第7話


 ……いくつかの燭台に、心許なげに火は揺れている。

 部屋は暗がりで、光ある、豪奢なものが何一つない。

 ラファエルが宮廷で見た、王の周りにあるもの。

 数多の侍従、華やかな装いの友人たち。

 ヴェネトはロクな海軍も持たず、三つの国をすでに消滅させた。

 この寂しい部屋で、病床だったという王は、その滅びをどう感じていただろう。


「フランス王の命により、この地に参りました。

 フランス海軍総司令――ラファエル・イーシャと申します。陛下」


 返事は返らない。

 背後で、静かに扉が閉まったのを感じた。


(ああ……)


 自分は全然変わっていない。

 随分強くなったと思って来たけど。

 ジィナイース・テラの光のような瞳と、温かい笑みを思い出した。

 ラファエルの名を呼んでくれる、優しい声を。


(……どんなに強くなった気になっても、俺は本当の恐怖を感じると)


 魂が君を求めるんだ。



【終】

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海に沈むジグラート33 七海ポルカ @reeeeeen13

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