第5話  知りたくなかった貴理子の秘密!

 貴理子との暮らしは楽しかった。夏祭り、花火、貴理子の黄色い浴衣姿は印象的だった。屋内プール、貴理子の黄色いビキニ姿が眩しかった。毎日2回以上(平日は2回、日曜は3~5回)の営みにも充分満足していた。貴理子は凄いと思う。僕は毎回営みでは手を抜かない。相手が満足するまで続ける。なのに、2回、3回と求めてくる貴理子も、僕と同じで絶倫だったのではないか? と思う。貴理子が言うには、


「こんなに満たされたの初めてだから、嬉しくてつい求めちゃう。快楽の時間に浸るのがこんなに心地よいとは知らなかった」


ということだった。



 そして、貴理子は月に2回、博多の実家に帰る。“実家に1人で残った母親のことが心配だから”ということで、その話は同棲する前に聞いていたので快く貴理子を送り出していた。交通費ということで、貴理子には毎回5万円を渡していた。貴理子は金曜の晩に博多に帰り、日曜の晩に大阪に戻ってくる。



 貴理子と同棲を始めて半年以上経った頃、僕は貴理子が博多に帰っている時に、用事があったから電話した。すると、貴理子の携帯の電源が切られていた。今まで、貴理子が実家に帰っている時に用事が無くて電話したことが無かった。僕は、そこで初めて貴理子のことを少し疑った。


 その次、貴理子が実家に帰っている時に電話してみた。やっぱり、電源は切られていた。繋がらない。この時点で、僕は貴理子のことをかなり疑っていた。そして更に次、貴理子の電話はやっぱり電源が切られていた。


“貴理子は、実家に帰っている間は電源を切っている!”


 何故? 電源を切らないといけないのか? もう、貴理子に聞くしかない。嫌な予感しかしないけれど。



「ただいま-!」

「お疲れ、ちょっとそこに座ってや。ビール飲みながらでもええから」

「うん、何? 何か話でもあるの?」

「どうして貴理子は、実家に帰っている時に携帯の電源を切ってるの?」

「それは……」

「月に2回、実家に帰って何をしてるの?」

「お母さんとパチ〇コしに行ってる」

「それだけじゃないやろ? それだけやったら、電源を切る理由にならない」

「それは……」

「本当のことを言うまで、僕はいつまでも事情を聞き続けるで。貴理子、逃げられへんよ。正直に話してくれ」

「電源を切っていたのは……まだ別れた旦那が実家にいるからなの」

「え! 離婚してから、もう半年以上も経ってるやんか! なんでなん?」

「仕事が忙しくて、不動産屋に行く時間が無いらしくて」

「いやいや、そこはケジメをつけないとアカンやろ」

「長年、ウチの実家で元旦那は暮らしてたし、お母さんとも仲がいいから」

「おいおい、そんなことは理由にならへんで。しかも、電源を切るってことは、僕からの連絡をシャットアウトして、別れた旦那の方に気を遣ってるよね? 普通、逆やろ? 別れた元旦那よりも新しい恋人を大切にするやろ? 元旦那に気を遣って、僕との連絡を遮断するのはおかしい! 別れたんやから、別れた旦那の目の前で堂々と僕と通話したら良かったやんか」

「うん……そうなんだけど」

「部屋は? 元旦那と貴理子はどんな部屋で寝てたん?」

「ウチは一戸建てで、夫婦で2階を使ってる。2部屋あるけど、襖をはずして1つの部屋にしてる」

「寝る時はどんなふうに寝てたの? 貴理子はどこで寝てたの?」

「え? ベッドだけど」

「元旦那はどこで寝てたの?」

「え? ベッドだけど」

「ベッドは2つあるの?」

「ううん、1つだけ」

「同じベッドで寝てたんかーい!」

「うん、でも、何も無かったよ」

「貴理子は寝る時、下着にキャミソールやろ?」

「うん」

「それで別れた旦那と同じベッドに寝てたんか? うわ! 信じられへん!」

「でも、でも、何も無いから。旦那に迫られたけど拒んだし」

「迫られてるやんか! アカン、もう信じられへんわ」

「違うの、旦那とお母さんと3人でパチ〇コに行くから電源を切ってただけ!」

「なんで電源を切らなアカンねん? 旦那とは離婚したんやから、新しい恋人が出来ても堂々としてたら良かったんや」

「いやぁ……そうなんだけど。波風を立てたくなくて」

「おいおい、元旦那の方は波風立ってへんけど、僕の方が波風立ってるやんか」

「うーん、まさか、こんなことになるとは」

「最初に言うたやろ? “僕は嫁に浮気されて離婚してるから男関係だけはシッカリしてくれ、僕を不安にさせないでくれ”って。それなのに、貴理子はそんなことをしていたのか? 毎回交通費として5万渡していた僕がアホみたいやんか。貴理子が元旦那に会うために僕は毎回5万を渡してたんか?」

「ほら、だから、電源を切ってたのに」

「え! どういうこと?」

「元旦那がまだ実家にいるって、崔君が知ったらこうなると思ったから電源を切ってたのに」

「電源を切ってるのがバレてもこうなるやろ? 別れたんやから、元旦那に気を遣うことなかったのに」

「でも、何も無かったって言ってるでしょ」



「信じたいよ! でも、信じられへんねん! 僕には嫁に浮気されたトラウマがあるからな!」







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浪速区紳士録【社会人編:旋風】婚約破棄と、その後について! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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