第3話 貴理子と大阪を巡る!
貴理子は好奇心が旺盛なのか? 自分が行きたいスポットを自分で見つけてくる。僕は土曜日にそこに連れていけばいいだけだ。仕切ってくれるのは助かる。どこに行きたいか? ハッキリ言ってくれると助かる。最初の嫁は、調べもせず“どこか楽しいところに連れて行ってや!”と言うばかりだった。僕がデートスポットを調べて連れて行ったら“つまらない”と言うことが多かった。それと比べたらめちゃくちゃ楽だ。僕は、リードしてもらえる方が(当時は)楽だった。そして、貴理子は楽しいところ、美味しい店、当たりばかり選ぶ。だから、僕も貴理子とのデートが楽しかった。本当に、恋人としては理想的だった。結婚して良い嫁になるかはまだわからないけれど。まあ、僕と貴理子なら大丈夫だろう。そう思っていた。そう思えた。
いろいろ巡って、やがて人気のテーマパークにも行くことになった。
「楽しいね-!」
「うん、楽しい」
「楽しいアトラクションがいっぱいだね」
「僕は貴理子と一緒にいられたら楽しい」
「崔君はアトラクションを楽しんでないの?」
「いや、楽しんでるで。でも、僕はここに来るのは3回目やからなぁ」
「そうなんだ、誰と来たの?」
「ごめん、失言やったわ」
「元嫁?」
「元嫁とも来た。格安のツアーやったのに、元嫁がモーニングコールを切って、アラームまで切ったから寝坊した。特急電車に乗り遅れて、格安プランのはずが割高のプランになった。嫌な思い出や」
「もう1回は?」
「元カノ。結果的には短い付き合いだった女性」
「ふーん、ふーん、ふーん、ふーん」
「ごめんなさい。気分が悪かったよね?」
「ちょっとね。まあ、いいけど。このくらいなら」
「過去のことや。大事なのは未来や」
「うん、だからこの指輪は気に入ってるの。ありがとね」
僕も貴理子も左手の薬指に指輪をしていた。婚約しているのだから、変ではないだろう。後は、給料3ヶ月分の婚約指輪をいつ渡すか? それだけが問題だ。
「婚約指輪はいつにしようか? 給料3ヶ月分」
「いつでもいいよ」
「それにしても、アトラクションはどこに行っても混んでるね。待ち時間が長いわ」
「でも、お喋りしてたら退屈しないでしょ?」
「そうやねん、貴理子と一緒にいると、待ち時間が苦痛じゃないねん。こんなの初めてやわ。今まで、デートでも待ち時間が長いとイラッとしてたのに」
「やっぱり、相手が私だからかな? ふふふ」
「そうやで、相手が貴理子やから退屈せえへんのやで」
「でも、崔君は本当に私でいいの?」
「なんで? なんでそんなこと聞くの?」
「だって……私、子供を産めない身体だから」
「そのことなら、以前、よく話し合ったやんか」
「うん、話し合ったけど」
「子供が出来なければ、死ぬまで2人の時間を楽しんだらええねん」
「でも、崔君は子供が欲しいんでしょう?」
「うん、欲しい。でもなぁ、子供を産める愛してない人と一緒にいる方がいいか? 子供を産めない愛する人と一緒にいるのがいいか? 僕は、子供が産めなくても愛する人と暮らしたい」
「崔君!」
「何?」
「ありがとう! 私、そんな崔君が大好き!」
「中森さんの方が好きなくせに」
「あれは違うって。芸能人を見るみたいな感じ。私は中森さんのファンなのよ、ただのファン。愛しているのは崔君だけ!」
「はいはい。末永くよろしくね」
「うん、崔君、あの日はごめんね。中森さんの話ばかりして」
「過ぎたことはしょうがない。あ、そろそろアトラクションに入れそうやで」
「やったー! 入ろう! 入ろう!」
或る晩、僕等は愛し合った後、そのまま寝ていた。外から悲鳴のような声が聞こえた。そして怒鳴り声。その後、シャッターが蹴られているのか? ガシャーン! ガシャーン! という音。貴理子は半身を起こそうとした。それを僕が片手で止めた。
「気にせんでもええ。寝てたらええねん」
「でも、悲鳴が聞こえたような」
「大丈夫や、大丈夫。よくあることやから、ここら辺では」
「よくあることなの? ここ、どんなところなのよ?」
「繁華街の近くの交通の便が非常に良い街。そして、ちょっとだけガラの悪い土地(当時)」
「崔君、ええの? 放っておいて」
「巻き込まれたくない。関わったらアカン。大丈夫や。だいたい大丈夫やねん。ニュースになるようなことはなかなか起きへんから」
「……わかった。大阪って怖いね」
「大阪が怖いんやなくて、この街が怖いだけや。大阪には、治安が悪いと言われる所が何カ所かあるねん。でも、繁華街まで歩いていけるし、交通の便もええから、僕はこの街が気に入ってるねん」
「そうか、そういうことなのか」
「なんか目が覚めたなぁ。なあ、もう1回する?」
「うん、する」
まだ書いていなかったかもしれないが、貴理子は155センチ、細身、胸はBかC(ブラによる)、髪は茶髪のパーマ、美人というよりはカワイイ系。某芸能人に似ていた。要するに、顔もスタイルも良く若く見えた。僕は貴理子に満足していた。
「崔君、明日は日曜、裸の日だよ」
日曜日は1日中服を着ずにイチャイチャする僕等だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます