第2話

…シア…


…エリシア…



(…誰?誰かが誰かを呼んでる声がする…エリシア?…あぁ…私、エリシア…だっけ?)


「エリシア!!!」


部屋中に響き渡る甲高い声に驚いて目を覚ますと、自分そっくりな女性が私を覗き込むようにして立っていた。


「…誰なの?私?」


「寝ぼけているの?私よ!セレスティーヌ=アウスター!」


「…セレスティーヌ…?

    …セレ…ス…!?

       セレス様!!?」


慌ててベッドから飛び上がるように身を起こし、すぐにセレス様の足元に跪いた。


セレスティーヌ=アウスター


彼女は大陸の最北端にある

小国"アウスター"の皇帝ジークの第一皇女。そして私 エリシア は、セレス様の隠された侍女であり、影武者として教育を施されてきた。私の存在は城内の使用人たちにすら知らされていない。

知っているのは皇帝陛下と皇妃、陛下の側近 シャバル。

そして、セレス様のみだ。


「エリシア!今すぐ此処から去るのです!でなければ、身捧の儀の贄姫として形代にされてしまうわ…」


「え?セレス様に御縁談?」


「父上がこっそり話しているのを聞いたの。相手は大帝国の若き皇帝 ロシュア=フレジェランス。


逆らえば小さな村ですら業火の焔で焼き尽くす無慈悲で冷酷、

残忍な皇帝…

そう噂されてる方よ…。


最近世界中で起きている天変地異の災害を治める為に生贄として高貴な2人を身捧の儀にかけると大陸議会で決まったとか。父上は形代としてエリシアを捧げるつもりなのよ!」


身捧の儀…それは神々の谷と呼ばれる場所にある神殿で神の前で王族同士が身を捧げ合う…つまり、体の契りを交わす事。


もちろん、儀式が終われば身を捧げた王家に嫁ぐ事になる。


本来ならセレス様が贄姫となる…けれど、セレス様を溺愛する皇帝陛下は悪名高いフレジエランスにセレス様を贄姫として嫁がせたく無かったに違いない…


「セレス様、ご安心ください。私は贄姫としてフレジエランスに嫁ぎます。」

「そんな!ダメよエリシア!!」

「いいえ、私はお受けします。エリシア様。どうかご心配なさらず、お身体にお気をつけて。私はフレジエランスに向かいます。」
















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形代贄姫の嫁入り @yuzunoka

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