いえいえ。夕茜ちゃん、お姉さんじゃあね」
『はい......。』
青衣と佐久間さんが離れてく。
気まずい。
夕茜の方を見ると、ふいっと顔を逸らされる。
彼女の顔が真っ赤になってる?
あ!bloomでご飯食べないと。
「bloomに入ろう。」
「うん。」
オシャレな照明と、白と青を基調とした店内に入る。
窓辺の席に座ってすぐ、店員さんがお冷とおしぼりを持って......ん!?柚菜っ?
「いらっしゃいませ。日凪と夕茜じゃん」
「柚菜久しぶり!」
「久しぶり。」
「久しぶり。夕茜とデート?」
「ち、違うよ。」
夕茜が頬を真っ赤に染めて黙り込む。
私達の小学1年の頃からの幼なじみ。
ライトブラウンのウェーブがかかった髪を後ろにまとめている。
セクマイからモテモテ。
ちなみに、柚菜は163cmで夕茜は155㎝、私は162㎝。
青いエプロンと白の可愛いデザインのシャツとスラックスが柚菜の綺麗な顔立ちを引き立ててる。
「冗談だよ。日凪の事応援してるから」
「ありがとう。」
「いえいえ。お冷とおしぼりの方失礼いたします.....ご注文がお決まりになりましたらそちらのボタンでお呼びくださいませ」
『はい。』
「失礼いたします。」
柚菜の後ろ姿が格好良くて目で追ってたら夕茜が不機嫌そうにしてる。
「ゆ、夕茜?」
「何でもない。」
「そ、そっか。」
レモンクリームパスタとサラダのセットにしよう。
「夕茜、決まった?」
「うん。決まった」
「了解。」
ボタンを鳴らすと再び柚菜が伝票を持ちながら来た。
「ご注文をお伺いいたします。」
「夕茜、先にどうぞ。」
「うん。ありがとう.....ミートソースパスタとマルゲリータピザとドリンクのセット、ドリンクはコーヒーで」
「レモンクリームパスタとサラダのセットで。」
「かしこまりました。注文のご確認をお願いいまします.....ミートソースパスタとピザとドリンクのセットがひとつ.....ドリンクはコーヒー、レモンクリームパスタとサラダのセット、以上で宜しかったでしょうか?」
『はい。』
「コーヒーの方は一緒にお持ちしても宜しいでしょうか?」
「はい。」
「かしこまりました。失礼いたします」
柚菜が厨房へ入ってく。
夕茜と青衣がデートするの嫌.....。
「日凪、大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
「青衣の事?」
「うん。青衣と夕茜がデートするの嫌だと思って.....あっ」
しまった。
「何で私と青衣がデートするのが嫌なの?」
「それは夕茜の事が好」
あれ?
結構経過したのに店員さんが一向に来な.....い。
柚菜がこっちを見ながら"日凪行けー!”とジェスチャーをしてる。
夕茜が見つめてきて顔が凄く熱い!
「ゆゆ夕茜、続きは食べ終わった後でも大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「ありがとう。」
「いえいえ。」
「お待たせいたしました。ミートソースパスタとマルゲリータピザとコーヒーのセットのお客様」
柚菜が来た。
「はい。」
夕茜の前にミートソースパスタとマルゲリータピザ、コーヒーが置かれる。
「レモンクリームパスタとサラダセットのお客様。」
「はい。」
「以上でお揃いでしょうか?」
『はい。』
「失礼いたします。ごゆっくりどうぞ.....」と
柚菜が落胆した様子で厨房へ戻ってく。
『ありがとうございます。』
店内じゃなくて2人きりになれる場所で伝えたい。
『いただきます。』
美味しいっ!
レモンクリームが酸っぱ過ぎない。
また今度食べに行きたいと考えてたら、夕茜がニコッと微笑みながら見つめてくる。
「どうしたの?」
「日凪の事可愛いなって思って。」
「えっ?」
天然たらしと思う以上にキュンとしたし恥ずかしい。
夕茜は絶対、私のことなんて恋愛対象外だけど
青衣に負けたくない。
彼女はまだ青衣が好きだろうし。
夕茜が食べ終わっていてコーヒーを飲んでいる。
砂糖とミルクを入れてない?
夕茜はブラック飲めないのに
あ!そういえば高校生の頃、青衣が自販機でブラックのコーヒーを買っていつも飲んでいた。
完全に青衣の影響。
気持ちが沈む。
私もレモンクリームパスタとサラダを食べ終えてお冷を飲む。
『ごちそう様でした。』
席から立ち上がってレジへ進み、夕茜と一緒に支払って出入り口に向かおうとすると、柚菜が私の耳元で「多分脈ありだから日凪ファイト!」と囁く。
「う、うん。」
脈ありだったとしても夕茜に伝えないと。
柚菜が耳元でそう言ってる時、夕茜が面白く無さそうな表情をしてるなんて気付かなかった。
「日凪、そろっと行こう。」
「うん。」
夕茜の不機嫌な声。
『ごちそう様でした。』
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「夕茜、これからどうする?」
「うーん。」
そうだ。
「私達の母校の近くの公園に行かない?」
「行こう。」
駅前のロータリーへ戻って高校経由のバスに乗る。
バスが走り出して私達の母校が見えてくる。
懐かしい。
バスから降りて公園まで向かう。
夕茜が元気無い。
公園に着いたら聞こう。
着いて屋根付きのベンチまで歩いて座り、夕茜が座ったのを見て少し離れようとしたら彼女が近づいてきて手を握ってくる。
へ!?
ゆ、夕茜の手が。
どういう事?体が熱い!
混乱する。
「日凪は柚菜の事が好きなの?」
ん?
「何で?柚菜のこと好きじゃないよ。」
夕茜がホッとしたような表情を浮かべる。
「良かった。」
「え?良かったって夕茜......。」
「何でもないっ。」
夕茜の頬に手を伸ばして顔を近づけると彼女が目を閉じる。
あれ?夕茜とこのまま。
彼女の頭の後ろに左手を回し、躊躇って夕茜の頬に口づけをする。
彼女が目を開ける。
「日凪.....。」
夕茜が、顔を林檎のように染めながら私を見つめる。
「ゆ、夕茜、えっと。」
居た堪れなくなって話題を考える。
「そういえば高2の頃、夕茜がトランプゲームで柚菜に負けて柚菜をハグした事あったよね。」
柚菜が夕茜に照れてたのを覚えてる。
「あー、あった。その後が大変だったけど」
「確かに大変だった。青衣がその場面を見てキレて、夕茜が青衣の唇にキスして収まったよね」
「そうそう。柚菜も青衣に謝って」
「うん。あ.....あと、私が青衣と喧嘩して泣いた時に日凪が抱きしめてくれた。」
「そうだったね。その後、夕茜と青衣が仲直りして移動教室とか下校してる時にイチャイチャして」
「過去の事だから。」
「うん。」
そういえば、さっきから夕茜と恋人みたいな事をしてる。
恥ずかしくなってきた。
両手で顔を隠す。
「日凪?」
恥ずかしいけど。
「日凪の照れ顔可愛い。」
「!?」
夕茜、一体どうしたの?
彼女が抱きついてくる。
「わっ。」
夕茜が「日凪。」と私の名前を呼び、少し体を離して見つめ、私の首の後ろに手を回して顔を近づけてくる。
「ゆゆゆ夕茜っ!?んっ!」
唇が重なって彼女が激しくしてく。
夕茜が唇を離して私の肩に顔を埋める。
夕茜の事見れない。
ふと周りを見ると高校生達が歩いてたりベンチに座ったりしている。
パステルカラーの紫のスマホを見る。
15時。
「夕茜、よろっと移動する?」
「うん。」
夕茜が見つめてくる。
「日凪、手繋いでもいい?」
「ふえっ?うん。いいよ」
彼女がギュッと握ってくる。
握り返してバス停まで向かい駅前行きのバスを待つ。
夕茜、何でこんなに甘えてくるの?
