幼馴染がTSしても多分幼馴染ですよね?

ブラックコーヒー

第1話 幼馴染は男

 幼馴染は現実世界で無双していた。


「お兄さん! 連絡先教えて下さい」

「お兄ちゃん! 遊ぼ」

「ほれ、饅頭あげるわよ」


 老若女に好かれる僕の幼馴染、有馬楓は二次元から迷い込んだ完璧キャラだった。身長178cm、彫刻顔、色白の肌、綺麗な黒髪、全てが異次元だった。


「今日も凄いな」

「......まぁね」


 謙遜気味な楓は何故か彼女を作った事がない。僕が把握していない可能性もあるが、楓が誰かとくっ付いたら噂くらいは耳にするだろうから多分僕と同じ童貞だろう。


「涼、考え方?」

「同い年でここまで違うと逆に無だな」

「?」


 僕こと佐藤涼は小さい時からある楓との埋まらない差を考えずに今日まで連れ添ってきたが、近頃少し考えが変わってきた。


「あ、いた」


 通学中に前方からダッシュで来る女子高生、勿論楓目当てだが、平行線に居る僕は少しドキドキしてしまう。例え違う事が分かっていても、


「おはよ、楓君と佐藤君」

「おはようございます」

「おはよう、新谷さん」


 新谷若菜、端的に言えば楓のハーレム候補生だ。同じ学園に通う同学年であり、僕が思うイメージはスポーツ女子だ。短い黒髪、少し日焼けした肌、引き締まったモデル体型、誰に対しても和かな感じで楓にゾッコン。


「今日は朝練が無くて偶々、楓君を見つけたから教室まで一緒に行かない?」

「ごめん」

「あ......いいよ。私こそごめんね」

「......」


 新谷さんがハーレム候補生と僕が呼ぶ理由は、楓がハーレムを形成しないからである。他にも候補生はいるが、楓自身はさっきみたいにフラグを簡単にへし折ってしまう。


「楓は不思議だな」

「?」

「あんな美少女に誘われたら即決で着いて行くものを、勿体無いとも言えない自分が苦しい......マジ苦しい」

「何それ」


 両手で口を押さえて微笑む楓とそれを見て悶絶する女子高生達、楓の行動一つで異性が悶絶するのは僕には日常だった。


「今日は宿題なしだよな」

「うん。でも今日はあるよ」

「まじか。今日来るか?」

「勿論」


 午後の予定を決めて、下駄箱に靴を終い、スリッパに足を滑りこまして、教室に向かった。


「「「「おはよう!!!」」」」


 クラスの女子は楓バージョンとその他バージョンがあり、その他は勿論僕達である。


「おはよう」

「今日も楓君は輝いている」

「私はこのクラスで生涯を終えたい」

「この学園で......うぅぅ、良かった」


 色々な女子を観れるのも楓効果だろう。僕だけだと無表情の女子達しか目に浮かばない。


「涼? 考え事?」

「いや別に」

「そっか。なら座ろっか」

「ああ」


 一番後ろの窓際に楓、その横に僕、楓の前は屈強な文化部の前田君、この席順は入学当初から変わっていない。僕達だけ、


「前田君、おはよ」

「おはようございます」


 体と心が反比例している前田君は楓の挨拶をいつも紳士に受け取っている。


「(楓って恋とかするのかな)」


 最近思うが、女っ気が一切ない幼馴染に対して少し引く部分がある。オールパラメーターの楓でも思春期である以上、アレってもおかしくない。


「何? 何か付いてる?」

「別に」

「そっか、それより今日宿題の後ゲームしない?」

「新作だな」


 最近発売されたアクションゲームに僕達は前作からハマっており、今日届く予定だったので、今日は少し体が軽かったりもする。




 少しずつ日が暮れて下校時間になった。僕達は帰宅部、楓が僕と同じ4年目に突入しているのは学園の七不思議だったりする。


「今日の宿題無理だ」

「弱音は家に帰ってから」

「はい」

「それに涼はやればできる子だよ」


 褒めて伸ばす。楓が僕を成長させる為にしてくる事であり、このおかげで同じ学園に通えている。僕は近場でも良かったけど、


「今日も凄い視線だな」

「そうだね」


 帰宅帰りのOL達を魅了する楓が羨ましい。スーツ姿って結構くるよな。僕だけではないはず、


「てか今日母さん遅出だった」

「......オムライスにする?」

「感謝」


 母さんは看護師で夕方に出て行く事もあり、父さんは単身赴任中で最近は結構楓頼りだったりする。その為、冷蔵庫は母さんと楓が牛耳っている。


「卵、玉ねぎ、にんじん、鶏肉、多分大丈夫」

「流石、良い主夫になれるな」

「そっか」

「?」


 少し軽い返事を受け取って僕達は家に帰った。

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幼馴染がTSしても多分幼馴染ですよね? ブラックコーヒー @Kuro4561

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