夏色の想い出

snowdrop

summer colors

 八月のお盆。私は母方の実家へと帰省し、親戚たちと挨拶を交わした。目に映るのは、黒いTシャツを着た従弟たち。高校生の長男の悠希が漫画研究部に所属していることを知った。

 二人部屋の中は、まるで夢の島。漫画やゲームが散乱し、足の踏み場もない。片付けを申し出るが、悠希は笑顔を見せず首を横に振る。その姿に秘めたものがありそうだった。

 居間で「電プレ」を読む悠希と私は、最近のアニメや特撮、ゲームについて語り合っていた。手持ち無沙汰から、コピー紙にイラストを描き始める。

「それ、ドラゴンボールの悟空?」

「違う。オリジナルキャラだよ」

 シルエットでも読者が一目でわかる特徴が主人公には必要だと教えた流れで、「欲しい本は身銭を切りなさい」と口にした。

「身銭?」悠希が眉をひそめる。

「難しくいえば、自己投資だよ」

 資料集や専門書は高額だから、図書館やネット利用も悪くない。しかし、自分のお金や労力を使って学ぶことで慎重になり、結果として質の高いものを選ぶようになる。これによって、より深い理解や成長が得られ、将来に役立つスキルや知識も身につく。

「買ったほうが自分のためになる?」

 理解を示す彼に、「そうそう」と頷く。「図書館で借りて読んでも知識は得られる。それだけでは忘れてしまう。記憶に残すためには自身の手でノートに書き写すことが大切なの。自分を通して血肉としたものしか身につかないから」

 講釈を垂れる大人になってしまったと照れる私に、「説明してくれるなら、わざわざ難しく話さなくてもいいのでは」と悠希が笑う。その言葉に思わず頷き返した。

「必要がなくなったらブックオフで売っていいから、本当に必要だと思ったら買いなさい。できれば、その本を私にも使わせていただけるとありがたいです」

 冗談めかして笑う。

 後に、彼は電プレで連載し、白咲恋導として白泉社で漫画を書くことになるのだが、それはまた別の話である。

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夏色の想い出 snowdrop @kasumin

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