図書館

宇宙(非公式)

『図書館』

 ジョンは息子の治療費のため図書館のバイトを始めた。無限に続く、ランダムに生成された文字列が綴られた本が保管された図書館だ。

 一般の数十倍高い給料に加え、意味の通った文字列を見つけた場合は司書に渡し、1000万ドルと引き換えて、その図書館を出ることができる。

 報酬が高い代わり、ほぼ図書館に監禁されている状態になる。


 ジョンがバイトを始めてから1年が経った頃、意味の通った本を見つけた。タイトルは「aucibivyc」。「パパへ いつもおしごとおつかれさま。がんばってね」というたった二文の内容だったが、ジョンは最後の言葉に目が離せなかった。

「トムより」

 息子の名前がそこには書かれていた。


 ジョンは一瞬だけ感動して、すぐに冷静になった。これは息子が書いたものではなくて、ランダムに生成されて、偶然できたものだ。そもそも、息子のトムは数ヵ月も前に死んでいる。

 そしてジョンは少し考えた後、その本を服の右ポケットに入れると、また仕事に戻るのだった。

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