第2話  『連載中』なのに『完結済』にしてました。

 貴理子はパチ〇コが好きだった。どうやら、自分が稼いだお金のほとんどをパチ〇コに使っていたようだ。いや、よく服も買っていたなぁ。ブランド物ばかり。貴理子は服とパチ〇コにお金を費やしていたのだろうか? 何に使おうが貴理子の勝手だから、何に使っているか? 本人に聞いたことは無かったからわからないが……。


 ところが、僕にとって困ったことがある。貴理子は、僕にパチ〇コの面白さを教えよう、僕をパチ〇コ好きにさせようとするのだ。要するに、僕をパチ〇コに誘うのだ。これには困った。


 僕も学生時代、パチ〇コにはまった時期があった。負けた分を取り返そうとしたからはまったのだ。だが、僕は何故か相性のいい機種と出会い連勝。なんとか負けを取り返し、プラスマイナスゼロになったところでパチ〇コをやめたのだ。


 僕は誘われても断っていたが、何回かに1回は付き合う。それで貴理子の気がすむならそれでいいのかもしれない。と、思ってしまうことがあるのだ。ところが、僕は貴理子とパチ〇コに行くと必ず負ける! 1回も勝ったことが無い。1回もだ。だいたい、2人で5万くらい負けてようやく帰る。そう、僕と行くと必ず貴理子も負けるのだ。せめて貴理子だけでも勝ってくれるなら良かったのに。


 こんな感じだから、僕はますますパチ〇コに行きたくなくなる。勝てる人ならいい。世の中にはギャンブルに強い人がいる。そういう人からすれば楽しいだろう。しかし、勝つ喜びを得られない、僕のようなギャンブル運の無い者はパチ〇コから遠ざかる。だって、確実にお金がなくなるのだから。普通、勝ったり負けたりするから楽しいわけで、負け続けて勝利の味を得られないなら嫌になる。僕には向いていない。


「崔君にも、パチ〇コのおもしろさを知ってほしいのよ」

「勝てたらおもしろいやろうけど、僕は勝てないから」

「私、崔君と一緒にパチ〇コしたいの」

「パチ〇コに2人で行って楽しいか? 遊び始めたら1人の世界に浸るだけやんか」

「それでも隣にいてほしいの、そういうものなの」

「ごめん、僕はパチ〇コで負けるくらいやったら、デート代にまわしたい。パチ〇コ代をデート代に使えば、豪華なデートが出来るやんか」



 貴理子が僕をパチ〇コに誘わないように、僕はパチ〇コ以外のことで貴理子を楽しませた。全ての名所に連れて行った(多分)。平日は貴理子が食事を作ってくれるが、貴理子にも(主婦業の)休日は必要だろう。土日は基本的に外食だった。お好み焼き、串カツ、焼き肉、フグ、蟹などの有名店は全て(多分)回った。結果、貴理子が気に入ったのは串カツだった。だから、串カツを食べに行くことが多くなった。


 そして、貴理子はド〇ム球場での野球観戦を気に入った。某球団の某選手のユニフォームに刺繍を入れて、野球グッズを一通りゲットした。僕もお揃いのユニフォームを買わされた。僕は中学生の頃まで、よく某球団の試合を見に球場へ行ったが、野球観戦は久しぶりだった。貴理子と野球観戦をするのは思っていた以上に楽しかった。貴理子はシャキシャキとよく動いてくれる。155センチと小柄だが、とてもエネルギッシュだった。野球のチケットも上手くネットで購入してくれた。動いてくれるのはありがたい。僕はお金を払うだけで良かった。


「今日も楽しかったね-!」

「うん、楽しかった。中学までよく野球観戦はしてたけど、野球観戦デートは最高やわ。好きな女性と野球観戦するって楽しいんやなぁ」

「ね! 楽しいでしょ? また行こうね」

「何回でも行くで。せっかくお揃いのユニフォームを買ったんやから」

「博多にいた時も、〇〇(某球団名)のファンクラブに入っていたのよ。博多でもよく野球は見に行ってたの」

「へえ、そうなんや」

「でも、△△(僕等が応援していた某球団)のファンはやっぱりスゴイね! 盛り上がり方が違う! めっちゃ楽しい!」

「貴理子がどんどん大阪を気に入ってくれているみたいで良かった」

「うん! 大阪って楽しい! 大阪、最高!」


 不思議なことに、どこかへ遊びに行った日は疲れていて早く寝そうなものだが、貴理子は違った。楽しいことがあるとテンションがハイになるのか、いつも以上に夜の営みが激しかった。僕は、どんな貴理子でも受け止めた。


 しかし、或る日、


「私の野球友達が来るから、崔君をみんなに紹介するね」


と言われてついていったら、貴理子の野球友達全員から無視された。誰も話しかけてくれない。こちらから話しかけても満足できる返答が無い。僕は、その人達と親しくなるのを諦めた。その人達からすると、僕は“離婚して間も無い貴理子の恋人”ということで何か違和感でもあったのだろうか? 貴理子の元旦那とも親しかったらしいので、そういう冷たい態度になったのだろうか? なんだったのか? わからない。とにかく、僕にとっては不快な1日だった。


「崔君、今日はごめんね」

「僕、かなり頑張ったで。かなり皆さんとお近づきになろうと努力したで。あれ以上の努力は出来へん」

「まさか、あんな雰囲気になるとは思わなかったから」

「何なん? あの対応。明らかに僕を避けてたやろ?」

「うーん、元旦那とも親しかったからかな? 今日はごめん」

「もう、ええよ」



「でも、これからも野球は見に行こうね!」

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