嬉しくてにやけてしまいそう。
いや、気持ち悪過ぎる。
スキンシップが激しい。
私も夕茜の事言えないけど。
頭の中で考えてたらバスが来た。
バスに乗る瞬間、私の手から夕茜の手が離れる。
バスが動き出す。
青衣と夕茜がデートする事を考えて泣きそうになる。
ちらっと彼女を見る。
夕茜が泣きそうな私に気が付いて心配そうに見てくる。
もうすぐ駅前のロータリーに着く。
ロータリーに着き、料金を支払いバスから降りる。
「日凪、時間大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「私ん家で少し話さない?」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて。」
夕茜ん家にお邪魔する事になった。
彼女の住むアパートに着く。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」
「コーヒーと麦茶とミルクティーがあるけどどれがいい?」
「麦茶でお願いします。」
「分かった。」
涙が溢れてくる。
夕茜が2人分の麦茶が入った淡い紫のグラスを持ってきて私の隣に腰掛ける。
私が泣いてるのを見て彼女がタオルハンカチで私の涙を拭く。
「日凪が話したいと思った時で大丈夫だから。」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして。」
夕茜が優しく微笑む。
話そう。
「.....夕茜と青衣がデートする事を考えてたら涙が溢れてきて。」
「青衣の事が好きなの?」
「青衣は幼馴染として好き。」
「良かった.....。」
夕茜が私にくっついてくる。
「えっと。夕茜の事が好き」
顔が物凄く熱い。
「日凪、本当......?」
夕茜の頬が赤くなる。
「うん。だけど、夕茜が青衣を好きなのは分かってる.....」
「日凪待って。」
「待ってって?」
「日凪の恋人になりたい。」
「夕茜.....っ。私も」
堪らず夕茜に抱きつく。
「うん。日凪、よろしく.....青衣と決着を着けたあとデートしてほしい.....。」
「青衣と良い感じになったら嫌......。」
「ならない。軽い気持ちで日凪と付き合いたくないから」
「分かった。今週の土曜だったよね」
「うん。夕方からでも大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「ありがとう。じゃあ、また駅前のロータリーで待ち合わせする?」
「うん。夕茜、また土曜日に」
「日凪、もう少しいい?」
夕茜が私の服を掴む。
か、可愛い過ぎ。
麦茶飲んでなかった。
「うん。いいよ.....麦茶いただきます。」
「どうぞ。」
麦茶の入ったグラスをテーブルに置く。
夕茜が不意に頭を撫でてくる。
「ゆ、夕茜、そろそろ帰るね。」
恥ずかしい。
これ以上一緒に居たら夕茜を抱きたくなる。
「ごめん。また土曜日に」
「うん。また土曜日に.....ごちそう様でした」
「お粗末様でした。」
「またね。」
「うん。日凪、またね」
玄関のドアを開けようとしたら夕茜が「日凪っ!」と呼ぶ。
え!?
