自分の色
k0n0
自分の色
ある日の木曜日。
6時限目の授業を終えた後の休憩時間。
私は非常に憂鬱な気分だった。
その理由は単純で最後の7時限目の授業内容は自分自身や将来について考える授業であるからだ。
多くの人が1度は思った事はあるだろう。
高校1年生の自分が将来について考えるよりも、部活動に打ち込んだり、家でのんびり過ごしたりしたいと。
しかし、残念ながらその時間を飛ばして放課後は訪れない。
チャイムが鳴り響く。
皆渋々ながらも自分の席へ戻っていく。
全員が席に着くと、先生が教室に入ってきた。
さて、今日はどのようなテーマなのだろうか…
「突然ですが皆さんに質問です。あなたを色で表すと何色になりますか?」
周囲はザワザワと話し始める。
私も隣の友人と話すをするが、この問いについて私はあまりピンと来ていなかった。
しかし、周りを見ると多くの人が”自分の色”を何となく思いついている様子だった。
次に4人のグループで、他の人が自分を何色だと思うか、そしてその理由を考える時間が設けられた。
また、自分が思っている自分の色と一致しているかどうかも話し合うことになった。
『Aさんは涼し気でクールな感じがあるから青色かな?』
『水色も合うかも!』
『Bさんは人気者だし黄色とか?』
『可愛いからピンクもアリだと思う。』
『Cさんは明るくて元気な感じの橙色とか?』
『何事にも熱心な感じもあるから赤色も良いかも!』
そして私の番が回ってきた。
『_さんは何でも出来る印象があるから白色とかどうかな?』
『個人的には緑色とかが合う気がする。』
『意外とミステリアスだから紫色とかは?』
自分の考えに無かった色が次々と挙げられるものの、納得できるものは見当たらなかった。
まず、先程から周囲と自分の認識している色にギャップを感じる。
例えば、Aさんが涼し気でクールな印象を持っていたため僕は透明、もしくは白色なのではないかと提案したが、寒色系と白、透明では大きな違いがあるように思える。
何故なら、私に提案された色も白色であるからだ。
また、何でも出来る印象があるということから推測すると、何にでもなれるという意味合いから白色を提案したのではないか。
さらに、透明や白色は一般的に何にも染まっていない、未熟といった意味合いがあるとも聞いたことがある。
つまりは一般的に認識されている色のイメージと私の認識しているイメージには齟齬が存在するということだ。
他にも、人気者なら金色、明るい印象は黄色などこれらの意見は皆の意見とは異なっている。
けれど可愛い印象はピンク、熱心な印象は赤色という意見は非常に共この時間のテーマである”自分の色”
この色が意味するものは、自分の特徴や周囲に認知されている雰囲気であるというのがとてもしっくりくる。
そこで最初に投げかけられた問いに戻る。
自分の色は何色なのか。
ここまで考えたら分かる通り、この問いはとても理不尽だ。
自分の色、この言葉を聞くとまるで周囲と自分の色に対する感覚が一致することが当然であるかのように思える。
ここで一般的な認識を適用するとなると提案された白色や緑色、紫色などの色になるだろうが、それではこの問いに対して半分しか正解していないのではないか。
なので今度は自分の感覚を頼りにしてみる。
自分は落ち着いている方だと思うので深緑?いや黄緑も合うかもしれない。
他には器用な部分があると思うので銀色も良い。
こうして見ると緑系は認識している詳細を無視すれば一致する部分がある。
しかし面倒だと感じるかもしれないが、詳細まで一致したいという気持ちが湧いてきてしまう。
とはいえ、普段から色に特に関心があるわけではないため、色の種類については一般的な知識しか持っていない。
このクレヨンセットにあるような色の数々で自分の色を表現しなければならない。
しかも周囲との色の認識の違いがあるのに…
それなら、いっそのこと虹色はどうだろうか。
う~ん…と行き詰ってしまった。
そして、理解した。
自分自身を深く考えることの難しさを。
この授業の存在する意味を。
けれど最後の授業にしてはカロリーが高いのもあって今までと同じように憂鬱な気分になるのは変わらないだろうが…
ふと時計を見ると授業終わりの五分前を指していた。
授業終了後、ワークシートに自分の色を書いて提出しなければならないため、時間がない。
これまでの考えをよく整理してみる。
そして私は紙にこう書いてみる。
「緑色」
僕にはこれ以上の答えが分からなかった。
時間が少なすぎた。
もしかしたら、これが今後の自分のテーマになるかもしれない。
色がないとでも書くべきだったのか、いやそれは何か違う。
一番納得できる表現をすると色はまだ確立されていない…だろうか。
だけれどこれからは感覚を大事にしていきたい。そう強く感じた。
そして読者の皆さんに問いたい。
あなたの色は何色ですか?
自分の色 k0n0 @k0n0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます