第2話 心配は時として仇となる。
『先生、学校に行ったら良いことはありますか?』
そんな疑問を電話口で話すのは戸島篤(とじまあつし)くんだった。
彼は、人と話すこと自体がとても怖く、まだ一度も学校には来ていなかった。
そんな彼に、担任の先生は彼の興味あることを聞いた。
『戸島さんは、1番好きな科目は何かな?』
彼は言葉に詰まりながらも自分の意見を話した。
『ぼくは、本を読むのが好きです。文章を書くのが好きです』
すると担任は彼にある教室を勧めた。
『じゃあ、今度の土曜日に『虹色教室』という国語のクラスに行ってみないかい。時間は12:30からやっているよ。起きれそうかな。無理しなくて良いからね』
少しの間が空いたぐらいに彼は返事をした。
『行きます』
そんなひと言が担任にとっては安心感を寄せる言葉でもあった。
それがもし守られない約束だったとしても、約束できたことに意味があった。
今まで不登校になる生徒と会話して約束ができるまで段階を踏むことはとてもじゃないが無理に等しい話だった。
だから、約束だけでもできたことに担任はこの上ない喜びを感じていた。
担任はすぐさま虹色教室の担当の風間先生に連絡を取った。
風間先生は国語準備室で昔よく使ってた教科書を読み漁っていた。
そんな彼に、戸島さんの担任が入ってきて言った。
『あの、不登校だった子が今度の土曜日に風間先生のクラスに参加することになったのでよろしくお願いします。それで、彼は少し障害を持っていまして、発達障害がある子なんですけど、、』と話そうとしたところで、風間先生は話を聞かずに言った。
『障害があろうがなかろうがそれは彼の個性だ。障害であろうともそれを私たちが特別扱いできるものでもない。虹色教室に入る子たちはみんな平等に国語を学ぶ同志でしかない。私たちが心配することではない。もし心配しているなら、その心配は仇となる。いいか、次の土曜日に彼が来るか来ないかなんて重要じゃない。彼が学校に来たいかどうかだ。約束なんて破られても仕方がない。紙に書いて約束したものでも無いんだからな。だから、私たちは待つしか無いんだ。次の土曜日はいつも通り授業をする。彼がこの教室に来るのはいわば彼の頑張りが勝った時だ』
彼の担任は『はい』と言い出ていった。
内心、風間先生は戸島さんが気になっていた。
書き留めた色は虹色だった。 ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet
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