私の頭の後ろに手を置き、耳を甘噛みして音を立てながら吸ってくる。
「んん.....っはあっ夕茜.....。」
彼女が唇を離しながら私のデニム越しに太ももに触れ、撫でる。
「日凪の事大好き。」
「私も夕茜の事大好き。またね」
「うん。」
夕茜を抱きたくて堪らない。
夕茜side
土曜日。
朝の7時。
寝室の窓から青々とした朝の空を見てため息をつく。
青衣とお出かけ.....。
日凪に会いたい。
こないだ、日凪とラブラブしたかったけど彼女にも都合がある。
寝室から出て顔を洗って朝食をトーストとアボカドサラダで済まし、玄関を閉めてアパートから出て駅へ向かう。
今日は、自分の服装が男性寄り。
青衣も多分、男性寄りの服装。
そういえば青衣と付き合ってた頃、一人称が「俺」になってた時期があった。
駅前に着くと数分後に青衣の車が見える。
メッセージが来た。
[着いた。]
[了解。]とメッセージを送る。
青衣の車まで歩く。
彼女が私に気づいて車から降りて助手席のドアを開ける。
「どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
相変わらずの紳士な一面に戸惑いながら青衣の淡い緑の乗用車に乗る。
彼女がエンジンをかけ、シートベルトを締める。
「出発!」
「出発。」
青衣がニコッと笑って車を発信させる。
薄いブルーの長袖のTシャツに爽やかな青のカーディガンを羽織っていて、付き合ってた頃に青衣にプレゼントした白い月のデザインの革紐のブレスレットを付けている。
それに、黒のチノパンツ。
格好良い。
「夕茜とこうして海沿いを走るの2ヶ月ぶりだよな。」
「うん。」
海沿いのコンビニが見えてきて彼女がコンビニに入り、車を駐めて一緒に店内に入る。
「どれがいい?」
「アイスカフェラテがいい.....。」
「レギュラーサイズ?」
「うん。」
「了解。」
青衣が、アイスカフェラテのレギュラーサイズとブラックのコーヒーをレジで注文する。
財布を出したら彼女に止められる。
「いや。」
「ごめん。」
「謝らない。」
青衣が優しい眼差しで私を見る。
「うん。ありがとう」
「どういたしまして。」
彼女が支払い、私のアイスカフェラテも持つ。
「ありがとうございましたー。」
「青衣、自分で持つ。」
「気にするな。」
「うん.....。」
コンビニから出て駐車場を左折して、海岸線沿いの広い駐車場と休憩所が見えてくる。
彼女が砂浜から近い場所に駐めてコーヒーを飲む。
プルシャンブルーと薄い水色の景色が似合う青衣。
不意に君が私の髪を耳にかけ、私の首筋に顔を埋め抱きしめようとしてくる。
「夕茜.....。」
「やめて。」
「......あの時はごめん。」
「もう気にしてない。」
「そっか。夕茜に嫌われてなくて良かった」
柔らかく微笑みながら私の頬を撫でて耳に触れてくる。
「青衣やめて。」
何とか青衣の手を退かす。
「ごめん。夕茜、休憩スペースで休む?」
「うん。」
砂浜の手前の建物の中に入って靴を脱いで彼女と畳の床に座って海を眺める。
「.....青衣、遊馬くんとはどうなの?」
彼女の淡く格好良い青い瞳を見つめる。
青衣は日本とスウェーデンのハーフ。
「雪葉とは友人だから何も無い。」
「そうなんだ。」
「まあ、2日間だけ体の.....むぐっ。」
中高生くらいの子がいるのに。
「青衣、気をつけて。」
「はい。」
『......。』
月と茜色の時。
「夕茜、車の中に戻る?」
「うん。」
車に戻って青衣がエンジンをかけようとしたら彼女のスマホが鳴り、茜色の手帳タイプのカバーを開けた貴女が固まる。
「.......。」
青衣がちらっと見る。
「.....。」
「...white moonに行く?」
「うん。」
white moonに着くまで青衣が懐かしい歌を流す。
日凪や青衣、柚菜との思い出の曲。
彼女の繊月のような歌声を聴きながら瞼を閉じる。
「夕茜、white moonの中に入ろう。」
「!うん。」
月と海をイメージした素敵な内装は相変わらず。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
「2名です。」と青衣が答え、切れ長の緑色の瞳の中性的な店員さんが外のテラス席に私達を案内して交互に見る。
「この先にある
月咲の橋。
3年前、青衣と月咲の橋の欄干に鎖を括り付けたあと鍵を掛けた。
「月咲の橋に行ってみますね。ありがとうございます」
「ありがとうございます。」と青衣が愛想笑いで続けて返す。
「いえいえ。おしぼりとお冷お持ちいたしますね」
『はい。』
「失礼いたします。」
ランチのメニュー表を彼女に渡して一通り見る。
シーフードパスタと.....。
「失礼いたします。こちら、おしぼりとお冷でございます」
『ありがとうございます。』
「ご注文の方はお決まりでしょうか?」
「はい。夕茜、先にいいよ」
「ありがとう。シーフードパスタとフライドポテトで」
「ジェノベーゼで。」
「確認の方をお願いいたします。シーフードパスタがおひとつ、フライドポテトがひとつ、ジェノベーゼがおひとつ、以上で宜しいでしょうか?」
『はい。』
「失礼いたします。」
中性的な店員さんが店内に入ってく。
緑がかった海を眺めてたら、青衣が不意に「夕茜と来たの半年ぶり。」と話しかけてくる。
「確かにwhite moonに来たの半年振り。あの時は雷が鳴っててテーブル席だったよね」
「そうそう。赤い稲光で雨も凄くて.....車の中に戻ったら夕茜があたしに泣きついてきて」
青衣が揶揄ってくる。
「泣いてなかった。青衣が泣いてたって」
「泣いてない。夕茜の泣き顔が可愛いくて離したくなかった」
"離したくなかった“って聞いて、滝の近くで言われた言葉を思い出す。
「青衣.....。」
「ごめん。」
「ううん。」
「お待たせいたしました。シーフードパスタのお客様」
「はい。」
「ジェノベーゼのお客様。」
「こちらフライドポテトでございます。以上でお揃いでしょうか?」
『はい。』
「ごゆっくりどうぞ。」
『ありがとうございます。』
中性的な店員さんが再び店内に入る。
『いただきます。』
ポテトを食べ、お冷を飲みシーフードパスタを食べる。
美味しい。
食べ終わって会計を済ませて青衣の車に戻って助手席に乗る。
「ジェノベーゼとポテト最高だった。」
「うん。」
中央区に戻ってきて青衣が広い公園に入る。
「夕茜、ここに座ろう。」
「うん。」
「夕茜、あのさ。」
「ん?」
「夕茜の事が好き。もう一度付き合ってほしい」
日凪を愛してる。
「ごめん。」
「もしかして日凪と付き合ってる?」
「うん。日凪と付き合ってる」
青衣に抱き寄せられる。
「.....夕茜を愛してる。」と耳元で囁いてきて私を包み込む。
「青衣.....っ。」
「ごめん。そろっと公園から出る?」
「うん......。出よう」
駐車場に戻って青衣の車に乗って青衣が駅前のロータリーへ向かう。
気まずい。
降車場に入って彼女が停めたと同時に「夕茜。」と呼び、私の首筋と唇にキスしてきた。
「!!」
「夕茜、今日はありがとう。」
「あ、青衣、こちらこそありがとう......またね」
「うん。またね」
助手席のドアを閉めて車内を見たら彼女が手を振ってる。
振り返してベンチに座ってスマホを弄り、顔を上げて歩いてくる大好きな日凪を見る。
...と、柚菜と月舞さん?
「夕茜っ!」
日凪が思いきりハグしてきて受け止める。
「日凪、今度はbloomでデートしよう。」
は?
