誕生

山木 元春

誕生日祝い

「キミの名前が山本三賀日だったら、みんなに誕生日を忘れられるなんてことなかったのにね」


 冬休みが明けた学校の教室で、俺の前の席に座る女子生徒はそう言った。三賀日……一月三日に生まれた俺は、家族以外から誕生日を祝われたことがない。


「忘れられてるんじゃあない。誰にも会わないから、祝ってもらう機会がないだけさ」


 そう返すと、彼女は鼻を鳴らして口角を上げた。


「それはどうかしら。わたしの誕生日は祝日だけれど、たくさんお祝いのメッセージが届くわよ?」


 なんて、ドヤ顔で偉そうなことを言う彼女の名前は“岡田 建国記念日”。二月十一日生まれだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誕生 山木 元春 @Yamaki_Motoharu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る