プレゼントの中身は

@makirrr

第1話

「今年もこんなものでごめんね」

 すやすや眠る悠人の枕元にそっとプレゼントを置いた。

 

「ママ見て!サンタさんが来てくれてる!」

 翌朝、悠人は興奮しながら、昨日買ってきたケーキを切っている私の元に駆け寄ってきた。

「よかったねぇ、きっと悠人がいい子にしてたからサンタさんが来てくれたんだね」

 私はそういうと、少し胸の中が苦しくなった。

 夫が亡くなり一人で悠人を育て始めて四年、生活は苦しいがなんとか二人でやってきた、祖母に悠人を預け、毎日遅くまでパートを掛け持ちして必死に働いてはいるが、保育園にかかる費用や食費、すぐに大きくなる子供の服など、生活にかかるお金は計り知れない。

「今年はうちも〇〇にしたわ」

 ママ友達は最新のゲーム機の話題で盛り上がっている。

 今年のクリスマスプレゼントは手編みの手袋にした。

 

 私はクリスマスが大好きだった、朝枕元に置いてあるプレゼント、美味しい料理、何よりその日は、家族みんなが笑顔で、家の中がキラキラと輝いていたからだ。

 ふと考える、私はそのキラキラを悠人に与えられているだろうか。

 

「わぁ手袋だ!」

 プレゼントの入った袋を開け、悠人は嬉しそうに笑っている、きっと最新のゲーム機や流行りのおもちゃが欲しかっただろうに。

「来年はサンタさんにもっといい物もらえるといいね」

 申し訳なくて目を合わせる事が出来ない。

 すると悠人は少し不思議そうな顔をして奥へかけていき、一枚の絵を私に持ってきた。

「お願いしてたものプレゼントしてくれたよ!」

 そこには私と悠人、二人笑顔でケーキを食べている絵が書かれていた。

「クリスマスをママと過ごせるようにって」

「え、」

「最近、夜遅くてママとあまりお話しできなかったらサンタさんにお願いしたんだ!」

 

 ああ、そうだったのか、ふと昔の事を思いだす、なぜクリスマスがあんなに好きだったんだろうか、プレゼントをもらえるから?イルミネーションが綺麗だから?それもそうだが私は家族が笑顔でキラキラしていたその時間が好きだったんだ。

 両手に手袋を抱きしめた悠人が笑っている、プレゼントの中身にこだわっていたのは、私のエゴだったのかもしれない、きっと将来思い出すのは、家族や友人、過ごした人との楽しかった時間なのに。

「ケーキたべよっか」

 少し言葉につまる私をよそに悠人は笑顔で「うん!」と返事をした。

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