「月舞何言ってるの。デートしてないから.....それに私は」
「んっ。」
「っ!」
「おおっ!」
柚菜が私の頭を撫で撫でして日凪が彼女の手をどける。
「ひ、日凪ごめん!」
「夕茜に触れないで。」
「は、はい!日凪、夕茜またね。」
「またね。」
『またね。』
柚菜が月舞さんと一緒にbloomの中に入ってく。
日凪が疲れた表情をしてる。
「日凪、もしだったら私ん家でゆっくりする?」
「うん。」
「決まり。」
アパートに着いてチラッと日凪を見る。
頬が染まってる。
「お邪魔します。」
「どうぞ。」
冷たい緑茶をグラスに入れ、テーブルに置いて日凪の隣に腰掛ける。
「もし良かったら。」
「ありがとう。いただきます」
彼女が緑茶を飲んで私に甘えてくる。
「夕茜、ハグしてもいい?」
「いいよ。」
日凪に抱きつかれ、耳元で「好き。」と囁かれて彼女が離れようとしたのを日凪の背中に腕を回して止める。
「ゆ.....っ。」
「日凪ともっとこうしてたい。」
「わ、私も。」
「日凪、キスしてもいい?」
「いいよ。」
日凪の照れ顔が可愛い。
「んっ.....。」
「んんっ。」
彼女が私の頭の後ろに腕を回してくっついてくる。
唇を離し、日凪を見つめる。
下を向いてる。
頬に触れると日凪の肩が動いてドキッとする。
日凪の頬から手を離す。
それと同時に日凪が顔を上げたかと思ったら私の顎をクイッと上げ、唇を重ねてくる。
「んっ!」
日凪が唇を離して私を見つめる。
「可愛いよ。」
日凪の格好良い声に顔が火照る。
「可愛いくない。日凪、見つめないで」
「無理.....っと。夕茜」
堪らなくなって勢い良く日凪に抱きつく。
彼女が私を受け止め、私の頭を撫でる。
砂糖のような甘い時間が流れる
さっきよりも深く濃い甘々なキス。
「ん......っ。はあっ」
「んんっ。」
日凪に触れたいけど。
求めたくなる気持ちを抑えて彼女から離れる。
日凪の表情が可愛いくてハグしたくなる。
日凪が左手を床に着けて強引に唇を重ね、舌を絡ませる。
「んっ!はあ、日.....凪っ、んん。」
「んっ......はあ、んん。」
日凪が私の頭を撫で、腰と太ももを愛撫して私を押し倒す。
「っ!」
「夕茜の事が大好き。」
「私も日凪のことが大好き。」
「.....嬉しい。」
「私も嬉しい。日凪、泊まってく?」
「いいの?」
「うん。」
「やった。夕茜と過ごせるの嬉しい」
「私も。」
日凪と一緒にご飯を炊いたり冷蔵庫の中にあるニラと牛肉とキャベツを炒めて食べる。
『いただきます。』
食べ終わって食器を洗って一緒にお風呂に入り、ラブラブして髪を乾かしてからリビングで濃い口づけをしてたら
「夕茜の胸触りたい......。」って言ってくる。
「......っいいよ。」
「ありがとう。」
日凪がルームウェアの中に手を入れ、下着のホックを外して私の胸を揉む。
「あんっ.....日凪.....んんっ!」
彼女が顔を近づけ、私の胸の先を吸いながら舐める。
「んっ。」
「ん.....っはあ、ん.....。あんっ」
「夕茜、下もいい?」
「んっ!うん。いいよ」
私のルームウェアの短パンと下着を脱がしてトロトロになってる所を日凪が舐めていきそうになる。
「.....んんっ。」
「はあ、んんっ.....んっ。」
力が抜けてソファに寄りかかってたら抱きしめられ、彼女に頭を撫でられて目を閉じる。
ーーー
「.....日凪、そろっと寝室に行く?」
「うん。」
今日は日凪とは別々に寝る。
布団を敷いて布団に潜ったら彼女が目を潤ませてる。
「日凪、一緒に寝よう。」
「うん!」
ベッドに上がって日凪と向かい合わせになる。
彼女が私の頬を撫で、「夕茜大好きっ。」と言ってくる。
「日凪.....、私も大好き。」
日凪が私の頬を撫でてるうちに眠そうな表情をする。
「夕茜の事また抱きたい。」
「その前に日凪に聞きたい事があるんだけど、
月舞さんて元カノ?」
「うん。でも、月舞とは何もないから安心して.....って夕茜?」
電気を小さくして日凪から背を向ける。
「おやすみ。」
「おやすみ......。」
夕方の
日凪が月舞さんに奪われたら、青衣の時より立ち直れない。
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