文章で摂取する苦みと痛み
- ★★★ Excellent!!!
本作は、文学賞における選考委員会を風刺した物語である。そう思えない方は、ぜひご一読いただきたい。きっと、笑いが込み上げてくることだろう。
全体に、星新一のようなショートショートと言えば本作の雰囲気を表すには充分であろう。しかし風刺のエッジはあまりにも鋭く、広がる後味はあまりに濃すぎるブラックコーヒーのごとくに、ある種の「眼」を醒まさせてくれるように思う。
エッジが突き刺さって血を流すものも、苦みに嘔吐するものもあろう。けれど、私が物語を読む理由は、このような”味覚”を満たすためなのだ。当事者のひとりとして血を流しながら、この苦みをぐいと飲み干して、さらに一歩を踏み出す決意の助けとしよう。この作品を読む意義は、きっと小さくはない。