第4話 リュアーナ
翌朝、自分の部屋で目を覚ました。使用人が運んでくれたのだろう。ラミアが来て俺が起きたのを確認すると足早に部屋を出ていき、兄上達を連れてきた。
「「アトゥー大丈夫?!?!」」
そう言いながら潤んだ目で抱きしめてくれた。
「しんぱいしないでください、にいさま」
あまりに泣きそうな顔をするから今度はこっちが心配になって2人の背中をさする。
「まもなくゴルゴン公爵家の皆様がご到着なさいます。急いでご準備をしたほうがいいかと…。」
3人揃ってバッ!と手を離す。そうだ。いよいよメドゥーサの子孫達のお出ましだ。そして何が何でも結婚を断ってやる!!!!
準備を始めようと自分の部屋に向かっていたレイリオンに、後ろから声がかけられた。
「レイリオン殿下。」
「ああラミア、なんだい?」
「いくらお急ぎになられていても、朝にお薬を飲むことだけは忘れないでくださいね?」
「…もちろん。分かってるよ?」
なんだかラミアは表情が硬くて、少し怖い。目に光が灯っていないのだ。たまにラミアはそんな顔をするときがある。
「しっかり者の殿下なら釘を刺さなくても大丈夫ですよね!失礼しました。」
笑顔になってそう言ってから背を向けて早歩きで行ってしまう。レイリオンは違和感を抱きつつも、パンドラの箱を開けてしまうような気がして問いただすことができていない。病弱になる前からずっと──。
城の前に1台の豪華な馬車が止まった。暗い青緑色に、白銀でメドゥーサと小瓶を模した家紋の装飾があしらわれている。その中から2人、姿を現した。ゴルゴン公爵家の女当主、リュアーナ・ゴルゴンとその娘、ディルアだ。ゴルゴン公爵家はメドゥーサがかつて女王を務めていたことから、当主は基本的に女性である。
「皇帝陛下と皇子の皆様にご挨拶申し上げます。そしてエピオナ、久しぶり。」
こいつ、今皇后を呼び捨てにした…?
しかも本当に親しい感じでは全くなく、どこか上から目線な態度だ。
「ゴルゴン公爵、皇后である母にくだけた言い方をするな。不敬罪と捉えられてもおかしくはないぞ。」
レイリオンがすかさず庇う。
「申し訳ありません第1皇子殿下。しかし私たちは幼い頃からの友人であるゆえ、皇后陛下からの許可も得ておりますわ。ねえ、エピオナ?」
「……ええ。」
母上の表情はとても暗い。しかし何も言うなという雰囲気を醸し出していたので、誰もそれ以上庇う言葉を発することはできなかった。
「…そしてこちらが、わたくしの娘のディルアでございます。第3皇子殿下と同じ5歳です。」
リュアーナの斜め後ろにいた少女が前に出てくる。
「サペントラの盾であらせられる皇族の皆様にご挨拶申し上げます。ディルア・ゴルゴンと申します。ぜひお見知り置きを。」
一言で伝わる教養の高さ、隙のない身のこなし、綺麗な声。そして何と言っても……ビジュアルが大爆発している。美しく長い黒髪、ターコイズブルーに輝く大きな瞳。5歳ながら、間違いなく既に「淑女」の領域に達している。正直好みだ。かなりどストライクで。
しかし、いっそのこと本当に結婚してしまおうかという気持ちが一瞬芽生えたが、すぐにリュアーナの声で掻き消された。
「ディルアは第3皇子殿下の遊び相手として、首都にあるゴルゴン家のタウンハウスから週3回皇城に来させます。二人がお近づきになれたら幸いですわ。」
ちょっとまて、週3??いくらなんでもそれは多すぎないか?
「ゴルゴン公爵、まだ正式に遊び相手に決まったわけではない。それに週3回は多すぎると思うのだが。」
よくぞ言ってくれた、父上。
「あら皇帝陛下、私は3歳の時から週5回夫と会っていましたよ。それに、他の高い爵位の家門には5歳ほどの子供はいらっしゃいません。ディルアしか選択肢はないのですよ?まさか、第3皇子殿下から家族以外の子供と触れ合う機会を奪うおつもりですか?」
「………。」
なんて弱いんだ、父上。
重苦しい時は流れ、夜が更けた。さすがに長旅で疲れたのか、ゴルゴン公爵とディルアは夕食を終えてからさっさと与えられた部屋に籠もった。各自そのまま就寝し、穏やかに1日を終えると思っていた。
しかし、俺は見てしまう。深夜トイレに行くとき、空いているはずの客室に明かりが灯っていて、少しドアが開いているその隙間から光が漏れ出ているのを。そういうとき、人は誰しも気になってしまうものだろう。ドアに耳を当てて澄ませると、リュアーナと誰かの話し声が途切れ途切れに聞こえてきた。
「………うま…いってる?」
「はい。…イリ…………なって……。」
リュアーナの話し相手は誰だ?
何を話しているのか分かりたくて、もっと耳を当てようとしたら、少しドアが先ほどより開いてしまった。
「…とにかく、皇女を殺したことについては隠蔽をまだ怠らないこと。飽きないでずっと調査を続けているみたいだから。それと──。」
「……少しお待ち下さい、リュアーナ様。」
謎の人物がドアが開いていることに気づいた。咄嗟に死角に入る。扉が開かれ、謎の人物が暗い廊下を見渡す。隠れるのに必死で顔は見れなかった。幸い気づかれなかったようだ。そしてドアは固く閉じられてしまった。もう音は何も聞こえない。
頭がこんがらがって何も考えられないまま、トイレに行って自室に戻る。しかし2つのことは確定で分かった。ゴルゴン公爵家の手先が皇家に忍び込んでいること、そして殺された皇女がいたこと。
とにかく、ゴルゴン公爵家を粛清しなければならない。いいだろう、やってやろうじゃないか。これぞ異世界転生モノだ。
(どうすれば良いかは全く思いつかないけど。)
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第4話お読みいただきありがとうございました!第5話をゆっくりお待ち下さいm(_ _)m
ヘビ嫌いの俺が屈指のヘビ好き皇子に転生して今これ〜おまけにコイツらは神の使い?!〜 @1204Os
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