第4話  貴理子の寝物語!

 僕の腕枕で寝ている貴理子が話し出す。


「崔君はいいね」

「どこが?」

「毎日抱いてくれるところ」

「なんやねん、それ? まるで僕が性欲の塊みたいやんか」

「そういう意味じゃないよ。こんなに毎晩抱いてもらえるのは初めてだから」

「新婚の時とかは? 流石に新婚の時は夜の営みは多かったやろ?」

「それが、新婚の時でもあんまりしてないのよね」

「え! なんで?」

「元旦那が長距離のトラック運転手だったからね。家にいない日が多かったから」

「ああ、なるほど。それなら納得」

「離婚が決まってから1~2年は元旦那と全くしてないし」

「え! そうなん? なんか嘘っぽい」

「だって、結婚してスグに元旦那に多額の借金があることがわかったんだから、スグに冷めたのはわかってくれるでしょ? 最初から、私達は夫婦としてギクシャクしてたのよ」

「わかる。僕もそれで冷めたから。あ、その話、前にも聞いたな。それで、貴理子が結婚を機に会社を辞めたけど、貴理子がまた働かないといけなくなったんやろ?」

「そうそう、“専業主婦をさせてやる”って言ってたくせに。2人で返さないと返せないくらいだったから」

「まあ、僕も同じやからな。僕も元嫁が借金まみれやったから」

「私達、似てるのかな? 私も浮気されたし」

「僕も何回も浮気されたで。話したやろ? でも、貴理子は離婚しなかったんやろ? 僕なら離婚するけど」

「うん、婿養子だし、離婚になったら親が悲しむからね」

「でも、前の会社の不倫相手とよりを戻したんやろ?」

「うん、でも、結婚してから3年後だよ、3年は我慢したんだからね」

「でも、結局貴理子は不倫したわけやんか。元旦那も浮気、貴理子も浮気、なんか悲しいなぁ。誰も幸せにならへんやんか」

「だから、今、崔君と人生をやり直してるのよ」

「まあ、僕は浮気以外のことやったら許すからなぁ」

「浮気はしないから」

「相手が中森さんでも?」

「馬鹿! 浮気するわけないでしょ!」

「でも、ずっと親と同居ってスゴイよね。僕なんか、社会人になったらスグに転勤やったで」

「ずっと実家にいて、実家から出るのは初めてだったから正直怖かった。でも、崔君を信じて大阪に来たのよ。結構、勇気が必要だったんだよねー!」

「そうか、それはありがたい」

「でも、実家を出てみたら新鮮な気分よ。意外だった。新しい生活に、ずっとワクワクしてるの」

「そうか、それは良かった」

「大阪っていうのがいいよね! やっぱり住んでいて楽しい! 店が多くて買い物も便利だし、人が多いし、都会だし、美味しいものが多いし、野球も観られるし、もう最高!」

「〇〇(地名)の焼き肉は?」

「美味しかった! でも、やっぱり私は串カツの方がいいなぁ」

「おお! 安上がりで助かるわ」

「異〇館に行った時のこと、おぼえてる?」

「おぼえてるよ。貸衣装でウエディングドレス姿の写真を撮ったよね」

「うん、私のウエディングドレス姿はどうだった?」

「めっちゃ似合ってた。萌えて、燃えた。そのまま押し倒したいくらいやったわ」

「もう、崔君のH」

「でも、ウエディングドレス姿は女性が1番キレイに見えるっていうやろ?」

「うん、言うね」

「ほな、やっぱり押し倒したくなるやんか」

「もう、馬鹿!」

「入籍するとき、式や披露宴はやらないって話やったけど、貴理子のウエディングドレス姿の写真だけは撮りたいなぁ、きっと、僕の大切な宝物になるから」

「じゃあ、写真だけは撮ろうね」

「うん、そうしよう」

「でも、やっぱり気になるなぁ、私が子供を産めない身体だってこと」

「気にしてもしゃあないやんか。2人の生活を楽しんだらええねん」

「でも、やっぱり申し訳無いよ」

「あのな、よく考えてや。貴理子が子供を産める身体やったら、多分、元旦那の子を産んでるやろ? ほな、元旦那と別れてないかもしれへん。子供がおったら、僕とこうしていられることは無かったんや。貴理子が子供を産めなかったから、幸せな今があるんやで」

「そうか、子供が産めなかったから今があるのね」

「そういうこと。子供がいたら、貴理子は僕のところに来てないよ」

「なるほどね。そういう考えは思いつかなかった」

「僕は残りの人生、子供がいない分、貴理子に全て捧げる。2人の時間をずっと楽しんだらええやんか」

「うん、そうよね。ごめんね、何度も同じことを言ってしまって」

「謝ることは無い。それより」

「それより?」

「なんで貴理子は家の中では下着の上にキャミソールなの? 誰か来たらどうするの? なんで服を着ないのかなぁ?」

「うん、下着の上にキャミソールが楽なんだよね。家の中では楽にしたいじゃん」

「家でリラックスするのはええけど、誰か着たら何か羽織ってや」

「え! ウチではキャミソールのまま玄関のドアを開けて出てたんだけど」

「郵便とか配達の人が喜ぶだけやんか、今度、羽織れるガウンを買いに行こう」

「まあ、崔君がそう言うなら」

「キャミソール姿で玄関のドアを開けるのはやめてくれ」

「わかった。その代わり、これからも愛してね」

「うん、愛してるけど」

「崔君って、いろんな体位でしてくれるから、いつも新鮮なのよね-!」



「大切なの、そこ?」







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