第2話 俺の幼馴染
俺の幼馴染は少し変だ。
中学校から始まり現在進行形で仲は良いが、初対面から今までの印象が全く変わっていない。
「有馬君、一緒に帰ろ」
「うん」
家が近い以外の共通点はないが、子供にとって住む場所が近いと自然と仲良くなるものだと今になっては思う。
そんな俺達は幾つものピンチに直面する訳もなく、ただ普通の日常を送っていた。強いて言うなら外野の動きでこの関係が壊れる事が何より怖かった。
「有馬君、優香ちゃんの事好きなの?」
「優香ちゃん?」
「僕は僕はずっと好きだったのに!」
小学5年の夏休み、プールの日でありクラスメイトと仲良く遊んでいる最中に最も仲が良かった鈴木君から知らない女子の名前を言われ、そして泣かれて突き飛ばされた。
「......」
鈴木君は泣きながら怯えており、僕は尻餅を着いただけだと思っていたが、右腕から血が出ており水を浸食していた。
すぐに保健室に運ばれたが、鈴木君はそれ以降一度も目を合わせてくれなかった。
そして数週間後、鈴木君は転校した。
後になって知った事だが、鈴木君が好きだった優香ちゃんは俺の事が好きだったららしく、毎日惚気話を聞かされており血が昇ったらしい。そしてそれを知った優香ちゃんは鈴木君の二の舞になり、二人の関係は消えた。
次第に起きた事は時間と共に薄れていったが、人間関係が少しだけ嫌になった。唯一、信頼して側に居たいと思えるのは、
「有馬君! 何する?」
満面の笑みでこちらの様子を伺っている佐藤君だけだった。彼はあの騒動があっても何も変わらなかった。他の子は疫病神の様に俺を見ていたが、
「一緒に帰る?」
佐藤君だけは違った。
今思えば涼が居てくれたから学校生活が楽しかった。涼が遊んでくれたから笑えた。涼が居なかったら俺は違っていただろう。
「......か......かな......楓!!!」
懐かしい夢を見ていたらしい。涼に肩を揺すられて起きると、外が薄暗かった。帰宅後涼の部屋で宿題、ゲームをして俺は寝ていたらしい。
「珍しいな」
「何が?」
「楓が僕を呼ぶなんて」
「?」
涼の説明では寝言で「涼」を連呼していたらしい。それも甘い声で、
「かかかかかか帰る」
「おう、またな」
恥ずかしくて無理だった。別に涼は親友でそれ以上は......ないが、でもでも、
「っはず」
俺は偶に変な思考になってしまう。
「好きを消化したら何が産まれるかな」
幼馴染がTSしても多分幼馴染ですよね? ブラックコーヒー @Kuro4561
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