知言の追抄(ちげんのついしょう)
天川裕司
知言の追抄(ちげんのついしょう)
「アーカンソー(Arkansas)」
異国の町には軒夜(のきよ)が囀り、小鳥が鳴く程ピィチク、パァチク、地平(ちへい)の海へと解け込み始める。一人(ひと)の世界が余程に活きた。
一女(おんな)の素肌に予防するのは、真面目が華咲く向日(むこう)の小窓(まど)から。アーカンソー、アーカンソー、あぁかんぞぅ…、男の文句がmonkに伝わり、冗句に紛れて解け込み始めた。四季の映りが非常によい。白い夜には「昼夜」が飛び交い、人の孤独が浮き浮きしている。父と母とが何処(どこ)かへ入(い)った。呑気に流行(なが)れて、俺の巣箱は木芥子(こけし)を彩る。雨が降るのは小雨の宙夜(ちゅうや)で、俺の気色はどんどん透れる…。「負けぬ、敗けぬ、負けぬ、敗けぬ、負(敗)けて成るものか…!」
必ず尽きない寝言の垢から未完(みじゅく)の鈍(くもり)が上手に発(た)って、朝な夕なに気後れして行く純白(しろ)い砂面(すなも)は「自由」を着飾り、厚い土から無根を費やす無動の紅(あか)さが空へ返った。怒ったからとて何にも成らぬ。怒ったからとて何にも成らぬ。激怒を静めて身辺(あたり)を見回せ。お前の目下(もと)では他(ひと)に愚かな人間(ひと)に巻かれる総身が目立てぬ…。
異国の空気は異郷(いきょう)の空気に悶絶した儘、暗(やみ)に紛れた宙(そら)の茜は虚空の遊戯に弄(あそ)ばれ始める。
律儀な一女(おんな)が男の目前(まえ)からすっと失(き)え生(ゆ)く…。漂白(しろ)い被(かぶ)りが思想を詠むとき自己(おのれ)の呑気は何処(どこ)へも往(ゆ)かぬ。白い真砂は紺(あお)い海から余程に返って生粋とも成る。男性(おとこ)の境地は砂地に活きた。女性(おんな)の郷里は宙(そら)へ翻(かえ)った。
虫が一匹、異国で生きた。羽虫が一匹、異郷(いきょう)に逝った…。
☆
アメリカ南部ミシシッピ川下流右岸の州。州都はリトルロック。綿花栽培が盛ん。人口二二八・五万(一九八〇)。
☆
一形(かたち)を見定(さだ)めぬ詠(うた)の文句が蝶と一緒に飛来して活き、女に隠れた本性から観て慌てた〝乞食〟が俺に宿った。紺(あお)い果実が躊躇して生(ゆ)く明日(あす)への〝通路〟は一男(おとこ)に開かれ、〝貰いが少ない孤独の乞食〟は現代人(ひと)に在らねど女に観られる。現行(いま)の目下(ふもと)でひっそり擽る小言の連呼は愚かの代物(もの)で、現代人(ひと)が初めて認め得るのは、俗世(このよ)で失くせる宝であった。
実体(からだ)の無いまま〝異国〟が活き発(た)ち、暑い四季(きせつ)の目下(ふもと)に冷えては、明日(あす)の孤独を自由に見限る無頼が膨(ふく)らむ安定だった。
女の目前(まえ)にて男児が弄(あそ)ぶ。宙(そら)の目下(ふもと)でカッカッしている。紅(べに)の光明(あかり)が端正(きれい)に差すのは白亜(しろ)い気色の紋章だった。「女に縋れば安心するのか?」、「俗世(このよ)に於いてはルールが在るのか?」、「刹那、刹那、にルールが在るのか?」、…女と男の異様の景色は白夜の目下(もと)にてすっかり育ち、異国の陰からすっかり脱(ぬ)け出た幻(ゆめ)の主観(あるじ)の紺碧を観た。
「アーキテクチャー(architecture)」
愚図々々(ぐずぐず)してると置いてけぼりにて、男の心が女に飛び込む。無知の気迫を堂々巡り、女の言葉が機会を超える。幻(ゆめ)と物理が平行して行く厚い通りを無断に識(し)り過ぎ文言(ことば)の奥義(おく)には悪魔が絶える。白い間延びが嫌いになった。雲母の傍(そば)から孤独が死んだ。文言(ことば)の人陰(かげ)から無質(むしつ)が跳んだ。精神(こころ)を弄(あそ)ばせ無重を培う懐古(レトロ)の破片(かけら)が若さを欲しがる。一女(おんな)の暗(やみ)には無憶(むおく)が咲かない。起死の真中に古豪が冴える。熱い想いに波長を合せて、人の暗(やみ)から光明(あかり)が飛んだ。
タイトルさえ無い明光(あかり)の性(さが)には自由が羽ばたく無信(むしん)が活き抜く。街が鳴いてる。女性(おんな)が恥じらう。一男(おとこ)の影から明日(あす)を夢見る嗣業の多くが開発された…。
アーキテクチャー、アーキテクチャー、一声(こえ)の目下(ふもと)に後光(ひかり)が達し、女性(おんな)の目下(ふもと)に隣人さえ無い。明日(あす)と今日との無言に在るのは一女(おんな)の目下の蟷螂だった。自信が尽き生(ゆ)く男・女(だんじょ)の倣いは白雲(くも)の切れ間の〝努力〟を伴い、現行(いま)の小敗地(アジト)に満足出来ない〝嫌い〟の衒いが象牙を象(と)った。白亜(しろ)い妙技が一女(おんな)の目下(もと)から概(おお)きく跳び発(た)ち無言に死んだ。俗世(このよ)の「小敗地(アジト)」に〝活き〟を突き出す司業(しぎょう)の身辺(あたり)は結構名高い。男性(おとこ)の傀儡(どうぐ)は女性(おんな)の躰で、女性(おんな)の傀儡(どうぐ)は未知なる悪魔だ。暗(やみ)の許容(うち)からどんどん乖離(はな)れるやばい端(すそ)から活力(ちから)が挙がる。俺の孤独は信途(しんと)に吠えた。
☆
建築学。建築術。建築様式。コンピュータの設計に関する仕様または思想。ハードウェアの倫理構造、メモリーの種類など。
☆
感覚(いしき)の解(ほつ)れる不具合から観て臆病から成る無想の上手は、器量好しだけ男・女(だんじょ)に跨る〝家来のcoat〟を啄み出した。女の感覚(いしき)が男へ懐かぬ旧い上茂(うわも)は倫理を安めて、獣の傀儡(どうぐ)が未知を照らせる宙(そら)の彼方へ透って入(い)った。
男の気色は不動に佇み、俗世(このよ)の快楽(らく)から快無(オルガ)を観ていた。―、女の心身(からだ)が徐々に割かれる俗世(このよ)の自活(かて)には安泰さえ在り、昨日の現(うつつ)に間延びを報せる分厚(あつ)い白壁(かべ)から輪廻(ロンド)を敷いた。女の精神(こころ)がしくしく唄う…。男の一幻(ゆめ)から魔人が高鳴る…。建築から成る不正の独気(オーラ)は無機を逆巻き未来を掌(て)にして、幻(ゆめ)の一通(とおり)を横目に見送る思春の気色を大体採った。記憶の傍(そば)から生憶(きおく)が三重(かさ)なり、涼風(かぜ)が吹いても気候の間(ま)に間(ま)に、孤高の標(しるべ)に破亘(はこう)を観ていた。
知言の追抄(ちげんのついしょう) 天川裕司 @tenkawayuji
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