第56話 番外編 お芋(サツマイモ)まつり ②

切ったお芋を5~6分ほど水に浸して、よく水をきる。

「よいしょっと!」

温めた油で、切ったお芋をカリカリになるまで揚げていく。お芋の良い匂いと、ジュッと揚がるいい音がキッチンに広がっていく。

 「何を作っているかわからないけど、お芋(サツマイモ)の良い匂い!」

「見たことないお芋の調理方法だ……」

 カルマスさんはジッと、僕の調理法を勉強するように見ていた。


 カリカリに揚がったらしっかりと油をきっておく。

「大量だ。面白い形ですね」

カルマスさんはじめ、従業員の人達も見たことのないものらしい。

 「揚げたお芋の油をきっているうちに、タレを作ります」

砂糖と水と醤油を混ぜたタレをフライパンに入れて加熱。

 「わあ……! 甘いような、しょっぱいような? 香ばしい美味しそうな匂い!」

プツプツと沸騰してきたら火を止めて、揚げたお芋をフライパンにもどしてタレをからめる。

 「えっ! 美味しそう!」


 「お待ちかねの試食です! お芋(サツマイモ)チップスです!」

「わあ! いただきます!」

 テーブルに大きな平皿を置いて、そこへ【お芋(サツマイモ)チップス】をざっと移す。従業員の人達とテーブルを囲んで、その場が試食会になる。

 カリッ! ポリッ! カリカリ! ポリポリ! 

「噛めば、いい音がする!」

「美味しい!」「噛み応えがありますね――!」

「クセになる!」 

 自分も一つ手に取って食べてみる。パリリ……。パリパリ! 

「うん。ちょうどよく揚がっているし、味も甘じょっぱくて美味しい!」

皆の反応も良さそうだ。


 「マオさん、美味しいです!」

カルマスさんはニコニコと笑って、そう言ってくれた。ふと、カルマスさんが何か思いついたように手をとめた。

 「これ、持ち帰りテイクアウトも、やりませんか?」

従業員の人達もカルマスさんに注目した。なるほど……それもいいかもしれない。僕は前世のお土産屋さんの、テイクアウト商品を思い出した。真似になってしまうけどいいかな。

 「いいですね! テイクアウト商品は、ちょっと形を変えましょうか」

「え? 形を変える?」

僕は皆に、にっこりと笑いかけた。


 

 食事処の準備を終えて村のみんなが集まる広場へと着いた。こちらもお祭りの準備が着々と進んでいた。

 「おお、マオ! この広場で行う『焼き芋大会』の準備はできたぞ」

村長さんが僕に話しかけてきた。村の皆で協力して準備をしていた。

 「いい具合のが掘れましたね!」

「そうだな!」

焼き芋を作る穴を掘ってたき火をして、灰が出来たらその中へ入れてじっくり焼く予定だ。村の人は毎年、各家庭で焼き芋を作っているので慣れているのでお任せする。

 「今回、こんな規模の大きい焼き芋作りは初めてだ! 好評で豊作なら毎年行ってもいいかもな!」

 ハハハハ! と村長さんは豪快に笑った。


 このお芋(サツマイモ)祭りは、村の入り口でチケットを買ってもらうことにした。そのチケットで、村の中央広場で作った焼き芋が食べられるというものだ。

 あとはお店ごとの支払い。賑わってお店が大変ならば、全部チケット制にするのもいいかも? 

「では、明日! 楽しみですね! 皆さん、無理せず頑張りましょう!」

 「は――い!」

村も活気ついてきて、お祭りの雰囲気が良い感じだ。



 「うわぁ――! 村全体に飾りつけされている!」

早朝、いつもより早起きして村の道を歩いていたら村中がお祭りの飾りつけがされていた。

 「厚紙で作ったお芋(サツマイモ)の形の飾り物がいっぱい!」

家のドアにクリスマス・リースのようにかけてあるものや、お祭りの提灯みたいにお芋の形のランプがあちこちに吊り下げられていた。

 「まるでクリスマスのよう……」

飾られているのは、お芋だけど。盛り上がっている。


 村の入口へ様子を見に行くと、お芋祭りに来たお客さんの列ができていた。今日はお祭りなので村の皆が早起きしてお芋を焼いたり、それぞれのお店のお芋商品を作っていた。僕も村のお手伝いをしたり、お総菜屋さん・お食事処のお芋メニューを作っていた。

「村長さん、開場したらご挨拶をお願いします」

始めはお芋の開会式をして、開会宣言をしてもらう。それからお芋(サツマイモ)祭りを始める。

 「わかった!」

 村長さんも張り切っている。開会式が行われる中央広場へ村長さんは走っていった。村はそんなに広くないので開会式の会場は見えている。


 「では、開場します!」

わああああああ――! 

 「逃げませんから、走ったり押さないで下さいね――!」

チケットを買ったお客さんは中へ入って、村の飾りつけを楽しんだりチラシをもらってお店をチェックしていた。

 「どれも美味しそうで、迷っちゃうね――!」

「お芋の飾りつけ、可愛い――!」

 お客さんはお友達同士や、家族連れ、恋人同士などたくさんの人が来てくれていた。


 中央広場では開会式が始まった。

「これから【お芋(サツマイモ)祭り】を始めます! ケガなどないように楽しくやりましょう!」村長さんは手短に開会宣言をした。

 わああああああああ――! パチパチパチパチパチパチパチパチ!


 お芋(サツマイモ)祭りは大盛り上がって、好評だった。


「毎年この時期、お祭りをやりたいね!」「楽しかった――!」

「マオさん! ありがとう御座いました――!」

カカスさんは涙をにじませて僕のお礼を言ってくれた。村の皆も楽しかったようだ。お芋だけじゃなくて、収穫祭みたいなものでもいいかも?

 

 なかなかの売り上げでみんな、ホクホク顔だ。お芋(サツマイモ)だけに。


                 お芋(サツマイモ)祭り おしまい。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鑑定の結果、適職の欄に「魔王」がありましたが興味ないので美味しい料理を出す宿屋のオヤジを目指します @rin_77

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