酔虎の奇策

風馬

第1話

漢王朝の都・洛陽。董卓は宴会の席で上機嫌だった。

「よし!明日は洛陽の全ての酒を集めて“酒の海”を作るのだ!そこに美酒を注ぎ、我が軍の全兵士に泳がせる!酔えば士気も上がるだろう!」

李儒は困惑した顔を隠せない。

「相国、洛陽の全ての酒を集めるなど、不可能に近いことです。」

「わしの命令だ!できぬと言うなら罰するぞ!」


董卓の無理難題に逆らえず、李儒は仕方なく計画を進めることにした。彼は街中の酒蔵を回り、あらゆる酒を徴収。しかし、その過程で反董卓勢力の一部が動き始める。酒を奪われた洛陽の民は不満を募らせ、密かに反乱を計画していた。


翌日、洛陽郊外に巨大な酒の池が完成した。董卓はその中心に立ち、笑いながら宣言した。

「これぞ天が授けた酒池肉林の第一歩よ!」

酔いが回るにつれ、董卓の振る舞いはますます豪快に。自ら池に飛び込み、酒をすくって飲み続けた。兵士たちも負けじと続くが、次第に酒で溺れる者や、酔った勢いで乱闘を始める者が出てきた。


一方で、李儒はその場を冷静に観察していた。

「このままでは軍の規律が崩壊する…しかし、逆にこの混乱を利用できるかもしれない。」

そう思った李儒は、酒池の見張りを薄くして反乱軍を誘き寄せる策を練る。


夜になると、反董卓勢力が酒池を襲撃。彼らは酒を毒と偽り、軍の士気を下げようとした。しかし、董卓軍の兵士たちはすでに酔いが回り、毒の恐れなど意にも介さない。むしろ敵の酒を奪おうと襲い掛かり、敵味方が入り混じった大混乱に陥る。


董卓は、池の中心で笑いながら叫ぶ。

「敵も味方も皆酔っている!これこそ真の平等ではないか!」


李儒は心の中でため息をつきつつも、この混乱の中で敵将を捕らえる機会を得た。戦いはなんとか董卓軍の勝利に終わり、反乱軍は壊滅状態となる。


結末:事件のオチ

翌朝、酔いが冷めた董卓は池のほとりで目を覚ます。周囲には倒れた兵士や散乱する酒樽が見える。

「李儒、この惨状はなんだ?」

「相国のご命令により、洛陽の酒を集めて“酒池”を作り、それが敵を誘き寄せる罠になりました。」

「ほう、それで結果は?」

「見事、敵を打ち破りました。ですが、兵士たちの半数が二日酔いで動けません。」

「ふむ…まあ良い!わしの采配で勝利したのだからな!次は“肉の山”を作るぞ!」


李儒は心の中でまたため息をつき、次の無理難題に備えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

酔虎の奇策 風馬 @pervect0731

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画